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『新撰組』 [読書日記]

新選組―「最後の武士」の実像 (中公新書)

新選組―「最後の武士」の実像 (中公新書)

  • 作者: 大石 学
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
嘉永六年(1853)のペリー来航から明治二年(1869)の箱館五稜郭陥落までの幕末維新期、さまざまな国家構想が錯綜する中で政争や戦乱が展開された。こうした時代に生まれ、滅んだ新選組とは、どのような集団で、いかなる歴史的位置を占めていたのか。近藤勇らが幕末の京都で活躍できた政治的基盤や、近代性・合理性といった組織としての先駆的性格に着目しつつ、各種史料を丹念に検証する新選組全史。
2004年のNHK大河ドラマに関連して、実に多くの新撰組(新選組)関連書籍が出版された。元々大河ドラマをよく観ていた者(「利家とまつ」の途中くらいから少しだれてしまい、「武蔵」は中途半端にしか観ていないが)としては、新撰組は非常に関心あるところだった。ましてや近藤勇の生家である宮川家は三鷹市大沢にあり、野川公園の向かいにある龍厳寺の檀家だったらしいし、試衛館道場があったといわれる牛込柳町は僕の元勤務先から近いので、興味深く読むことができた。

人によって読むポイントは違うと思うが、僕の場合は準地元ということもあり、①なぜ新撰組の中核をなしたグループが多摩地区から出たのか、②新撰組は実のところどのように評価すればよいのか、の2点を中心として読んでみた。


先ず、多摩と江戸の関係であるが、筆者は、多摩という土地を、①鷹狩りの場(鷹場)、②新田開発振興地域、③西へ向かう街道整備、④江戸の水源(神田上水、玉川上水)の4つのポイントから重視されたと説明している。そういえばうちの近所には新田開発絡みの地名が多い。境、西久保、井口、連雀、吉祥寺などである。

次に、新撰組の歴史的評価であるが、公武合体を死を以って護るという姿勢に、筆者は多摩農村の封建的風土が根底にあると指摘している。僕は新撰組のことを冗談交じりに「幕末のテロリスト集団」と呼んだりもしているのであるが、この筆者も「反動的武装集団」と呼び、この反動姿勢が幕末維新における近代化の動きと相反するものであったがために、「日本最後の武士」としての評価に繋がっているのだと述べている。

また、筆者はこのような反動的組織である新撰組ではあるが、意外と合理性や近代性を内包した先駆的組織であったことも指摘している。例えば、①全国から社会階層を問わず志願制で隊士を募ったこと、②組織化、官僚化が進み、法度や公金帳簿を整備し、公印まで作っていたことなどが例として挙げられている。おそらくこの辺りが筆者のオリジナリティなのだろう。

「銃を持たない剣士集団」として時代に取り残されたイメージが強い新撰組であるが、こうしたステレオタイプとは少し異なった視点から評価を加えているという点では興味深い作品だと思う。余談ながら大河ドラマで鳥羽・伏見の戦いの最中に土方が「これからは刀で戦う時代ではない」と悟るというシーンがあったと思うが、僕はそんなことは300年以上前の長篠の合戦を契機に既にわかっていた当たり前のことであり、少し違和感を覚える逸話である。
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みかんママ

>試衛館道場があったといわれる牛込柳町は僕の元勤務先から近いので

十数年前に、その牛込柳町の交差点のそば、コンビニの裏手に住んでました(^_^;
そういう意味で、新撰組には親近感を覚える1人です♪

中々男性的な視点で、読むことは出来ないんですけど、人様の所見などは大変参考になります。
改めて読み返してみようと思いました♪
by みかんママ (2009-04-14 10:00) 

降龍十八掌

新撰組というと、古いですが必殺!の三田村邦彦が主演したNHKの壬生の恋歌のイメージが強いです。(最近の人気ドラマの新撰組は、非常に違和感があります。)
現代でいえば、24のテロ対策ユニットか自衛隊の特別組織を民間から募ったというところでしょうか?テロリストではなくて、テロリストを取り締まる方ですよ。(笑)
私の世代ですと、幼いころは鞍馬天狗などで悪役のイメージが強かったですね。

戦国時代でも、戦はヤリでするもので、カタナ抜くときはもう最後の場面ですからね。
by 降龍十八掌 (2009-04-15 16:38) 

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