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INDIA The State of Population 2007(その2) [インド]

India: The State of Population 2007

India: The State of Population 2007

  • 作者: Alok Ranjan Chaurasia & S. C. Gulati
  • 出版社/メーカー: Oxford University Press India
  • 発売日: 2009/03/15
  • メディア: ペーパーバック
これから何回かに分けて本書の紹介をしていきたい。

1.本書を読むに当たっての問題意識
インドの人口問題に関して、これまで高齢化や人口移動という視点から幾つかの論文を読んできたが、人口問題そのものを包括的にまとめたレポートは読んだことがなかった。Institute of Economic Growth(IED)のモニール・アラム教授と面談した際、インドの人口政策が極端にリプロダクティブヘルスに偏っており(人口政策=リプロダクティブヘルス)、人口構成の変化に伴う高齢者人口の増加に対する施策が殆ど顧みられていないという状況については指摘されていたが、そもそもインドの人口政策とはどのようなもので、インド政府の政策・制度の枠組みがどのようになっているのかについては十分承知もしていなかった。 このため、高齢化という特定の課題に特化する前に、一度インドの人口問題と人口政策について俯瞰しておく必要があると感じていた。

もう1つの大きな問題意識は、人口動態予測において国内人口移動をどう扱えばよいのかという点にある。日本で都道府県別の人口動態を見ると、1960年代の高度経済成長を下支えした若年層人口の大都市圏への流入は現在でも見られる現象であり、それが大都市圏の人口増加や比較的低い高齢化率を支えている。日本の都道府県別人口動態とインドの州別人口動態を一様に扱うことはできないが、仮にインドで州別人口動態を予測する際に、国内人口移動の規模をどの程度と見て予測は行われているのかという点には関心があった。

言うまでもないことであるが、インド全体でみた場合に人口政策として優先度が高いのは人口増加の抑制(本書で言う「人口の安定化(population stabilization)」)である。しかし、これまでの筆者の主張をこの政策課題に当てはめた場合、問題の性格や開発課題全体の中での位置付けは地域によって大きな違いがある。合計特殊出生率の抑制という上で重点が置かれるべき州と、そうでない州とが当然存在すると思われる。高齢化はむしろ合計特殊出生率が人口置換水準を既に下回っている州で早期に政策課題としての優先度が高まっていくと考えられるため、人口動態を見る上である程度州のグループ分けはイメージしておきたい。そのような目で本書を読み始めることにした。

なお、著者のうちアロク・ランジャン・チャウラシア教授は元IED教授で、今は国連児童基金のコンサルタントである。グラーティ教授は現在もIED教授である。元々このレポートはIEDが人口研究部門を設けて取り組んできた知見が集積されており、レポート取りまとめに当たって技術的助言を行ったTechnical Advisory Committeeにも、IED教授の他、計画委員会(Planning Commission)、人口委員会(National Commission on Population)、社会開発評議会(Council for Social Development)、ネルー大学、国際人口学研究所(ムンバイ、International Institute for Population Sciences)等の代表者が顔を揃えており、インドの人口問題の今を学ぶには格好の入門書ということができる。
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