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「開発ひろば」での報告 [インド]

デリーには、日本人でインドの経済開発や社会開発に関心を持つ有志の人々が集まって毎月1回土曜日の午後に勉強会を開いている。「開発ひろば」と呼ばれている集まりである。僕自身はこういう集まりには関心はあって常に出たいと思ってはいるのだが、なにせ土曜日は午前も午後も子供達の野球やバレエの練習があって、練習に付き合うか或いは末っ子ルイの相手をして留守番係をするかのどちらかであることが多く、1人家を空けて単独行動を取ることが難しくてこれまで参加したことがなかった。

そんな僕が、19日(土)に開かれた7月の集まりで、「アジアの人口高齢化とインドの人口動態」というテーマで報告をさせていただいた。このブログをご覧になられている方々であれば、僕が昔日本で少子高齢化についてかなりの勉強をしてきていることはご存知かと思うし、その問題意識に立って、インドに来てからもこの国の高齢者に関する新聞報道や資料を意識的に収集し、高齢者の生活支援を行なっているような現地NGOの活動を見学させてもらったりもしてきた。今年から日本の某大学院に籍を置いて、インドの人口高齢化の諸相をもう少しちゃんと調べて論文に纏めたいとも思っている。

こういう言い方はしていて自分も嫌になるし聞いている人も白々しいものをお感じになると思うのだが、正直なところ仕事が忙し過ぎて研究活動の方の進捗状況は残念ながら捗々しくない。でも、初期の段階で研究計画とそこでの問題意識を少し披露して、僕1人では集めきれないインドの農村や都市での高齢者の置かれた状況に関する情報やそれに基づく参加者の方々のご意見を少しでも吸い上げることができればと思い、今回は自分から世話人の方々に売り込んで報告の機会を作っていただいた。

準備していった資料は殆どが昔別のところで話した時に使った説明資料の焼き直し。テーマの後半部分(インドの人口動態)については、これまでの集めてきた文献資料からデータを引っ張り出してきたり、ネットで検索して統計情報を集めたりして、資料には反映できなかったものの報告の中では少しずつ言及はした。なんでインドでは持続的経済成長に楽観的なのかについての人口学的見地からの説明もさせていただいた。とはいえ、何しろ直前の1週間は本社から期限を切られた作業が目白押しだったので(いつものことか…)、準備らしい準備ができたのは当日朝の僅かな時間しかなく、インドの人口動態に関する言及は配布資料にまではとても反映させている時間がなかったのである。

僕の問題意識は、日本にいると往々にしてインドを1国として捉えてしまい、今後暫くはインドは高度成長が持続し、バラ色の未来が待っているという論調が多くなりがちだが、ちょっと調べれば出生率がかなり下がって合計特殊出生率で1.0(東京並み!)の州もあれば依然4.5(ウッタルプラデシュ州)、4.4(ビハール州)なんてところもあるので、インド平均が3.3だからといって、まだまだ下げる余地があるという議論にはならない、共通の特徴を持った地域(便宜上州単位で考えているが)ではせめて州レベルでの施策を中央政府の施策と上手く組み合わせていかなければならないというところにある。

ただ、実際に「開発ひろば」で報告してフロアからの反応を聞いていると、州別ではなく都市と農村間の格差についてももう少しハイライトした方がいいのではないかとの指摘や、とはいっても農村部に行くと州政府の存在自体も無いに等しく、政府の高齢者施策など期待すること自体が難しいとの指摘もあった。前者の指摘はその通りで、先々週プネに出かけて行ってあんな小さな1つの県の中でも、農村から都市への若年層人口の移動が起きて、人口ピラミッドが双方でいびつな姿になっている(であろう)ことが観察できたので、州別で捉えるのは不十分だというのを僕自身も感じていた。後者の指摘についても、報告の中では政府の施策を強調しすぎた感はあるものの、僕自身もやはり地域の問題は地域内のアクターが解決に向けて立ち上がって取り組んでいかねばならないのだろうと思っている。

日本人の我々は、人口減少下の日本で今後どのように取り組んでいったらいいのかという質問も受けた。難しい問題だと思うのだが、僕も実は政府ができることはかなり限られてきており、地域住民が自ら立ち上がるところに期待をしているところがあり、しかも退職してから地域デビューしていては実は遅くて、僕達のような現役世代が現役世代のうちから地域デビューを果たして地域の中での繋がりの強化について一翼を担っていくことが必要なのではないかと思っている。

今回の報告は第1弾ということであり、今後、研究が進んでこれば第2弾、第3弾ででも報告機会が与えてもらえると嬉しいと思う。12回に1回という頻度はちょっとtoo muchではあるが、こういう里程標でも所々に設けていかないと、今みたいに仕事の忙しさの流されていてろくに研究に時間を割けない言い訳探しに追われる事態になりかねないと思う。だからやはり報告機会はどんどん作っていく必要がある。それに、そうして進めていけば、今後またHelpAge IndiaやILCといったインドの高齢者問題のリーダー的組織の代表の方々と交流していくための情報武装にもなっていくだろう。

つらくて孤独感すら日々感じている今の職場での仕事を嫌々やっているだけではなく、自分にメリットがあると思う課外活動もできるだけやって、心のバランスを持ち続けたい
―――改めてそう思うこの日の報告会であった。
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One-for-you

日本含めW/Wなマクロな視点で論ずるほどの領域には遠く恥ずかしいですが、オイルであれ穀物であれ異常な状況に突入していると感じております。
また、単身滞在の経験もあり、やはり疎外感等は感じたことはございますし、今でも、日本を離れて仕事をしていると孤独感を感じるここはございます。

情報武装・論理武装も備えて、そういったSocialな活動をなさることは、心身面のバランスKeepとして重要なFactorだと自分自身は考えております。

ご活躍、祈念申し上げます。


by One-for-you (2008-07-22 01:11) 

Sanchai

One-for-youさん、心温まるメッセージとNiceをありがとうございました。どこまでやれるのかわかりませんが、頑張りたいと思います。
by Sanchai (2008-07-22 01:47) 

Sanchai

kisskさんもNiceな1票ありがとうございました。
by Sanchai (2008-07-22 02:21) 

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