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ファブインディア社長がやったこと [読書日記]

MakingIndiaWork.jpgWilliam Nanda Bissel
Making India Work
Penguin Books India
July 15, 2009
ファブインディア(FabIndia)といえば、衣類、ベッド・リネン、キッチン・リネン、カーテン等のリテール・フランチャイズとしてはかなり有名で、在留邦人もかなりお世話になっている。お土産をファブインディアで買うと言う人も結構多い。

そのファブインディアの社長が本を出版した。ファブインディアのリネンよろしく緑系統のシンプルな表紙を持つこの本、実は未だ読み始めたばかりなのだが、ビッセル社長の取組みとして面白い記述があったので先に紹介しておこうと思う。

 私はラジャスタン州の荒廃した小さな土地に建てられた学校の運営に関わっている。学校トラストがこの土地を1992年に購入した頃は、それはやせて乾燥し、土も堅かった。珍しくも雨が降った時は、雨が落ちてきて、それが集まって小さな流れを作り、そして地面を流れていくのをよく眺めていたものである。そして数時間後にはまたただのやせこけた乾いた土に戻ってしまう。他には水源はなかった。私は建築家である友人とともに、この土地を全て巨大な集水装置に変える取組みに着手した。等高線を地図に描きだし、土地の自然な勾配を利用し、我々が掘った長方形の貯水池に水が流れ込むようにした。その後6年間、私達は降ってきた水をその域内で活用できるよう貯め込み、さらにその貯水池の容量を拡大した。そこに溜まった水は甘く、それはインドでは希少商品だと言われた。時間がたつにつれ、水が地中に浸透することにより、貯水池の周りにはジャングルが形成されていった。それは私がラジャスタンの不毛の土地で初めて見た最も深い植生だった。この成功に続き、私はこのような貯水池をもっとたくさん作ってはどうかと考えるようになった。貯水池を作り、域内で消費されない水は外部で販売し、荒廃地への再植林に政府の助成金を得る。この時、政府は莫大な資金をつぎ込んで再植林を推進していたが、森林被覆への過程で何も成果が得られないというのが一般的な状況であった。しかし、そこで生産される水の水質や森林の多様性を事前評価するためのインフラもなく、こうした天然の産物に価格付けを行なう手法も存在しなかったため、私のアイデアは価値あるビジネス機会に繋がらなかった。私の作った新しいジャングルは価値を持たなかった。(後略)(pp.xxxiii-xxxiv)

ラジャスタンが砂漠みたいなところだというのはよく聞いていたので、そこにジャングルが形成されたと言われてもにわかに想像ができないが、ここで著者がやったのは一種の小規模流域管理(マイクロウォーターシェッド・マネジメント)で、僅かばかりの勾配を最大限活用し、その流域に降った水が下流で流出することなく流域内で有効に利用される仕組みを作るというものだった。但し、それを素人の測量でやるのではなく、ちゃんとした専門性を持った友人を味方に付け、測量をして行なわれている。(因みに、同じ「ウォーターシェッド・マネジメント(流域管理)」という言葉も、ネパールでは主に水災害軽減防止の観点も含めた水のコントロールという意味を持っているようだが、インドの場合は、その域内で貴重な水資源をいかに確保するかを考えることを意味しているようである。)

FabIndiaShool.jpg
《ファブインディア・スクール周辺の「ジャングル」》

著者はまた、本書の中で、英国によるインド植民地運営についてもポジティブな評価をしているくだりがある。英国がインド統治を開始するに当たって、様々な専門領域を持つエキスパートを集中的に投入し、インドの統治体制を短期間で確立するための調査研究を徹底的に行なった点である。今でもこの国の行政機構が英国植民地時代のそれをひきずっていることを考えると、英国が短期間でインド統治体制を確立し得たのは驚異的なことではあると思う。

著者が運営支援するファブインディア・スクールは、ラジャスタン州バリという村にある。ウェブサイトを見ていると結構外国人ボランティアを1ヵ月から6ヵ月の期間受け入れて教師をやってもらうという取組みを毎年行なっているようだ。その辺も欧米の青年ボランティアの社会貢献への意欲を上手く利用して人件費を節約しているように思う。残念ながら日本人のボランティア受入実績はないようだ。

未だ全然読み終わってないけれど、取りあえずこのエピソードの紹介だけはしておきたく、先に1つ記事をアップさせていただいた。和訳が面倒なのでそのまま英語で本書の紹介を転載しておく。
For a nation that has one of the highest growth rates in the world, India is plagued by poverty and corruption. Sixty years after Independence, India accounts for around 36 per cent of the world’s poor. The deepening fault lines between the haves and the have-nots have given rise to skewed development and widespread discontent.

William Nanda Bissell, Managing Director of the successful Fabindia chain, believes India’s poverty is a direct result of its poor management by ruling elites who have mastered the art of winning elections but have no interest in the deeper issues of governance. He argues that economic development that consumes large amounts of natural resources and generates enormous pollution is not a luxury available to countries that are beginning their development now.

Instead, he proposes a radical, new paradigm for development that delinks consumption from quality of life without destroying the natural environment in the process. Making India Work echo the ideas and beliefs that underpin the Constitution of India; but it ventures beyond the hackneyed phrases of development to focus on strategies which can, Bissell believes, end poverty in India in five years.
出所:http://www.penguinbooksindia.com/Bookdetail.aspx?bookId=3636

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職務経歴書の作成

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 職務経歴書の作成 (2013-04-17 10:45) 

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