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アグラの高齢者市民団体訪問 [インド]

アグラに、Respect Age International(RAI)というNGOがある。1962年設立という、既に50年近い歴史を持つNGOで、FCRA(外国援助資金規制法)の承認も受け、外国からの援助資金も受け取ることができる団体だ。但し、ウェブサイトを見る限り、プロジェクトタイプの活動をしているというよりも、市民主体のボランティア活動を中心とした地元密着型の市民ネットワークで、理事会役員を含めて会員の殆どが他に仕事を持つれっきとした市民である。勿論、町の有力者達であるが。

こうした市民間のネットワークが、アグラにおける異世代間の交流を可能にしている。RAIはその名の通り市民が誇りと尊厳を持って長く老後生活を送れる環境を実現することを目的として設立されたネットワーク組織であるから、高齢市民を対象とした意識啓蒙や能力強化研修だけではなく、経験豊かな高齢市民を抱える地域のメリットを次世代の市民に理解してもらうための異世代交流を重視する。だから、アグラの公立私立の学校とのコンタクトも持っている。

市民間ネットワークは勿論、高齢者を対象とした能力強化研修にも生かさせている。市内のパソコンスクールと提携し、高齢者向けパソコン研修を実施しているし、社会的弱者として搾取や虐待の対象となりやすい高齢市民に対し、彼らの権利が何で、それを確保するために彼らはどのような対応が取れるのかを知ってもらうための研修も行なわれている。

さらには特に経済的に厳しい状況に置かれている低所得層の高齢者を対象として自助グループ(SHG)の形成とマイクロファイナンスの推進を目的とした研修も行なっている。高齢者にターゲットを絞ったSHG形成やマイクロファイナンス推進を行なっている団体はインド国内を見渡しても非常に珍しく、しかも元々がSHG形成が難しいと言われる北インドの話だけに、その実施状況は注目される。

こうして高齢者の自立も目指すRAIであるが、それでも自立が難しい貧困高齢者を対象とした老人ホーム設立の構想もある。構想では3階建の高齢者センターの3階を高齢者の居住スペースに割り当てることになっているが、市民からの寄付に基づいて建設が進められているこの建物は、現在は2階の一部までの建設に留まっており、1階部分の研修ホールと、2階の研修参加者用宿泊室及び自炊室は既に使用されている。

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《Home for Senior Citizensの2階までの完成予想図はこんな感じ》

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《現在の出来上がり具合はこんな感じ。3階建設の余地を残している》

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《ホーム正面ゲートの拡大写真》

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《ホームの設立資金を寄付した方々のリスト。ヒンディー語でよく読めませんが》

研修施設を持っているということは、市民向け研修だけではなく、高齢者支援を中心に据える市民団体の関係者向けの研修も行なえる施設を持っているということでもある。実際、RAIのこの施設は、デリーにあるNational Institute of Social Defence(NISD)がインド社会正義エンパワーメント省から請け負っている老人ケア研修(Basic Issues in Geriatric Care)の1ヵ月研修を北インドで共同実施担当している。

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《毎年3月に開講するNISDの研修コースのカリキュラム。てかってよく読めませんが…》

さて、この団体が「インターナショナル」と銘打っている理由は、こうした市民主体の交流が、インド国内どころか、モーリシャスのインド系住民との間でも進んでいるからである。何年からだったか定かでないが、モーリシャスのグループとは、毎年往来がある。ということは、チャンネルさえちゃんと作れば、日本の高齢者市民団体との交流もあり得るということである。なにせ場所がアグラだけに、インドを訪問される日本の高齢者の方々には是非訪ねて交流を深めていただけたらなと思う。

僕がこの団体のことを知ったのは、1年少々前にデリーで開催されたある集まりでたまたまRAIの事務局長のグプタさんと知り合いになったからである。その頃から「一度アグラに来て我々の活動を見て欲しい」と事あるごとに誘われ続け、12月になってようやくそれを実現させた。その模様は弊ブログ記事「アグラ再訪」でもご紹介した通りだ。ちょっと時間が経過してしまったけれど、今回はそのアグラ訪問時に訪ねたRAIの活動について紹介させてもらった。

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《RAIの主要メンバーの面々。左から2人目がグプタさん》

グプタさんは年齢的にはうちの両親と近い。僕がまだ生まれたばかりの頃、グプタさんはアグラに観光に来られた1人の日本人医師と知り合いとなり、その後40年以上にわたって手紙の交換をしてきたという。新潟にお住まいのお医者さんだそうだが、この先生も既に80代半ばを過ぎ、認知症の症状もあって交流が難しくなってしまったと残念がっておられた。僕が日本に帰ったら、是非その先生にグプタさんの近況を伝え、その先生の近況もグプタさんにお伝えするようにしたいと思う。

「その先生とは長年「友」と呼べる関係だったが、君は僕が「友」と呼べる2人目の日本人だ」
――グプタさんにそう言われると単純な僕は頬を赤らめる。

僕も東京に戻ればれっきとした市民団体のメンバー。インドでこうして育んできた人的ネットワークを活用して、市民間の交流を深めていく活動に貢献できたらと思っている。そのためにも、元気で帰国したいものだ。

*Respect Age International(RAI)のウェブサイトは下記の通りです。
http://respectage.com/
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