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郵政民営化について思うこと [時事]

郵政民営化法案は、5日に中曽根弘文参議院亀井派会長の反対表明によって与党内の反対票が否決ラインの18人を超す見込みが強まり、8日の参議院本会議で否決される公算が高まった。そして、小泉首相は、「否決は内閣不信任とみなす」として、衆議院解散に踏み切るという。

議員に自殺者まで出して迷走に迷走を重ねた郵政民営化法案は風前の灯だ。首相が就任前から持論として提唱し続け、就任後も改革の本丸と位置付けてきた郵政民営化が国会の支持を得られないなら、解散総選挙で国民に信を問うというのは当然といえば当然の発想だ。

だいたい、郵政民営化ってそんなにいけないことなのだろうか?僕は、予算制約が厳しい途上国での公共サービスのあり方について自分なりに考えてきた中で、累積債務の対GDP比が170%もあるような国で、公共事業を官が独占し続ける意味をもう一度考えるべきではないかと常々思っている。公共性を担うのはいつでも行政の役割というわけではない。民が担う公共というものをあると思っている。

郵便事業だけを見た場合、情報化が進んで紙媒体が電子媒体にどんどん代替している今日、郵便事業の将来の採算性には相当な疑問を感じる。ましてや少子高齢化が進んで人口減少社会を迎えようとする今日、郵便事業への需要が今後今以上に掘り起こせるとはとても思えない。人口減少社会の将来像としてよく語られるのは、地方でも中核都市が形成され、中核都市への人口流入と過疎地域からのさらなる人口流出が起きてくること、行政単位も、今の47都道府県を単位とするのではなく、道州を単位として、市町村レベルでは自治体合併を進めて中核都市形成の円滑化が必要であること、などである。地方でも、中核都市と過疎地域の二極化が起きるということだ。

それであれは、人口がある程度稠密な地域の郵便事業は採算性が高いので民間事業者の参入が期待できるだろう。民営化反対派の議員の論点は、過疎地におけるサービスの低下であるが、今の政府案は過疎地の郵便局は廃止せず、採算性の問題で多少の財政負担が生じることは織り込んだ上で、長期にわたって官がサービス提供を行なうとしている。

もう1つの手法は、「最小補助金入札(Minimum Subsidy AuctionまたはLeast-cost Subsidy Auction)」というもので、民間事業者に事業計画の提案書を提出させ、その中で期待されている政府からの補助金の必要額が最低も事業計画に第一交渉権を与えるものである。要は民間事業者に考えられる創意工夫を提案させることによって、補助金給付による財政負担を抑制するというものである。

前者は、サービス提供を官側で行なうというもので、後者は民側で行なうというものだ。上手く制度的枠組みを作れば、一般的には後者の方が財政負担は少ないのではないかと思う。この仕組みは、ペルーの地方通信事業では既に導入されて成果を上げている。但し、不採算地域で民間事業者に事業委託する場合は、極端な話、事業をやらなければ必要補助金額はゼロになるわけで、その意味では提案される事業の内容が問われるし、しかもいったん受託した事業者がちゃんと提案通り事業実施しているのかを監視する仕組み作りも必要になるだろう。これは採算・不採算を問わず民営化した場合に必ず必要になる機能・枠組みである。

民営化したら民間事業者が勝手放題に振舞って収益確保に奔走するから反対という論者も多い。でも、民営化したらしたで、事業者に課すルール作りとそれを監視するための体制作り、違反者に対する罰則の適用、など、政府には様々な役割が求められる。民間に任せたからお終いというわけではなく、民間に任せたが故に新たな政府の責任が発生すると考えるべきなのである。

以上述べてきた通り、僕は将来の財政負担を考えて郵政民営化には賛成の立場である。小泉さんの構想も、その基本姿勢の部分については支持したいと思う。でも、その基本姿勢を具体的な行動計画に落としていく段階で、与党と国会の支持を取り付けるために妥協に妥協を重ねてきたため、かなり骨抜きにされてきたのが現状の民営化法案の姿なのだと思う。僕から見ると、反対派議員の論点は全国の郵便局職員の雇用問題にあるように思える。彼らの声が票に繋がるからだろう。ここでもう一度誰もが考えるべきだし、小泉さんもしっかり国民に説明すべきだと思うのは、基本姿勢の部分なのではないだろうか。

今朝の日経一面に、論説副主幹の平田育夫氏が「改めて郵政改革を考える――新しい国造りに不可欠」という論説を書いている。郵政民営化法案に賛成か反対かではなく、僕達が今本当に問わねばならないのは、郵政民営化が必要か否かなのではないだろうか。
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