SSブログ

『裸でも生きる』 [読書日記]

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)

  • 作者: 山口 絵理子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/09/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
イジメ、非行…居場所がなかった青春。そして偏差値40からの一流大学への挑戦。大学を卒業し、本当の現場を見たいと渡ったアジア最貧国。腐敗にまみれた国で見つけた眠る素材、出会う人々。やがてバッグ造りで起業を決意。数々の失敗、挫折、裏切りに遭いながらも歩みを続け、途上国発ブランド、マザーハウスを軌道に乗せて各マスコミで注目の女性。明日へ向かう力に溢れたノンフィクション。
これも前回一時帰国した頃から気になっていた1冊だったし、こういう、僕よりもうちの長男に近い世代の若者の体験談だったら子供も読めるのではないかと思い、先ずは自分で読んでみることにした。最近、「政策の一貫性」について他の記事でも述べたところであるが、途上国の貧困削減に寄与するのは政府開発援助(ODA)だけではなく、まっとうなビジネス、まっとうな製品輸入を通じてでも先進国に住む僕達は途上国の貧困削減に貢献できるというのを改めて教えてくれる1冊だ。

フェアトレードども違う、ちゃんとしたビジネスである。読んでいて、「ジュート製のバッグの開発輸入がどのようにしたらバングラデシュの貧困削減に寄与するのだろうか」とちょっとよくわからなくなったところもあったのだが、どのような形であれバッグ工場を活性化させ、ジュート生産者を活気づかせたのは間違いはなく、こういうまっとうな経済活動がもっともっと増えてくることが発展にも繋がっていくのだろうと思った。

文章としてはちょっと幼稚な印象はある。だからこそ、多分子供達には読みやすいお話になっているのだろうと思う。著者も著者なりに思うところがあってこういった構成になっているのだろうとは思うが、もっと写真をふんだんに挿入してくれたら嬉しかった。その方が子供には読みやすいに違いない。

一方で、これ読んだら米州開発銀行(IDB)時代の著者の同僚とか、そういう開発金融機関に就職している日本人職員はちょっとご立腹だろうなという気もした。残念ながら、著者なりの表現で描かれているワシントンの開発金融機関の実態というのは僕も部分的には当たっているのではないかと思えるところはある。

僕が著者に好感を持てたのは、IDBの短期コンサルタントから「途上国の現場を見たい」と一念発起していきなりバングラデシュに飛んでしまったその行動力とビジネスとして成功させるまでの試行錯誤と努力といった部分だけではない。実はこの著者が元々慶応大学出身であることは聞いたことがあり、ああ慶応出身ならこれくらいの才覚があってIDBでの短期コンサルタントの職にありつけたとしても不思議はないなと勝手に思っていたのだが、それ以前に、彼女が慶応に入試合格するまでの経過、どのような小学校生活、中学生活、高校生活を送っていたのかという部分を読み、普通の子が努力に努力を重ねてここまで辿り着いたのだと、改めてそのすごさに恐れ入った。「慶応出だったらこれくらいは当然だろう」と勝手に思っていた自分が恥ずかしくなった。

ただ、本書の中で登場した、著者を小学生時代にいじめたクラスメートとか、高校柔道部で稽古で著者を痛めつけた男子部員とか、バングラデシュで著者を裏切ったジュート製品加工業者とか、そういう人が本書のことを知ったら、ちょっとつらいだろうなと少し同情もしてしまった(苦笑)。


余談ながら、昨日(29日)に読み切った『奇跡のリンゴ』を、滞在先の岐阜の祖父母の家で暇そうにしていたうちの長男に「読んだら」と言って渡したところ、最初の数頁を読んだだけで、PCゲーム&「月刊ガンダムエース」に戻ってしまった。いい出会い、いいきっかけがあれば親がつべこべ言わなくても子供は1人で成長していくものだと僕は思うが、そのきっかけをどのように作ったらいいのかは、未だに悩ましい。
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 2