SSブログ

『東京ホタル』 [読書日記]

東京ホタル (一般書)

東京ホタル (一般書)

  • 作者: 中村航・小路幸也・穂高明・小松エメル・原田マハ
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2013/05/08
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
川が青く光る夜、ぼくらは奇跡を願う。学生時代の恋人と再会した夜に、音信不通だった母と出会った日に、それぞれの想いが響き合う、5つのやさしい物語。人気作家5名が、東京の新たな原風景を描く、珠玉の作品集。
知らなかったのだが、「東京ホタル」というのはイベントらしい。自然と共生できる都市にという願いを込め、隅田川に10万個のホタルに見立てた「いのり星」を流すというもので、2012年5月の東京スカイツリー開業直後に第1回のイベントが開催され、今年も5月に開催されたらしい。

面倒くさがりの僕は、東京といっても西の方に住んでいるため、東にあるスカイツリーには未だ行ったこともなく、展望台まで上ることに対する興味すらない。わざわざ人が多く集まるようなところで行って混雑でイライラするのも馬鹿らしいと考えてしまう性質なので、夏の花火大会すらよっぽどのことがないと出かけたりはしない。だから、こんな幻想的なイベントがスカイツリーの麓で行なわれていたことすら全く知らなかった。そういうところが僕の限界なのだろう。

こんなイベントをプロデュースする人は、集客を高めるためにあの手この手をいろいろ考えるのだろう。その1つが今回の本で、イベントとコラボする形で新進の作家によるアンソロジーになっている。

1つ1つの作品はテーストが全く違うので、好みは分かれると思うが、僕は今年に入ってから原田マハの作品は少し読んでいるし、高校の後輩・中村航も1編書いているので、この2点がポイントになってこの本を読んでみることにした。原田の「ながれぼし」と中村の「はぐれホタル」は、まあ期待にたがわぬ作品だったと思う。「はぐれホタル」は冒頭、市ヶ谷の結婚式場とか、JR市ヶ谷駅上のカフェ「TO THE HERBS」が実名入りで登場する。僕の職場のある最寄り駅で、しかも時々使ったことがあるカフェが最初の舞台だというだけで、僕の興味をググっと引き寄せた作品だった。大学時代の友人の結婚式で、別れた元カノと再会し、三次会お開きの後の帰る方向が元カノと自分だけが同じ方向だったというシチュエーションはおいしすぎる。結局2人はまた付き合い始めるのかどうか、半世紀を生きてしまったオヤジも興味津々で読み進めた(結果はここではばらしません)。

小路幸也の「蛍の光り」は、これまでに読んだ小路作品とはちょっとイメージが違ったが、まあ良い方向に違ったといえる。あとの2人の作家は初めてだったが、それなりに面白かったと思う。

全体的にハズレの本だとは思わないが、一気に読んでしまえるので、わざわざハードカバーにして1,200円という価格を設定するのが妥当だったのかどうかはよくわからない。四六判ソフトカバーにすれば少しぐらいのコストダウンにはなったと思うし、内容と装丁が見合っているような気もするのだが、その辺の販売戦略はどうなんでしょうか。

まあ、僕は一介のイベントにアンソロジー本まで出版してしまうというのに若干やり過ぎ感は感じる。これらの作品をどうやって集めたのかはわからないが、確かに、人が大勢集まるところでこの本を出店すれば、記念にということで買う人も多く、そこそこの販売数は一気に稼げると思う。特に流通経路が弱い出版社であれば、イベントにぶつけてそこで売るという戦略はありだとはわかっている。でも、このイベントの趣旨に合うような形で各執筆者に短編の書き下ろしを依頼するというのは、この企画にどれくらいの時間的猶予があったのかにもよるが、ひとつ間違えるとやっつけ仕事になってしまうというリスクはあったかもしれない。

特定イベントとのコラボ企画で本が出るというのは、今まであまり聞いたことがなかったので新鮮ではあった。来年もやるんでしょうかね。これを企画した人に一度話を聞いてみたい気がする。意外と僕達がやっている仕事にも応用ができるようなお話かもしれない。

「東京ホタル」のイベントは、動画サイトにも結構投稿されていて、その様子を窺い知ることができる。僕が20歳若かったらこういうイベントに誰か意中の女性を連れて行くなんてことも考えたのかもしれないが、つい先日結婚生活18周年を迎えたうちは、夫婦揃って人ごみにわざわざ出て行って疲れるのを厭うようになってしまったので、ちょっと無理かな。そのうち、子供たちが行くようになるのだろう。


nice!(5)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 2

モンタギュー

岐阜出身の作家と、検索してみたらこちらに到着しました。でも他のリストだとこの中村航さんじゃなくて、高山の女性作家の名前があげられているようです。が私は’中村航、朝井りょう、池井戸潤’をあげます。という私は岐阜からアメリカに渡って早30年。アメリカの大学で教鞭をとっています。名古屋大、神岡カンデンをつないでノーベル街道と呼ばれたり、岐阜出身の作家何人かが直木賞をとると、多産県だともてはやされたりしているようですね。最近は岐阜にいる親家族のもととここアメリカはフロリダやnyを行ったり来たりしている生活ですが。わらが村岐阜、もっともっと頑張ってほしいものです。
by モンタギュー (2014-12-03 20:33) 

Sanchai

モンタギューさん、コメントありがとうございます。ついでに申しますと、奥田英朗というのも岐阜県出身です。
by Sanchai (2014-12-03 23:16) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0