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効果10倍の〈教える〉技術 [読書日記]

吉田新一郎著                                                                                       『効果10倍の〈教える〉技術―授業から企業研修まで』                                   PHP新書、2006年2月


内容(「BOOK」データベースより)
授業や研修はなぜ退屈なのか?従来の講義中心の教え方は、こま切れの知識を複製して詰め込むだけの「工場モデル」と言える。学ぶ意欲を削がれ、一割程度しか身につかないのも当然だろう。本書は、「学び」のプロセスを解き明かし、学習者がより活発に効率よく学ぶ方法論を提示する。「ロールプレイ」「シミュレーション」など、ユニークで効果的な具体的手法を紹介。特に、今まで見過ごされてきた応用練習や生活・仕事での実践を重視、「学習者に役立つ」教え方を追究する。教師から上司まで、指導者のための教科書。

最近、社員研修に駆り出されて講師を引き受けさせられるというパターンが結構多い。また、仕事柄こうした社員の能力開発のための研修コンテンツを作れという至上命題を受けて、僕達がこれまで蓄積してきた調査レポートをどのように研修プログラムに落とし込むのかが1つの課題となって僕達の背中にのしかかってきた。実際、社員研修にどのような内容を盛り込むのかであーでもないこーでもないと悩んでいる部下の姿も見てきている。

ところが、こうしたコンテンツ開発的な側面にばかり目を奪われていると、ついつい忘れてしまっていることがある。それは、社員に効果的な「学び」を促すのは、コンテンツだけではなく、研修のデリバリーの仕方自体の工夫にもよるのではないかということだ。つまり、いかに包括的な内容を講義に盛り込んだところで、研修受講者が受身で聞いているだけでは、実際の知識の定着には繋がらないから、いかに研修そのものをより効果的な学びに繋げていくのかをもっと考えなければいけないと常々感じている。

長々と本書を紹介している時間もないので、本書から印象に残った記述をいかに列挙してみることにする。


「学び」で大切なのは、教師や講師が言ったり、パワーポイントなどのメディアで何かを見せたりすることではなく、学習者が言ったり、したりすることです。「学び」は、教師や講師が語り聞かせることではありません。学びは知識や情報の学習者による「消費」ではなく、学習者によって知識や意味が「生産」されることです。それには自分のものにするための練習の時間も必要です。(p.88)
「学び」は、情報を受け身的に受け入れるだけで成り立つものではありません。主体的に知識やスキルを一人ひとりの生徒や受講者がつくりだすプロセスです。(p.96)
ある推計によると、企業内研修プログラムで教えられたスキルのうち、日々の職務遂行で活用されているスキルの占める割合は、たったの1割という暗澹たる低率に過ぎないと結論付けている。(p.143)
「仕事への応用」や「役に立つ」学びをつくりだすためには、継続的なフォローアップやサポートが不可欠で、従来のような「やりっぱなし」の研修や授業では「使いこなせるようにはならない」ことを証明しています。(p.229)

見ておわかりかと思うが、講義形式の社員研修に対しては著者は結構後ろ向きだということは間違いない。にもかかわらず、多くの企業で研修となると、「やりっ放し」の講義形式に終っていることが多く、僕も反省を強いられている。だから、僕はこういう本を常に手元に置いておき、適宜取り出して読み直してみるように今後は心がけていきたいと思っている。

それにしても著者の吉田新一郎氏、とっても生産的かつ精力的な方であるみたいで、本書は2月に出版されているが、1月には光文社新書から『「学び」で組織は成長する』を発表している。新書版とはいえ2ヶ月で2冊を書き下ろすというのは彼の斎藤孝さんよりも多産といえるかもしれない。

次回、研修の講師を受ける機会があれば、講義形式はなるべく少なめにし、是非受講者中心の学習機会の提供というスタイルに挑戦してみたいと思う。


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降龍十八章

本当に10倍効果が上がるといいのですが。やる気のない生徒をやらせるのは、アルキメデスでも難しいかも?
テコでもうごきませんから・・・
by 降龍十八章 (2006-03-29 00:35) 

Sanchai

降龍十八掌さん、nice!&コメントありがとうございました。確かに「10倍」というのは大げさかもしれません。著者は本文の中で「10倍」とは言ってませんので、出版サイドの都合で付けられたものかもしれませんね。
by Sanchai (2006-03-29 15:54) 

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