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防災ボランティア論 [読書日記]

率先市民主義―防災ボランティア論講義ノート

率先市民主義―防災ボランティア論講義ノート

  • 作者: 林 春男
  • 出版社/メーカー: 晃洋書房
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
大規模な災害が予想される21世紀の日本にあって、防災の主役は市民であるべきだ。今、市民一人ひとりに求められているもの、それはボランティアという意識の高みへの到達。率先市民とは、いち早くそのために動いた人間を指す。ボランティアの未来がここにある。
この本、仕事の関係で京都大学防災研究所の林春男先生の近著の内容を確認する必要が出てきたため、図書館で蔵書検索をかけて見つけた。少々出版年は古いが、1995年1月の阪神淡路大震災の時の被災地の経験を下敷きにして理論構築が行われ、しかも市民講座向けにまとめられたテキストであるため、記述は非常に明快でわかりやすい。

今この瞬間に日本のどこかで大規模な自然災害が起きた時、僕達はどう行動すればいいのだろうか。筆者は、阪神淡路大震災の時のボランティアの実態を、「土地勘のない膨大な数の無組織単純労働者の群れ」と表現しているが、これを読むと有事の際に全てを投げ出して確たる情報収集も行わずに被災地に駆けつけるのもどうかと思えてきた。被災者の支援の仕方は様々であり、人は自分のできる範囲でやればよい。義捐金集めを行ったり、災害救援を専門にするボランティア機関に登録して平時のうちに基礎的な訓練を受けておき、災害発生時にはその機関の指示に従って行動するということも必要であろう。また、災害ボランティアというと自分自身に充実感や達成感が得られる作業を求める傾向があり、トイレの清掃や救援物資の仕分けといった被災地ではニーズが高いにも関わらず地味な裏方の仕事は敬遠されがちだといった筆者の指摘には説得力があるように思う。

もう1つの視点は、自分が住むこの町が震災に襲われた場合にどう動くかという点にある。僕は会員登録している国際交流協会が市と交わした防災パートナーシップ協定に基づき、災害発生時には外国人居住者向けの情報支援を行う災害通訳ボランティアに名前を登録している。有事の際に先ず家族と隣近所の安否を確認し、どこに取りあえず避難するのかはわかっているつもりではあるが、その後ボランティアとしてどう動くのかが整理されていない。

本書では、災害発生後の災害対応のアクターとして、①警察・消防、②災害対策本部、③ボランティア、④災害復興本部の4者を挙げ、さらに③ボランティアを、「一般ボランティア(NGO)」「組織型ボランティア(NPO)」「地域型ボランティア(CBO)」「率先市民」の4つのカテゴリーに分けている。NGOとNPOは災害緊急支援とライフライン復旧のフェーズに主に活躍するもので、CBOはその次の復興フェーズに役割を担うとされている。「率先市民」は日常における市民としての姿勢を問いかけるものだと理解した。

そうした場合、国際交流協会が組織する災害通訳ボランティアとは一体どのカテゴリーに入るのだろうか。著者の提示した枠組みの中で、国際交流協会の活動はどのように位置付けられるのだろうか。著者はそこまで丁寧には解説をしていないため、その考察は今後の僕達自身に委ねられるのではないかという気がする。有事の際に登録ボランティアの一人一人がどのように動くべきかは、目下の僕の考えでは各々の住まいに最も近い避難所での支援活動が基本であると考える。ニーズとリソースのギャップを、想定される避難所毎に割り出して、ボランティアが足りていない避難所では外部からのリソース投入で埋め、足りている避難区域では登録ボランティアの一部は本部機能支援に当るといった事前の役割分担が必要なのかなと思う。

                                                筆者の近著をもう1冊紹介しておく。2003年6月、岩波書店から出ている。


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