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『断る力』 [読書日記]

断る力 (文春新書)

断る力 (文春新書)

  • 作者: 勝間 和代
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02/19
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
この本では、「断ること」をしないことが、いかに私たちの生産性向上を阻害し、成長を阻害し、ストレスをためるかということを説明していきます。そして、どうやったら「断る力」を身につけることができるのか、その訓練方法を含めて具体的に説明をしていきます。
勝間和代さんって僕がインドに来ている3年間の間にどどどっと日本の論壇に登場してきた超スーパーレディーである。でも賛否両論ある人でもある。今からちょうど1年ほど前の週刊アエラで勝間さんと香山リカさんの対談が載っていた。僕はどちらからというと香山さんを好感を持って見てきたのだが、この対談では香山さんが随分と勝間さんに喰ってかかっていたのが印象的だった。香山さんの批判が的を得ているものならば、僕はそもそも勝間和代的生き方は好きではないし、そもそもできないと思っている。ただ、本書で勝間さん自身が言っているように、勝間和代を知らずに嫌っているという人は結構多いと思う。だから、取りあえず読んでみた。彼女のベストセラーと言われる本書を。

結果として、やっぱりあまり好きにはなれない人だと思った。

なんだか、とっても売れっ子で忙しい人が舞い込んでくる仕事の依頼を体よく断る言い訳と断り方をいろいろ述べているようで、そもそもそんなに売れてない僕らが同じように断っていたらクライアントとの信頼醸成もできなくて、頼まれる仕事もどんどん減っていくだろう。立場が違い過ぎるので真似のしようがない勝間和代的生き方である。

こうやって体よく断っても、その仕事を負わされる人というのが別にいるというケースが多い。僕は最初に自分が頼まれた仕事を断って後で誰かがそれを代わりにやるはめになったというケースを幾つか知っているが、その人が大変な苦労を強いられていると、苦労を押し付けたようで居たたまれない思いがするし、もしその人の仕事の出来が外野の自分から見てもイマイチというケースは、断ったことを後から後悔し、「やっぱ自分がやればよかった」と思う事態に陥ることもある。

「ご多忙のところ大変恐縮ですが…」という丁寧なお詫びの言葉を付けながら、「締切厳守でお願いします」という作業の依頼がメール1本で東京から来るケースも多い。こういうケースは本当は断りたい。8割程度やっておけば多少作業をやらないのがあっても及第点だ、全部が全部応じる必要はないという上司の言葉を真に受けて80点程度を取れるぐらいにほどほどに頑張ったこともあったが、結局のところ低い人事評価の言い訳に使われてしまった。「断れ」だとか「8割程度でも及第点」だとかいうのは強者の論理であって、実際に弱者の僕らが真に受けると後で手痛い仕打ちが待っていたりするから要注意だ。

また、愚痴や陰口をたたいていても問題解決には繋がらないと勝間さんは仰っているが、僕らが愚痴や陰口をたたいているのは別に問題解決したいからではなく、ただ単に憂さ晴らしをしたいからである。世の中には自分だけではコントロールができない大きな力が働いていると感じることが最近とみに多い。解決のしようがないレベルで自分の意にそぐわない意思決定が働き、ただ諦めるしかないということが多い。どうにもならない時は、酒飲んで諦めるしかないではないか。だから、自分のアシスタントが自分の悪口をデスクトップPCの付箋に書き連ねているのは、勝間和代が上司であるという事実はどうにもならないことだと諦めているからではないかと僕には思える。悪口言ってても問題解決にならないという論拠に勝間さんはこのエピソードを使っているが、こんなことで有名にされたらこのアシスタントの方がかわいそうだと思う。それに、人の性格はそんなに簡単に変えられるものではない。

それにしても、この人、あまり作文上手じゃないね。何でこの本が売れたのかがよくわからない。
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コメント 4

toshi

大変、勉強になるコメントを入れていただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
by toshi (2010-04-18 09:23) 

カオリ

ワタシは断られてしまった彼女の最初のご主人とそのご主人との間に生まれた娘さんたちにとってずいぶんな本だなぁとこの本を立ち読みして感じました。誰か彼女を止めてあげればいいのに・・・と思う今日この頃。結局のところ、彼女には本当の意味で味方になってくれる人がいないのではないかと感じています。
by カオリ (2010-04-21 17:00) 

Sanchai

☆npmさん、suzuranさん、kozyさん☆
いつもnice!を下さりありがとうございます。

☆toshiさん☆
nice!にコメントまで下さりありがとうございます。

☆カオリさん☆
コメントありがとうございます。気付かなかった視点をご提供下さりありがとうございます。おっしゃる通りですね。ここまで書かれてしまうと、元のご主人は立場がないですね。
by Sanchai (2010-04-22 01:26) 

降龍十八掌

あれだけ、テレビに出ていては『断る力』どころでないと思いますね。
結局、名前が売れたんで稼ぎたいというだけのところでしょう。

まあ、すむ世界が違う人種なんでしょうねぇ~。
by 降龍十八掌 (2010-04-28 08:36) 

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