『22世紀の民主主義』 [読書日記]
22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書)
- 作者: 成田 悠輔
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2022/07/05
- メディア: Kindle版
世の中の根本を疑え―――。断言する。若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは日本は何も変わらない。これは冷笑ではない。もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。何がもっと大事なのか? 選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。ゲームのルールを変えること、つまり革命である――。22世紀に向けて、読むと社会の見え方が変わる唯一無二の一冊。【購入】
一時帰国から任国に出発する前日、「暇な時にでも読もう」と軽い気持ちで近所の本屋さんで購入した1冊。昨年ぐらいから急によく名前と顔写真を目にするようになった成田悠輔さん。日経テレ東大学をYouTubeでたまに視聴させてもらっているし、僕の仕事の界隈でも、「あれ?」っというところに基調講演で登場されていたこともあった。あまり感情を表に出さず、飄々と話される語り口は、ああ僕らが育った「朝まで生討論」の世代とは違う、新しい世代のコメンテーターが出てきたんだな~と感慨深いものを感じた。
そんな成田氏の単著である。図書館で見かけたら借りて読もうと思っていた筆頭書籍だったが、発刊から間もないため、所蔵していないというケースがまだ多かった。今を時めく気鋭の学者の著書だ。販促オビにはすでに「15万部突破!」とある(僕が買った第5刷は初刷からわずか1カ月後の8月14日とあった)。ボリュームもそれほど多くないため、僕が買って任国に持ち込んだとしても、読了後多くの人の目にふれるところに置いておけば、誰かが読んでくれるに違いない―――そう考えて、購入に踏み切った。
映像メディアで見る軽妙な語り口をそのまま文章化したような書きぶりだし、今の選挙制度でいくら若者に「投票に行け」と言っても投票率が上がらない、そもそも選挙による民主主義はもう有効性が失われているという主張は、成田氏の口から度々出てくる発言なので、著者がよく言っていることを、文章にまとめたものなのだというのがわかる。そも著者は民主主義の研究者でもないわけだし、自身の研究領域としての権威付けをしようと意図して書いた本でもなさそうだ。冒頭で要約やキークエスチョンの提示、引用文献リストなど、論文としての最低限のお作法は踏まえつつも、文章のトーンは居酒屋トークとさほど変わりない。
後半頻繁に出てくる「無意識データ民主主義」というのが、最終的な著者の主張なのだろう。
これは感覚的には理解できる。今はPCやスマホで注文すればこちらからお店に出向かなくてもネットで購入できるしプレイガイドやチケットぴあに行かなくてもネットでチケット予約できる世の中なのに、なんで選挙は毎回投票所に行かなければならないのか、という疑問は当然ある。ネットで投票できたらいいのにと思う。
でも、著者はさらに進んで「無意識」とも述べている。これは、代議士も要らないから、普段の僕たちの行動やつぶやき等からセンチメントを導き出し、これを政策決定に生かせばよいと主張している。
面白そうだ。普段から「議員数なんかもっと減らしてしまえ」と言ってるうちの妻にも受けそうな主張だ。
ただ、それでも僕にはよくわからない。到達点がそれだとしたら、確かに代議士など要らないのだが、代議士を減らす移行プロセスをどう設計したらいいのだろうか、その到達点を誰がどう意思決定するのか、そのあたりは読んでいてもよくわからなかった。
そのあたりの自覚はご本人にもあるらしく、それらの指摘に対しての回答も準備はされている。でも、それは「〇〇だってそうだったではないか」とか「〇〇よりはまし」といった言い回しになっていて、なんだか議論をはぐらかされた後味の悪さも感じた。
とはいえ、居酒屋で酒の肴として語る1つの可能性としては面白いので、居酒屋っぽい雰囲気がある首都のレストランの本棚に、本書はいずれ収納されるように手配させていただきます。
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