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『ルポ高齢者医療』 [読書日記]

ルポ 高齢者医療―地域で支えるために (岩波新書)

ルポ 高齢者医療―地域で支えるために (岩波新書)

  • 作者: 佐藤 幹夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
医療制度改革により大きくゆさぶられる高齢者医療。危機に直面する中で、地域の特性に即しながら、その地に生きる人々の人生の終盤を支える取組みを地道につづける医療者たちがいる。大都市のベッドタウンや地方の中核病院など、創意工夫あふれる八つの実践から、今後いっそう進展する高齢社会の医療と福祉の未来を考える。
先週日曜日にデリーに戻ってくるフライトの間に読み始めたものだが、その後平日はあまり読み切るのに時間を割けず、週末になってようやく本腰を入れて読み切った。

本書の読者が書評で語っておられる通り、なんだかものすごく読みにくい本だった。多分、各章の事例紹介で出て来る各機関の関連図でも示されていたら、もう少しわかりやすくなったのではないかと思う。これが辛うじてあったのは第2章で出て来る東京都多摩市の「あいセーフティネット」だが、これだけでも実はわかりにくい。医療・福祉・介護を巡る日本の法制度についてかなり理解している人でないと、「新天本病院」「あいクリニック」「ケアプランセンターあいクリニック」「あい介護老人保健施設」等が何故乱立しているのか、それぞれの役割分担がどうなっているのかはひと目ではよくわからないだろう。残念ですが、僕もサクサク理解できるほどこの問題に造詣が深いわけではない。(深くなりたいとは思っているけれど。だから本書を読もうと思ったわけで…)

各章の事例はそのうちにもう一度振り返ってちゃんと読み返してみたいと思うが、著者が言いたいことは序章を読めばだいたいわかる。
『高齢社会白書』他、いくつか文献・資料をあたってみたが、この、地方と大都市圏とに固有の高齢者問題の本質が何であるかについて、分析も記載もない。(中略)『高齢社会白書』では、いつまでたっても高齢社会問題は「都市問題」なのだ。
 地方を取材していつも感じたのは、医療が活発で、病院が地元住民に密着していると感じさせる地域は、高齢者のみならず、地域全体が元気で活性化しているということだ。人も、物も、情報も、お金も、活発に動いている。地域の停滞や空洞化とは、この”流れ”が滞ってしまうことでもたらされる。
 したがって地域を活性化させるためには、人を動かす(観光やイベントを活発化し、地域内外からの人の流れをつくる。老若男女に対応できる雇用の場をつくる)か、物の動きをつくる(地域色豊かな新しい産業の立ち上げ。林業、農業、水産業などの地場産業を再生させる)ことであり、どちらかが動けば結果的に人、物、金の動きができあがることになる。
 本書で提示しようとしていることの1つは、医療が地域の活性化に対して果たす役割の大きさである。(p.18)
地域全体が元気であれば、お年寄りも元気で活発だというのは確かにその通りだと思うが、地域を元気にするための方法論は医療が活発であることかと言われると必ずしもそうではないと思う。実は本書を読んでいて何かが違うと感じ続けざるを得なかった理由がここにある。医療・福祉サービスの供給サイドの取材を中心にレポートがされているので、地域住民が自発的にどのようなアクションを起こしてきたのかがあまりよくわからないのだ。本書をまともに読んだら、医療・福祉サービスが充実している地域はお年寄りも元気だと考えるだろうが、確かに安心を提供する材料とはなるだろうが、医療・福祉サービス以外にもお年寄りが元気になれる方法論は存在する。医療や福祉だけで町や村が元気になったわけではないだろう。本書ではそこがしっかりカバーされていない。これだけ読んだら、町づくりは医療・福祉サービスに実際に関わっている人にしか参加する資格がないような印象を与えてしまうような気がする。
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