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イノベーション展 [インド]

あっと驚く発明品の数々
Devices that take one's breath away
3月11日(木)、The Hindu、Smriti Kak Ramachandran記者
Innovation2.jpg【ニューデリー】 車椅子を操作する時に障害者が感じる難しさや、ろうあ者が相手に何をしてほしいかを伝える難しさ。オリッサ州の学校に通うスシャント・パトナイク君(17歳)は、こうした困難に気付き、障害者をサポートする吐息センサーを発明した。プラスチック製の椅子がセンサーに繋がっている多くの電線の上に据え付けられたこの道具は一見すると高校生が作った可愛らしい創作品に過ぎない。しかし、それを製作したスシャント君にとっては、これは障害者に新たな力を授ける重要な発明品なのだ。
 「この「スーパー・ブレイン・モジュレーター」は、呼吸だったら誰もがやっていることだという原則に基づいて製作されたものです。この装置は、障害を持った人が感じる様々な考えや感情を実際の行動に変換するのに吐息を用いています」――スシャント君はこう語る。彼は今、このイノベーションについて世界規模での特許を申請中だ。
 この装置を設計するのに2年がかかった。この装置があれば、障害者は、照明を付けたり消したり、離れた場所に移動したり、自分のニーズを相手に伝えたりすることができる。
 スシャント君の発明はラシュトラパティ・バワン(大統領府)で開催されている『イノベーション展』に出展されている数多くの発明品の1つである。この展覧会は水曜日(10日)、プラティーバ・パティル大統領の出席の下で開会式典が行われた。ラシュトラパティ・バワンで開催されるこの種の展覧会としては初めての企画で、発明家と末端のユーザーを繋げる場を作る試みである。
*後半につづく
11日(木)、知人との会食のために会場入りして相手が到着するまでの間、通勤カバンの中に入れていた新聞を何気なく読んでいたら、『イノベーション展』がラシュトラパティ・バワン(大統領府)で10日から14日までの予定で開催されていると書かれていたのを発見した。僕も残りの任期を考えたらラシュトラパティ・バワンの中に入れるチャンスはこれが最初で最後かもしれないと思い、13日(土)にこの展覧会を見に出かけてきた。North AvenueのゲートNo.35から入場でき、会場時間は10時から17時まで、入場無料だが、バッグ、携帯電話、カメラ、文具類は持ち込み禁止とされている。

主催はこのブログでも度々紹介してきたNational Innovation Foundation(NIF)と「Honey Bee Network」を主催するNGO・SRISTIである。過去にNIFを取り上げた記事は下記の3件だ。参考にしていただけたらと思う。
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2009-09-19-2
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2010-01-01
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2010-01-19

3Idiots2.jpg展覧会に出展されていた発明品の中には、映画『3 Idiots(スリー・イディオッツ)』でも登場していたマハラシュトラ州のジェハンギールさん考案の「スクーター動力による製粉機」(右写真)やウッタル・プラデシュ州のモハメッド・イドリスさん考案の「自転車ペダル動力による羊毛刈取機」も出展されていた。ジェハンギールさんご本人も来られていて、僕がジェハンギールさんのブースを訪ねた時には、ちょうどテレビ局の取材も受けておられた。さすがに大ヒット映画でも紹介されたこの発明品は、展示会の中でも大きな目玉となっていたようだ。

DharamveerHaryana.jpgこの他にも、僕がHindu紙の毎週木曜日のサイエンス面の面白さに気付かせるきっかけを作ってくれたハリヤナ州のダラムヴィールさん考案の「アロエベラ・ジェル抽出装置」(右写真)をはじめとして、Hindu紙が毎週紹介してきた発明品が幾つも展示されていて、とても楽しい展覧会だ。会場はラシュトラパティ・バワンといってもその広大な敷地の中にある広場に設置された巨大テント内で行なわれていたもので、屋内展示だけではなく、屋外にも、風車動力による地下水ポンプが展示されていた。

来場していたのは親子連れだけではなく、小中学校の社会見学かと思わせる制服姿の一団も見かけたし、僕みたいに1人で出かけて来て、会場でたまたま知り合った同じような人と発明品の実用性についてかんかんがくがくの議論をしている人、マスコミの取材等、本当に多くの人が訪れていた。

そんな会場の展示品の中でもとりわけ驚いたのはやはりスシャント君の発明品だ。アイデアを思い付いたのが15歳の時で、それから地道に装置開発を続け、17歳で既に全国的な認知を受けるまでに至った。一種の草の根ロボット工学だけに、ガンダムの空想科学の世界にハマっている僕の長男(12歳)がインドにいれば連れて来て見せたかったなと思う。ロボット工学は戦争のためではなく、身近なところにある生活の不便を少しでも解消したいという問題意識から始まるものなのだということを、彼には気付いて欲しかった。かく言う文系の僕ですら、小学校高学年の頃には、お風呂のお湯が溜まったことを知らせるブザーの開発ができないかなんて考えて、いろいろ仕組みを考えていた時期があった。

それでは記事後半―――。
 カルナタカ州のアンナサヒブ・ウガヴィさん(76歳)は、「チャンドラプラバ(Chandraprabha)」と命名されたウォーターガンを発明した。ウガヴィさんは正規教育を受けていないただの農家だが、彫刻家の素養もある彼は、努力に努力を重ね、回転式スプリンクラーを考案した。このスプリンクラーは、少ない水でできるだけ広範なエリアに散水することが可能である。「このウォーターガンだけで1エーカーの土地をわずか1時間で散水できます。この機具の費用はわずか4,000ルピーです。」
 マディアプラデシュ州のサトウキビの芽の裁断機やウッタルプラデシュ州のコメや小麦、ピジョン豆の新品種、映画『3 Idiots』でも紹介されたマハラシュトラ州のジェハンギールさん製作のバイク動力による作業機等、この展示会には全国から発明家が参加し、その優れた発明品の数々を展示している。(中略)
 「私たちはこうした起業家や発明家の方々に出会いの場を設け、その知識を生産物やサービスに変換していきたいと考えています。私たちは、中小企業省から支援を得られないかと考えています」――こう語るのは大統領秘書のクリスティ・フェルナンデス氏だ。「大統領は常々、いつもやってること(busiess-as-usual)だけでは不十分だと申しています。私たちは常に違った角度からよりイノベーティブな形で考え、行動することが求められています。」
 大統領は、最近国会で行なった演説において、2010年から2020年までの10年間を「イノベーションの10年」と位置付けた。また、NIFで行なわれた授賞式でも、大統領はラシュトラパティ・バワン(大統領府)が主導してこの国のイノベーション推進役を果たしていくとの強い意向を表明した。(後略)
*記事全文は以下のURLからダウンロード可能です。
 http://beta.thehindu.com/news/article229045.ece
最近、日本の企業が「BOP(Bottom of the Pyramid)対象にしたビジネス開発」だと言われて具体的な貧困層の生活がどのようなものか知りたいからインドの貧しい農村を案内して欲しいと依頼を何度か受けたことがある。具体的にどんな商品や技術をテストしたいのかあまり絞れてない様子だったので、「National Innovation Foundationにレジスターされている農民の発明品の実用化に資金提供することから考えてみてはいかがでしょうか」と申し上げるようにしてきた。農村生活を改善する機具や装置は現地で入手可能なシンプルなものが多く、簡単に日本の企業が出てきて投資対象にできるようなものはさほどないのも今回の展示会を見てみての印象だった。途はまだ遠い。

この記事を読んで、ラシュトラパティ・バワンに今日行ってみようかという人がいたら嬉しい。イノベーション展は今日までだ。
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