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『格差社会』 [読書日記]

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

  • 作者: 橘木 俊詔
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 新書

内容(「BOOK」データベースより)
低所得労働者の増大、新しい貧困層の出現、奪われる機会の平等…。教育や雇用などあらゆる場で格差が拡大するなか、いま日本社会に何が起きているのか。格差問題の第一人者である著者が、様々な統計データによって、格差の現状を詳細に検証し、不平等化が進行する日本社会のゆくえを問う。格差論の決定版。

少し前に『地域再生の条件』を紹介した。これと同じ頃に書店で購入し、ずっとたな晒しにしてあった1冊である。1年近くかかったが、昔買いだめてあってインド赴任にあたってやむなく携行した本を時間を見つけては読むようにしているところであるが、先に「地域再生」を取り上げたので、それに関連して「格差」の問題を少し考えてみようと思い、書棚から手に取った。

ちょうど1年くらい前のベストセラーとしてマスコミによく取り上げられていた本である。もっと言うと、著者の橘木さんはライフサイクルの様々な局面におけるリスクとそれをヘッジするためのソーシャルセーフティネット、特に年金制度改革に関して多くの著作があるエコノミストであり、統計を駆使して説明を試みる手法で、非常に説得力のある論者だと思う。日本の年金制度とその改革の方向性をもう少し考えようと思ったら、橘木さんの著書は幾つか読んでおくことが必要だろうと思う。

2004年末にOECDが所得分配の不平等度に関する国際比較調査の結果を公表し、日本はジニ係数で0.314と先進国の中でもかなり不平等度が高いグループに属するようになったことがわかった際、内閣府は、日本では少子高齢化が進んでおり、もともと貧富の格差が大きい高齢者が総人口に占める割合が高まったのでジニ係数が上がっただけであって、所得分配が不平等になったというのは見かけだけに過ぎないという見解を発表している。僕は、この見解を聞いた時、何だかすごい違和感を感じたのを今でもよく覚えている。貧富格差が大きい高齢者が増えただけだから格差は「見かけ」だということは、裏を返せば高齢者層の貧富格差が大きいのは当たり前だと言っているように聞こえる。また、今後も少子高齢化は続くだろうから、いつまでも「見かけ」だなどと言っていられないのではないかとも感じたからである。特に強調したいのは前者の方で、こうした内閣府の見解からは、貧困高齢者の生活改善の問題に対して、何ら暖かな心を感じられないというのが残念であった。

僕が最近このブログでもよく取り上げているのは高齢者の生活の問題で、特に結婚相手に先立たれた高齢者が単身生活を強いられた場合の劣悪な生活環境・制度環境により焦点を当てている。特に女性の高齢単身者の問題である。これは高齢化社会入りなどまだまだ先のインドであっても同じだ。内閣府のこの見解について、橘木氏も反論を試みている。「高齢化が進み、あるいは単身者の数が増えたということは、高齢単身者の数が増えたことを意味するわけです。(中略)内閣府が、少子高齢化による「見かけ」とするのであれば、この高齢単身者という貧困層が増えたことをどう考えているのか、私は問いたいと思います。生活に困る人の数が増えていることを、「見かけ」として無視するのですかと。」p.32)

もう少し書き足しますが、少々お待ちを。


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