SSブログ

高齢ニッポンの見られ方 [少子高齢化]

インドにいて日本の高齢社会が新聞紙上で紹介されることはあまりないが、僕がこうしたテーマに関心を持っていることを知った職場の同僚が、意識的に関連する記事を切り抜いておいてくれるようになった。The Statesmanというのは普段殆ど目を通さない新聞であるが、そういう新聞から記事を拾っておいてくれるのは同僚あってのお陰だ。これから紹介する記事は、1月29日付のThe Statesman紙からの抜粋だが、元々はシンガポールのThe Straits Times紙からの転載である。
高齢化が進む日本で介護従事者募集中
Caregivers wanted in ageing Japan

 日本の介護ビジネスは、急速に進む人口高齢化のお陰で、急成長を遂げているセクターの1つである。今後5年間でこの産業は30万から50万人以上のワーカーを必要とする。
 日本の介護ビジネスは雇用機会は豊富にあるが、その機会を手にする者は殆どいない。低賃金と介護ワーカーに限界まで我慢と体力を要求する労務環境が、個人的に福祉の仕事をやりたいと思っている人ですら遠ざける原因となっている。
 皮肉にも日本の輸出を低迷させ何千もの労働者を失業に追いやった世界的な景気後退が介護施設に福音をもたらすかもしれない。政府はこうした解雇労働者に介護士になってもらいたいと期待している。
 日本の介護ビジネスは、急速な人口高齢化のために高成長が期待されるセクターの1つである。今後5年間のうちに、介護ビジネスでは30万から50万人のワーカー需要が予想されている。介護サービスを必要とする日本の高齢者人口が600万人にも達するからである。
 問題はこの介護従事者という仕事をどうしたら魅力的なものにできるかである。政府は、介護報酬支払いが平均3%増加すると想定して今年度約23億ドルの予算を計上している。理論的には1人ひとりの介護ワーカーに月額224ドルの給与増が期待される。しかし、残念なことにこうした介護ワーカーの給料が介護報酬増額によって即引き上げられるわけではない。
 この金額では、独身者が1人で生活するには十分かもしれないが、もし結婚して家族を養っていくには圧倒的に足りない。給料が安いことが、新規介護従事者5人につき1人がすぐに離職してしまう大きな原因となっている。離職する介護従事者が多ければ、残る介護従事者が負う仕事は増える。ただでも既に骨の折れる仕事である介護がさらに魅力を失ってしまう。
 今月初め、厚生労働省はプロジェクトチームを発足させ、医療関連セクターで埋まっていない保健医療従事者不足を充足させる方策の検討を始めた。この保健医療従事者不足の中には、介護産業だけで26,000の雇用機会が含まれている。また、政府は介護ワーカーの資格取得に必要な研修費用を全て支援することも計画している。介護従事者基礎コースは約2ヶ月間の講義受講と実習が含まれ、試験は特にない。
 日本介護クラフトユニオンの河原四良会長によれば、「介護は素晴らしい職業だと思っています。空席が他に行くところがないような人で埋まってしまうというのは、私達の仕事を軽く見られることに繋がります。」インドネシアやフィリピンとの経済連携協定の結果、こうした国々の訓練を受けた介護士は日本で働くことができるようになった。
 こうした動きに批判的な論者は、これが単に外国の安い労働者を輸入する言い訳になっているに過ぎないと主張している。これに対して政府は、外国人介護士の招聘は単にこれら2カ国との経済協力をより緊密なものとするために行なわれるものだと反論している。
さすがはシンガポールの有力紙、短い記事だが日本の介護業界の抱える問題を的確に突いている。そして、さすがは東南アジアの中心地、介護士・看護師の対日輸出国となりそうなインドネシアやフィリピンを含めた地域の視点から描かれた記事となっていると思う。

その通り、日本国内で景気が悪くなったからといって、それで他に術がないという消極的な理由で参入してくる日本人労働者がどの程度介護業界で定着するのかは疑問で、真面目に介護を捉えて早くから自分への投資を怠らなかった人をむしろ評価するような介護報酬に改定するべきだと思う。それも、家族を持つ者であってもペイする形で。

介護士を外国から輸入するというのは、その国々での介護ワーカーの需給関係や今後の見込みというのをちゃんと考えてから行なうべきである。今英国では医師不足を補うために途上国から医師を輸入する政策がブレア前政権下で取られてきたが、結果として国内でのテロのリスクを高めたし、途上国から「頭脳流失」と批判も受けている。自国が良ければそれで良いというような政策は批判の矢面に立たされやすい。幸い東南アジアではそうした形での日本批判には繋がっていないようだが…。

自国の問題は自国で解決するよう取り組んでいきましょう。
nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 1

sarahe

先日は訪問いただきまして、ありがとうございます。
「介護」の問題は、複雑な様々な個別課題が絡まっており、なかなか解決しないものです。とりあえず介護職不足を解消しようと、海外から介護士見習い・看護師見習いのような「労働力」を移入し、根本的な問題から目をそらせようと言う政府・厚労省の思惑が見え見えです。
介護職が魅力のない職業にとどまっているのは、従前の介護のイメージである「奉仕」から抜け出せないでいるからです。

「介護職」は素晴らしいサービス業です。「奉仕」ではなく「ビジネス」なのです。ビジネスである以上、プロの技術・意識が必要であり、非正規労働者や海外からの移入労働者で簡単に賄えるものではありません。
介護保険制度にも「奉仕」の側面が見え隠れしており、しっかりと今後の超高齢化社会を見据えてビジネスとして成り立つような産業政策を打ち出してほしいと思っています。

PS:私は某電機メーカーを昨年末に早期退職した者です。来年にはネパールを訪問したいと考えています。
by sarahe (2009-02-08 15:30) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 1