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『一瞬の光』 [読書日記]

一瞬の光 (角川文庫)

一瞬の光 (角川文庫)

  • 作者: 白石 一文
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 文庫
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橋田浩介は一流企業に勤めるエリートサラリーマン。38歳という異例の若さで人事課長に抜擢され、社長派の中核として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、彼はトラウマを抱えた短大生の香折と出会い、その陰うつな過去と傷ついた魂に心を動かされ、彼女から目が離せなくなる。派閥間の争いや陰謀、信じていた人の裏切りですべてを失う中、浩介は香折の中に家族や恋人を超えた愛の形を見出していく。
6月に一時帰国した際に自宅に置いてあった本を何冊か近所のBook-Offに持って行って売却したのだが、その際に何か面白そうな本がないかと思って店内を歩いてみた。そこで販促のポップと平積みが目に付いたのがこの超長編小説である。年齢的に自分と通じるところを感じて思わず買ってしまったが、600頁近い長編なので、読み出すタイミングを考えてしまい、今まで放ったらかしにしていた。日曜夜から夜行便で東京に出張で帰ることになったため、その直前から読み始め、機内で読み切ってしまった。

こういう小説を読むのにはその作品を選ぶ何らかの必然性がいつもあるように思う。決して意図して買ったわけではないが、読んでみてわかったのは、この主人公・浩介の勤める一流企業とは、僕の職場のあるオフィス・ビルに同じく支社を構えている某日系企業であることが容易に想像されてしまった。ある意味リアルで楽しめたといえば楽しめたのだが、大手企業のエリート社員ともなると、こんな露骨な派閥争いや政官との癒着が日常茶飯事なのかと思うと、そのご近所の企業さんを見る見方もちょっと微妙になってくる。まあ僕のように平々凡々とテキトーに社員をやって、やりたい仕事をやってりゃ満足という生き方とは全く異なる。トップ争いというのが入社早々の配属先からかなり規定されていくというのを見ると、多分僕には縁もゆかりもない世界だろうと思う。

社長とのホットラインが繋がっていて簡単に幹部を飛ばせるエリート社員、中高大学からモテモテで女性には不自由もせず、食事も超一級のグルメときた。ある意味男としては理想像だろう。女性にモテモテであっても本気だった女性は3人だけだと主人公は述べるが、なんだか悔しいし、正直ムカつくところもある。そんなものすっ飛ばしてもっとシンプルな記述にしておけば、600頁もの大作にはならなかっただろうと思う。途中で結論が想像できてしまったのもちょっと残念だ。

この作品が売れた理由というのは、あまりにも現実離れしたスーパーサラリーマンの設定がある種の男の理想を描いているからだと思う。超美人でビジネス的にも成功を収めていてかつ料理も抜群に上手い28歳のコンツェルン令嬢を振り、トラウマに苛まれて放っておくと何をしでかすかわからなくて料理もまともに作れない薄幸の短大生を選ぶというはあり得ないだろうと思うが(いかん、オチをばらしてしまった)、そういうのも男の理想かもしれない。僕にはとてもできませんが、架空の世界であればそんな生き方もいいかなと惹かれてしまうところは否定できない。

それにしても長い小説だった。こんなもんだろうと思ったけれど、長いだけに達成感はひとしおだ。
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