SSブログ

警備員のキツイお仕事 [インド]

ここ2ヶ月ほど、我が家の警備を巡って警備会社と揉めている。

僕が契約しているのは「ナイト・ウォッチ(Knight Watch)」という、「ナイト・ライダー(Knight Rider)」と「ベイ・ウォッチ(Bay Watch)」を足して2で割ったようなふざけた名前の警備会社である。一応、3社ぐらいから見積りを取った上で決めた。昼と夜の2交代制で2人の警備員が交代で警備してくれている。うち1人T君はどうも素行が良くなかったので、会社に要請して交換してもらったことがある。

揉めている理由は、僕の住む地域を担当している連絡員S君の対応の悪さ。自分から言い出した約束の期限を平気で破るし、肝心な時に携帯で連絡がつかないし、本人は連絡がつかなかった理由を携帯を失くしたからだと言い訳するが、それにしても期限を守る意識があるのなら携帯を失くした時点で何か連絡をしてくる筈なのがして来ないし、どうしようもない奴である。そしてS君の上司にあたる広域連絡員もまた性質が悪い。初対面の時に名刺を持って来ず、S君の対応が悪いことをクレームしようとしても連絡を取るすべがない。

それに輪をかけてひどいのがナイト・ウォッチという会社自体の対応である。警備部門のマネージャーM氏は元軍人で規律には人一倍うるさい筈なのに、連絡しようとすると街におらず携帯が繋がらないことが非常に多い。メールならすぐ反応するかと思ったが、今まで二度送ったメールには全く返事が無い。うち一度は本人は読んでいたらしいから、返事する気がなかったのだろう。僕も一応今の職場の管理職の立場でもあるので、一度彼を会社に呼びつけたことがある。向こうが設定してきた日時で待っていると、30分以上待っても現れない。携帯に電話すると、「渋滞につかまっているのでタイミングを遅らせて欲しい」と言う。リスケジューリングした日時には、本人ではなく部下のS君とその上司の2名だけを送ってきて済ませようとする。これらについては事前に連絡もして来ない。この時点でビジネスマンとして失格である。

さすがに頭にきてナイト・ウォッチの社長(一応面識はある)に直接電話しようと試みたことがある。すると、名刺に書かれていた会社の代表番号が2つとも通じない。「あなたがお使いになった電話番号は、現在使われておりません」という自動音声が流れてきた。もうこうなったら契約を解除してやりたいと思うのだが、少なくとも今の警備員2人には罪はないし、そのパフォーマンスにも問題はあまりない。会社は気に食わないが、もう少し我慢しようかと思っている。ただ、警備員と馴れ合いになるのも不正の温床となりかねないので、ある程度働いてもらったら2人とも交代してもらうつもりでいる。その時には、ナイト・ウォッチとの契約も解除だ。別の警備会社を探そうと思う。

長々と書いてきたが、今日のお話は1月6日付のHindustan Times紙に掲載された「あなたの警備員について(On your Guard)」(Manoj Sharma記者)という記事についてである。


結論から言うと結構きつい仕事らしい。警備業界は産業としては急成長を遂げており、全国に15,000社が登録されており、売上高は2,100億ルピー(6,000億円)、傭上警備員総数は500万人にも上るという(ホント?と目を疑いたくなる数値ではあるが)。女性の警備員も50,000人ぐらいいるらしい。しかし、500万人もの警備員がちゃんと訓練を受けて配置されている保証はないという。ちょっと前までリキシャー引きとか工事現場でレンガを運んでいた作業員が警備業界に入ってきているのだという。

一応この業界には規制する法律がある。2005年に制定された「民間警備会社法(Private Security Agencies Regulation Act、PSAR法)」である。このPSAR法によれば、①民間警備会社はライセンスを取得する義務を負う、②警備員に対して最低賃金が保障されている、③ライセンス取得した各社は各々訓練を行い、事業を行なう州には必ず訓練センターを設置する、④傭上する警備員には160時間の訓練を義務付ける、⑤傭上する警備員の経歴について証明できる、⑥傭上する警備員の規律の緩み、不適切な行為、顧客のニーズを無視することはライセンスの停止に繋がることになっている。(ナイト・ウォッチがあまりにひどい場合は、PSAR法に言及するというのも1つの対応かもしれない

しかし、160時間の警備訓練など受けて配置されている警備員がどれくらいいるのだろうか不思議である。記事によれば、70歳の警備員もいるらしいし、紹介されているラジェッシュ・クマール(26歳)という警備員は、最初の警備会社で傭上された際には15分()の訓練しか受けずに現場に配備されたという。15分の「訓練」で、学んだのは直立姿勢の取り方と敬礼の仕方だけだったらしい。その時の給料は月1,800ルピー(5,400円)だった。

3年働いて次の警備会社に移った際には給料は2,200ルピー(6,600円)に上がったが、そこで待っていたのは過酷な仕事である。300世帯以上が入っている居住区の5つのゲートを1人で巡回し、メインゲートで来訪者のチェックを行なうことだという。1日最低12時間の勤務で、時に住民からお遣いを頼まれることもある。昼夜2交代制だったが、次のシフトの警備員が出勤して来ず、36時間続けて働かされたことが何度もあったという。警備会社の社長に電話しようと試みたが、往々にして携帯の電源は切られている。自分の知る限りこの社長はオフィスを持っておらず、給料は現場で手渡しされる。(どこかで聞いた話のような気がする…)

ラジェッシュ・クマールの勤務で最悪なのは、休暇を取得する権利がない点である。病気の状態で36時間ぶっ通しで働いたことがある。病気がひどくてどうしても数日休まざるを得なかったことがあったが、その分は給料がカットされた。給料について質問をした彼の同僚は、社長から殴られたことがあるという。

何か事件でもあれば、門番を務める警備員は最初に疑われる。そうすれば警備会社は彼を首にしてトカゲの尻尾切りを行なうだけである。

ラジェッシュ・クマールは3人の弟妹を2,200ルピーの月収で養わなければならない。時として彼は自分が勤務する居住区に来るガス・シリンダー運搬人やゴミ収集人といった自分より弱い立場の来訪者から「手数料」を取ることもある。でも、自分よりも強そうな来訪者が無理に入ろうとして無抵抗で入らせたこともある。

本当ならこんなきつい仕事はやりたくない。でも貧しい自分ができる仕事はそれくらいしかない。警備員の仕事はこの街では最も簡単に得られる仕事である。そうでなければ、こんな仕事を自分からわざわざやりたいなんて思っている人はいないだろう。
こういう記事を読むと、警備員にはちょっと同情したくなる。この街では、こうして安易に警備会社を興した奴が弱い立場の警備員を搾取して暴利をむさぼる醜い構図があるように思う。今は交代させてしまったが、以前うちの門番をやっていた警備員のT君は僕からも大家からもお金を借りていた。彼らの月給は2,500~3,500ルピーと言われているが、これは当地の給与水準としては相当に低い水準であることは言うまでもない。

また、12時間も勤務するのは相当に疲れる。立場上厳しく言わなければいけないが、T君に代わって我が家に配属されたMK君は学生をやりながら警備員の仕事をしているので、夜のシフトでは午後8時頃でも居眠りしていたことがあったという。僕も午前零時を回って帰宅したことが数回あったが、もう1人のSさん(ちょっとベテランなので「さん」付け)もよく眠っていて門をすぐに開けてくれなかったことが何度かあった。夜勤はホントに大変なのだ。

その分、彼らを雇っている会社にはかなり怒りも増してくる。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0