SSブログ

インドのマイクロファイナンス概況2007 [インド]

ひょんなことからインド・マイクロファイナンス概況調査2007(India Microfinance Review 2007)というレポートがあることを知った。この調査は、マイクロファイナンス機関(MFI)の独立格付機関であるM-CRIL(Micro-Creidt Ratings International Ltd.)とマイクロファイナンスの情報共有プラットフォームであるMIX(Microfinance Information Exchange)が共同で行なったもので、M-CRILで格付け取得しているMFI58機関と、MIXに情報掲載している37機関をサンプルとして分析が行なわれた。その結果は、74頁にわたるレポートとして纏められ、下記のURLで閲覧可能である。
http://www.microfinancegateway.org/content/article/detail/45957/

調査対象となったMFIの殆どが南インドに位置する。南インドに属するMFIは、M-CRILサンプルで40%、MIXサンプルでは64%にも上る。MFIがサービス提供している総顧客のうち3/4が南インドで生活している。これは主に南インドの方が北インドや東インドと比べて経済基盤が強固で発展しているからであろう。

サンプルとなったMFIのうち、54%はバングラデシュで有名となったグラミン銀行と類似した会員相互の人的保証に基づく貸付サービスを行なっている。さらに、32%は農村自助グループ(SHG、Self-Help Group)を通じたグループ貯蓄・融資を行なっている。インドで最も古くからあるマイクロファイナンスの実施形態である組合(cooperatives)や個人バンキングはサンプルの14%程度しか占めていない。

営利目的の金融機関が増加する傾向を反映して、サンプルのうち25%はノンバンク金融機関(NBFC)が占めている。NBFCが用いる営業形態としてはグラミン方式が一般的で、1機関当たり約13万人の顧客を持ち、MFIの総顧客数の50%以上を占めている。

MFIの総顧客数は1500万から2000万人と見られている。しかし、6000万から7000万世帯と見られている貧困家庭のうち、わずか35%しか顧客として金融サービスが受けれていない。格付けを取得しているMFIは年平均80%という急速な成長を示しており、平均すると64000人が借入れを行なっている。これは南アジアのMFIの平均よりも40%高い数値である。

貸出残高は急速に拡大してきているが、顧客による預金は相対的に減少している。2005年には対貸出残高比で11.5%あった預金残高は、2006年には8.1%にまで減少した。これは、NBFCや非営利企業は貯蓄性預金の受入れを行ってはならないという法律の影響と見られる。

インドのMFIセクターは世界的にも最も急速に成長し最も効率性も高いと見られている。サンプルとなったMFIは平均すると326人のスタッフを擁し、1人当たり借入顧客数は231人となっている。これは他の南アジア諸国と比べて2/3多い。グラミン方式とSHG方式を取るMFIの平均営業費用は借入顧客1人当たり10ドルとなっており、これはアジアのMFIの平均費用が30ドルであるのと比べても遥かに効率的である。

主要MFIが国内後進地域にサービス拡大を図っている状況であり、全体的には平均営業費用は増加する傾向にある。債権ポートフォリオの収益率は20%だが、平均営業費用は21%となっており、若干ではあるが営業赤字となっている。

サンプルMFIの要注意債権の平均ポートフォリオは6%で、2005年の4.7%からは上昇している。インドのMFIのポートフォリオは質的には他国のそれと比べて見劣りする。これは不良債権の帳消しに対する消極姿勢によるものであり、インドのMFIが債務帳消しに消極的な理由は、貸出債権ポートフォリオの規模が比較的大きいためにMFIの名声に影響が出ることが懸念されるためであろう。

譲許性資金へのアクセスが難しいことから、民間の商業銀行からの資金調達が大きくシェアを伸ばしている。2003年には34%だったものが、2006年には75%に急増している。D/Eレシオ(負債・株主資本比率)は急上昇し、マイクロファイナンスの商業化の傾向が強まっていることを裏付けている。

インドのMFIセクターの財務パフォーマンスは低下が続いている。これは債権ポートフォリオの質的低下とポートフォリオ利回りの低下によるもので、加重平均資産収益率はゼロとなり、2005年の2.1%からさらに低下している。MFIの平均収益率は-9.8%で、他の南アジア諸国と比べてもはるかに低い。

こうした財務パフォーマンスの全体的低下にも関わらず、サンプルとなったMFIの38%は利益を計上している。勿論、3%以上の利益を上げたMFIは全体の15%程度に過ぎない。借入人の50%は、自立した営業活動を行なっている金融機関からサービス提供を受けている。近い将来を見越しても、インドのマイクロファイナンス・セクターは財務的には十分成長可能であると考えられる。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0