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サンチャイ☆ブログ(संचै पत्र)
『地平線以下』

、小野は新聞記者になり、さらには政治の道を歩んでいたことだろう。

検番助手というのは、工女が集中して作業しているのかをチェックし、時には喝を入れることを生業としている検番のアシスタントで、実際のところは検番のような経営側のフロントラインと、搾取労働を強いられる工女の間で板挟みに遭い、その矛盾に思い悩む立場だったのではないかと思う。そして、いったんは大学にも入学しながら母の病気で中退して地元に就職せざるを得なくなった小野の学歴を評価した工場主の抜擢で事務員に登用されたことで、経営側の内部にある醜い実態も垣間見ることになった。当時の糸価の8割以上が原料繭の仕入価格で占められていて、朝5時から夜7時まで働かされる工女の労賃など殆ど顧みられることはなかったという。

というわけで、最後に小野は早川工場主を前に思いのたけをぶちまけるのだが、その発言の中に本書で描かれている問題が全て集約されているように思うので、掲載しておきたい。

◆◇◆◇◆以下引用◆◇◆◇◆
 私は、1ヵ月間、この工場の経営方針と工場行政を見てきた今日、この重大な会議の席上、忌憚のない、偽らない、私の真摯な意見を申し上げたい。

 私は、本年1年中に、この工場内に発生した、目を覆う幾多醜悪な出来事……。それは幼年工の監禁、工賃の不払い、就業時間の延長、休憩時間の無視、自由外出の拘束、病人の放棄、暴行の乱舞、職工保健衛生の無視、風紀の紊乱、幹部の不当圧迫と経営者の専制、正義と責任観念喪失等々から次々と生み出された不祥事件は……永遠に病床に呻吟する数多の若い男女工、罪の下重い鉄鎖に繋がれていった男、命とする女の操を蹂躙されて死にいった女、それはS湖で、鉄路で……海で、山で……。過度の心身疲労から遂に発狂した女等々、その件数は十数に上るのです。私はこうした数多の悲劇を目撃するたびごとに、心で大きく叫びました。この不合理な工場行政が根本から改革されない限り、こうした悲劇は絶えないであろう……。そしていつかは来る、恐ろしい破滅の時が……来るのは当然だ。未来の建設のため……、それは地平線以下でない工場の建設のために……。私は過去いつも自分の心でそれを
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(シルク・コットン)11-03-21 05:00


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