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『アジアの医療保障制度』 [読書日記]

アジアの医療保障制度

アジアの医療保障制度

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本
出版社/著者からの内容紹介
オーストラリア・シンガポール・香港・中国・インド・韓国・台湾・日本の医療保障制度について、公平性や効率性の視点から医療保険制度・提供体制の比較を含め単なる制度紹介ではなく、対象となる制度を分析する。日本の制度改革にも有益である。

先月の一時帰国の際、三鷹市の図書館で借りてインドに関する章だけコピーを取って返却し、しかもちゃんと目を通したにも関わらず、何となく紹介するタイミングを逸していた。どういう理由でこの8カ国の比較を行なったのか、何故東南アジア、南アジアからはそれぞれシンガポール、インドの2カ国のみなのか、結局この比較をしてみて日本の制度改革にどのような示唆がえられたのか、逆にこの比較を通じて各国の医療保障制度改革の方向性としてどのような示唆が得られるのか、そんなことを知りたい気もしたのだが、本書の構成を見ると各国の紹介のみで、結果取り纏めを行なった章が前にも後にもない。だからこの本全体としてはまとまりの悪さが気になる。

そうしたまとめの役目は編者によるはしがきの部分に若干の記述はある。8カ国を概観すると、経済の発展度合いや歴史的経緯など多様ではあるが、少子高齢化や技術進歩に伴う医療費の増大、医療の地域格差、保険者機能、国と地方間の財政調整、医療費増大に伴う財政制約、医療従事者の不足といった直面する政策課題には共通点が多いという。問題の性格が全ての国で共通だとは思えないが、少なくとも表層に表れている問題は似かよっているのは日本とインドを見ていて何となくわかるような気がする。

いや、元々この種の本は関心のある国の制度紹介の章だけを読めばことが足りるのかもしれない。インドの章は勿論読んだ。あまり長々と書きたくないので、簡単に整理しておくと―――

1)インドでは英語が使える強みを生かして外国人向けの高度医療を提供する体制を整えている一方で、貧しい地域では乳幼児死亡率や妊産婦死亡率は高く、農村部や貧困層の医療サービスには問題が大きい。

2)農村部、都市部とも富裕層は公立病院よりも私立病院での入院・外来診療の傾向が強い。

3)中央政府、州政府、地方自治体(パンチャヤット)の支出構造は、プライマリーヘルスケアよりも三次医療である治癒に予算が大きく配分されており、特に州政府と都市自治体では、富裕層へのサービス提供が重視される構造となっている。

4)インドでは、すべての国民が質の高い医療サービスを利用できることが保健政策の一大目標となっているが、実際には地域、所得、社会グループによって利用格差が著しい。

なんとなく、当たり前のようなことが述べられているような気がするが、実際にこの章の記述はもっと情報が多く、参考になるところが多かった。
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