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「貧困」の定義をいじると… [インド]

過去の「貧困」の定義
◆テンドルカー委員会(S. D. Tendulkar Committee)が新しく打ち出した貧困人口予測(38%)は計画委員会が最後に行なった2004-05年度の予測である28.5%よりも10%高い。
◆2007年に国家未組織セクター委員会(National Commission on Unorganised Sector)が組織した委員会で行なわれた予測では総人口の77%が貧困層以下で生活しているという。
◆2009年6月に農村開発省の委員会が打ち出した定義では、貧困層人口は総人口の50%と予測している。

8月20日のHindustan Times紙に「38%のインド人は貧困層(38% per cent Indians are poor: report)」(Chetan Chauhan記者)が紹介されていた。
新しい定義は、国立サンプル調査機構(National Sample Survey Organisation、NSSO)の2004-05年度調査をもとに、健康や教育、衛生、栄養摂取、所得等の指標を総合して割り出されたもので、この予測を打ち出した委員会は、首相経済諮問委員会(PM Economic Advisory Committee、PMEAC)のテンドルカー元委員長が座長を務めたものである。この辺の算出方法を見る限りでは、国連開発計画(UNDP)が1990年代から提唱している「人間開発指標(Human Development Index)」に近いものであるように思える。

1972年以来、インドでは貧困層を、①都市では1日2,100kcalを摂取するのに必要な食料購入費、②農村では1日2,400kcalを摂取するのに必要な食料購入費、をもとに算出するという手法を取ってきた。しかし、時代の経過とともに、この定義が実態に即さないとの批判が専門家から寄せられるようになってきた。

今年6月には、N. C.サクセナ氏を座長とする政府委員会はインド人の50%は貧困層であるとの定義を打ち出した。また、これに先立つ2007年には、全国未組織セクター委員会のアルジュン・セングプタ氏(Arjun Sengupta)が、総人口の77%は貧しいとの見方を打ち出している。いずれの貧困人口の予測に対しても、政府はこれを否定している。

貧困層の定義をどう決め、その人口を予測することは、政府政策の支援対象の絞込みや必要予算額の算定には非常に重要な要件である。テンドルカー委員会の新しい「貧困」定義は従来インドで使われてきた貧困概念よりも明らかに広義であるため、これを採用すれば、①貧困ライン以下(BPL)人口の特定が再度行われなければならなくなる、②捕捉される新しい「貧困層」向けの支援プログラムに今より多くの予算を配分せねばならなくなる、といった影響が予想される。現政権は過去4年間に貧困層支援プログラムに1兆5100億ルピーの予算を投入している。このプログラムに含まれるのは貧困対策に分類される3つの政策のみである。

テンドルカー委員会の予測に従うと、貧困ライン以下の世帯数は8320万世帯となる。この予測によれば、例えば全国食糧安全保障法(National Food Security Act)に基づく支援対象拡大で905億ルピーの追加支出が発生する。因みに2009-10年度の当該プログラムの予算額は3,701億ルピーである。
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