『心の野球』
経験した著者は、日本の野球には、それを通じて人間性を磨こうと言う姿勢を持っていると述べている。礼儀を重んじたり、道具を大切にしたりすること。技術だけでなく、心も大切にすること。プロ野球選手の平均引退年齢は29歳であり、プロ野球選手としての人生より、引退してからの時間の方が圧倒的に長いことから、野球選手が長い人生を豊かで幸せなものにするために、単に技術を磨くだけでなく、社会で通用する人間性を養わなければならないと主張する(pp.7-8)。プロ野球選手は、練習や試合をやっている他の自由時間がかなり多く、それをどう有効活用していくのかが、引退後の生活を豊かにすると述べている。
現役時代の桑田にまつわる醜聞を見てきた野球ファンにとっては、かなりギャップの大きい内容だろう。でも、マウンド上でボールに話しかけるような奇行を考えると、彼がこういう考え方をするというのは納得できるところも大きい。高橋直子選手や有森裕子選手のしゃべりにも通じる何かがあるような気がした。凡人には奇異にしか見えないことも、道を極めた人にはわかり合える部分がかなりあるのではないだろうか。
ただ、「努力」の定義にまつわる桑田の論点を聞いていると、ドラゴンズのように春季キャンプの練習が厳しい球団の方法論をどう受け止めるのかについて、もう少し説明が必要なのではないかと言う気がする。(そういえば、桑田は本書の中で落合博満選手(または監督)については何も言及していない。)ドラゴンズ落合監督の方法論の対極にあるのはメジャー式の短時間練習なのだが、桑田はメジャー式の練習の方法論にも一部異議を唱えているように思えた。だからといって、桑田が落合野球を支持しているとも思えない。とすると、桑田は落合野球をどう見ているのか、ちゃんと説明する必要があるように思う。
―――さて、話はプロ野球セ・リーグの開幕時期の件に戻る。
突拍子もない話かもしれないが、僕がインドに住んでいた時、こんなことがあったのでご紹介しておく。クリケットのインディア・プレミアリーグ(IPL)2期目の2009年シーズンは、インドの総選挙の時期と重なり、治安対策で警備員をスポーツイベントに割いている余