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『スモールイズビューティフル再論』 [持続可能な開発]

スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)

スモール イズ ビューティフル再論 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2000/04/10
  • メディア: 文庫
内容紹介
物質至上主義、科学技術万能主義を痛烈に批判した前著『スモール イズ ビューティフル』。その思想を更に敷衍した小論文を「リサージェンス」誌に発表したもののアンソロジーが本書である。地球環境に配慮し、人間の身の丈に合った、「精神性」のある経済政策を提唱して反響をよんだ、シューマッハー独特の経済論。新訳、文庫オリジナル。
【購入】
日本出発のずっと前に購入し、出発までずっと積読にしてあった1冊。今年の目標は「古典を読む」ことだったので、読んでおけば後で何かの引用で使えそうな古典は、まとめてこちらに持って来ている。シューマッハーの著作を「古典」で括るのにはちょっと語弊もありそうだけれど、開発途上国に来たら来たで、シューマッハーの論点には頷けるものが非常に多い。

で、今回は、さすがに『スモールイズビューティフル』の訳本の方は持って来ていないけれど、長らく積読にしていた『~再論』の方は持って来た。前回、『スモールイズビューティフル』読了後の紹介記事では結構ちゃんと書き込んだ感じだったし、その後原書のキンドル版も購入してマーカー箇所を転記してあるので、いざとなればそちらを参照することにし、今回は、英国の隔月誌「リサージェンス」に1966年から77年にかけて寄稿された論文のアンソロジーの訳本の方だけを携行した。

で、ここ2カ月ほど断続的に別の「古典」を読み続けているけれど、あまりに難解で、1日10頁読めればいい方という状態だった。それでまだ230頁しか到達していない。ちなみに全体では670頁もある学術文庫本で、先は気が遠くなるほど長い。読んでいても全然頭に入ってこないから、時々息抜きがしたくなり、今回のような別の読み物を挟む事態に陥る。で、そちらの方が圧倒的に読みやすく感じる。

こうして、スラスラと読み進めることができた。元々『スモールイズビューティフル』を過去に読んでいて、シューマッハーの思想についてはあらかたわかっていたという点も大きいと思う。

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『持続可能な開発における〈文化〉の居場所』 [持続可能な開発]

持続可能な開発における〈文化〉の居場所――「誰一人取り残さない」開発への応答

持続可能な開発における〈文化〉の居場所――「誰一人取り残さない」開発への応答

  • 出版社/メーカー: 春風社
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
持続可能な開発に、地域文化や文化的多様性はいかにして結びつく・結びつけられるべきか、開発学・人類学・教育学から多角的に検討。
【献本】
本書は、今年1月、発刊になったばかりの頃に、執筆者のお一人から献本された。1冊3,850円もする本を献本いただくのは身の引き締まる思いで、早く読まねばと思いながら、それでも半年経過。僕も別の本の執筆協力をして、その方にお返しで1冊謹呈したが、そっちの方は4,180円だったので、これでほぼおあいこにして、半年の遅れをお許しいただけたらと思う。

当然、献本だからポジティブなコメントからスタートさせたい。国際協力とはいえ、今僕自身が派遣されている国は本書ではほとんど出てこないが、それは置いておいても、国際協力の実践者であれば読んで示唆を得られる1冊だと思う。「持続可能な開発」とか、「SDGs」とかいうと、昨今実に多くの解説本が出ている。その多くは、そもそもそれらについて知らない人に知ってもらうことを目的に書かれているため、論旨が割とシンプルなものが目立つ。最も極端なのは、「SDGs=ビジネスチャンス」という、想定読者をビジネスパーソンに定めているような本である。それはそれでニーズがあるだろうし、出版サイドでも、「SDGs」と付けば売れるという読みもあるだろう。

それに対して、本書の執筆者のほとんどが研究者である。研究者の書きぶりは堅苦しいし、他の世界的に影響力の大きかった文献の論旨を援用して権威付けが図られるケースも多いし、カタカナ概念も目立つ。決してとっつきやすい書きぶりではないのだが、1つ言えることがある。世の中のSDGs解説本に比べて、圧倒的に考察が深く、そして面白い。にわか専門家が論じているわけではなく、各執筆者が長年そのフィールドにおいて参与観察を重ね、そしてそこからの知見を新たに国際社会を支配しようとする概念やその形成プロセスとも絡めて、留意すべき点を考察している。それに、高額であるにも関わらず、売上促進を狙って「SDGs」という言葉をタイトルに入れず、より長く使われてきた「持続可能な開発」という言葉までにとどめた点に、学界の矜持すら感じた。

SDGsの解説本を読み、ビジネスチャンスを掴もうと考えて持続可能な開発に取り組もうと入ってきた人は、次のステップとして、こういう文献も読むべきだ。

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『森の生活』 [持続可能な開発]

森の生活 (講談社学術文庫)

森の生活 (講談社学術文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/03/05
  • メディア: 文庫
内容紹介
ボストンの近郊、コンコードの町に近いウォールデン池のほとりに、ソローは自ら建てた小屋で、2年3ヵ月、独り思索と労働と自然観察の日々を過した。人間の生活における経済の理念をはじめ、人生のあるべき姿や精神生活の大切さ、森の動植物への情愛などを語りながら、彼は当時のアメリカ社会と人間を考察し続けた。物質文明の発展が問い直されている今日、ソローの思想の持つ意味はますます大きい。
【購入】
隔離施設収容が21日間もあると、普通は読めないような大部の本を読むいい機会かもと思い、今回携行したのがこの古典の邦訳であった。新型コロナウィルス感染が始まった頃から、日本では「ソロキャンプ」とかいうのが流行り始めたが、そこで期待される効能を今から170年以上前に訴え、米国ニューイングランド地方で、2年以上にもわたるソロキャンプを敢行した人がいた。19世紀半ばというのは、米国文学の黄金期だと思うが、その中でも代表的なのが、ヘンリー・デビッド・ソローの『ウォールデン、または森での生活(Walden, Or Life In The Woods)』(以下、森の生活)である。

walden-pond-1.jpg

確か、昨秋ロバート・B・パーカー『初秋』を読んだ時にも、『森の生活』には言及されていたなと思い出す。パーカーのスペンサーシリーズの舞台もボストンだし、確かスペンサーがポールを連れて行ってログハウスを作った森というのはメイン州だったと記憶しているけれど、ウォールデン池の写真を見ると、『初秋』の舞台もきっとこんな感じだったんだろうなと想像してしまう。

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『人新世の「資本論」』 [持続可能な開発]

人新世の「資本論」 (集英社新書)

人新世の「資本論」 (集英社新書)

  • 作者: 斎藤幸平
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: Kindle版

【『新書大賞2021』第1位!大賞受賞作!!】
人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。それを阻止するためには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。いや、危機の解決策はある。ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす。
【購入】
4月から5月にかけて、どこの書店に行っても店頭平積み台にデーンと陳列されていた話題の書である。個人的な印象だが、このところやたらとマルクスの『資本論』が話題に上ることが多いと感じていて、この際だから五度目の海外駐在に併せて読み込もうと思っていた古典の中に『資本論』も加えようかと考えた。しかし、マルクス『資本論』は岩波文庫版でも9巻もある。どうしても食指が伸びず、それなら代わりにマルクス解説本でお茶を濁そうと考え、駐在生活に携行する本の中に、この話題の書を加えた。

結果的にはこれで良かったと思う。マルクスも、『資本論』のような公刊されている著作物以外にも、誰かに宛てた手紙とか、その下書きとか、メモとか日記とか、読んでいた本とか、他の人がマルクスについて語っている口伝とか、その思想の全体像を理解するにはいろいろな資料があると思う。また、『資本論』第1部が出たのは1867年だが、第2部、第3部は、1883年にマルクスが没した後に、エンゲルスが遺稿をまとめて著したものだそうである。ということは、第1部発刊からの16年の間に、マルクスも当初『資本論』で書いたことから、修正したいところもあったかもしれない。エンゲルスによるまとめがあったとしても、まだカバーしきれない遺稿などは存在したかもしれない。それらを著者なりにまとめて、「人新世」と呼ばれる現代を生きる僕らに示したのが、『人新世の「資本論」』ということになる。

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『地球に降り立つ』 [持続可能な開発]

渡航前の最期のアップとなります。

地球に降り立つ: 新気候体制を生き抜くための政治

地球に降り立つ: 新気候体制を生き抜くための政治

  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
空気、海洋、氷河、気象、土壌、生命…地球上のあらゆる抗議者が声を上げている。人間‐自然、グローバル‐ローカル、右派‐左派…「近代」的二分法を問い直す。「テレストリアル」的政治の獲得に向けた思考実践。名著『虚構の「近代」』の著者による、覚醒的緊急アピール。
【購入】
昨年7月、このブログで『美術手帖 2020年6月号』を取り上げた際、ブルーノ・ラトゥールの『地球に降り立つ』は読んでみたいと述べていた。僕はその時、ブルーノ・ラトゥールを「アーティスト」と形容していたが、実際にその著書を購入して著者略歴を見ると、「哲学者・人類学者」と書かれている。

1947年フランスのボーヌ生まれ。哲学者・人類学者。現在、パリ政治学院のメディアラボ並びに政治芸術プログラム(SPEAP)付きの名誉教授。2013年ホルベア賞受賞。専門は科学社会学、科学人類学。アクターネットワーク理論(ANT。人間と非人間をともに「行為するもの」として扱う新たな社会理論)に代表される独自の社会科学の構想やANTをベースにした独自の近代文明論で著名。代表作『虚構の「近代」』ではポストモダンではなくノンモダンへの転換の必要性を説き、近年は近代文明が生み出す地球環境破壊、圧倒的な経済格差の問題を正面から取り上げ、問題解決のための政治哲学的分析に力を注ぐ

先に述べた『美術手帖』の特集は「新しいエコロジー」となっていて、内容的にもSDGsや持続可能な開発について、アートがどのように表現しようとしているのか、そのメッセージの表現方法を以って「メディア」と称しているように思えた。こうした見方は、開発の業界にどっぷり浸かっている人間からすると結構新鮮だった。アートを単なる絵画や工作としてしか捉えていないと、アートの持つ可能性を見誤ることにもなりかねない、僕らの取組みにもアート的要素をもっと取り込んでいかないといけない―――そんなことを思うようになったこの2年間であった。

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『SDGs時代のグローバル開発協力論』 [持続可能な開発]

SDGs時代のグローバル開発協力論―開発援助・パートナーシップの再考

SDGs時代のグローバル開発協力論―開発援助・パートナーシップの再考

  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2019/10/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
開発援助から開発協力への転換期を迎え、地球規模の課題解決のために多様な担い手との包括的なパートナーシップ構築が求められている。紛争と難民、復興支援、農業開発、貧困・格差など、開発経験の実証的考察を踏まえ「共感」と「協働」の視点から展望する。
【会社の図書室】
編著者の1人と知り合いで、ここ2年ぐらいはその方の紹介で、別の本の執筆協力をしている関係上、ちょっと読んでおいた方がいいかなと思い立った。但し、2530円もするので、購入ではなく、ありそうな図書室で借りて読んだのだけれど。

僕はどちらかというとODA側に近い立場にいる人間なので、SDGsのことを多少よく知っていたとしても、そしてこの編著者の1人と知り合いだったとしても、そして自分自身もSDGsについて論じてみたいという思いがあったとしても、この本の執筆に呼ばれることはなかっただろう。その方からご紹介していただいた別の本への執筆協力の際にも、編著者の方から僕の立場について若干の警戒感を示された。

では、僕がODAを擁護するかというとそうでもなく、批判の中には当たっていると思うこともあるので、改めるべきところは改めるべきだと思っている。心情的には、本書の執筆陣の論調に対しては共感するところが大きい。というか、見慣れた論調であると思う。

その、「見慣れた論調」というところが実は曲者だ。執筆者は皆NGOや市民社会に近い立場で開発途上国の貧困問題や人権の問題に取り組んできた活動家や研究者ばかりだ。自ずと日本政府やJICAが外交やODAを通じてやってきたことに対しては批判的で、そういう緊張感が両者の間にあっていいと僕は思っている。

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『紙の建築 行動する』 [持続可能な開発]

紙の建築 行動する――建築家は社会のために何ができるか (岩波現代文庫)

紙の建築 行動する――建築家は社会のために何ができるか (岩波現代文庫)

  • 作者: 坂 茂
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/06/17
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
人は自然災害によって死ぬのではなく、建物が倒壊することによって命を落とす。しかし災害が起こった場に、建築家の存在感は薄い―そのような問題意識により、世界中の被災地で避難民を支援してきた坂茂。2014年にプリツカー賞の栄誉に浴した独創性と人道的取り組みへの意志は、どのように実践されてきたのか。地震と向き合わなければならない日本社会において、最も注目すべき建築家の思いと行動を伝える、最新インタビューを「あとがき」に加える。
【購入】
昨年末に『Voluntary Architects' Network―建築をつくる。人をつくる』を読んで以来、坂茂先生の著書をもう少しリサーチしてみたい気持ちに駆られていて、入門編としてはちょうどいいと思い、手始めにこの岩波現代文庫の1冊を入手した。岩波現代文庫はどこの書店に行ってもそれほど大きなスペースがないので、5年近く前の本だと棚に残っているケースはかなり稀だ。ブックオフも含めて何軒かの書店で物色し、ようやく見つけて購入した。

本書の初版が書かれたのは『Voluntary Architects' Network」よりも前のことだから、序盤の阪神・淡路大震災における「紙の教会」「紙のログハウス」あたりは、既視感あるカラー口絵が多かった。ただ、本書の方はさすがに読み物になっているので、誕生までのストーリー、特に被災地住民の理解を得るまでの葛藤と自治体の事なかれ主義との闘いなどは、読んでいて勉強になった。

読み進めていくと、続いて良かったのが坂茂先生のライフヒストリー的な留学や師との出会いが述べられている中盤の2章だった。内外を問わず被災地でのシェルター建設を地元で入手可能な材料を用いて行われているが、特に開発途上国の被災地での活動に、あまり「日本」という旗印を感じない、そこに集うボランティアの多国籍性が印象的だ。坂先生が途上国の現場との接点を持ったきっかけがUNHCRだからということもあるのだろうが、それ以前に米国留学で培われたネットワークがあるのだろう。

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『SDGs――危機の時代の羅針盤』 [持続可能な開発]

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
地球の再生能力を超えない持続可能な世界を目指すゴールとターゲット。2030年の期限まで10年を切り、貧困や格差、環境破壊等の慢性的危機に加え、パンデミック危機の今その真価が問われている。日本政府の元交渉官とNGO代表とがSDGsの概要、交渉秘話、実践と展望を紹介する。21世紀を生き抜く知恵の宝庫がここに。
【購入】
年末年始を東京で過ごすことになったため、年末に新書をまとめ買いした。その中の1冊で、昨年夏頃から断続的に続いているSDGsに関するお勉強の一環だ。

僕自身も、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の策定プロセスを横目でウォッチしていた時期があるため、その策定プロセスで日本政府の首席交渉官を務めておられた南大使と、同じく市民社会代表として日本政府への申入れや他国の市民社会組織との連携の先頭に立っておられた稲場氏が、それも共著で本を出されたと知り、是非読んでみたくなった。特に、南大使のSDGs国際交渉回顧録は、僕らのようななかなか国際交渉の場を体験することができない人間にとっては歴史的価値がある文書だと思う。環境分野ではなく、貧困削減レジームの下でミレニアム開発目標(MDGs)の達成に取り組んできた開発協力の業界の人にとっては、待ちに待った1冊であり、そしてSDGsを扱った類書の中で、最もしっくりくる内容なのではないかと思う。

類書の多くは、気候変動対策を特に重視した内容だったり(結果的に貧困削減への取り組みやいわゆる「5つのP」のうちの「平和(Peace)」の文脈ではほとんど何も述べていなかったり)、企業にとってのビジネスチャンスという視点があまりにも前面に出過ぎていて、政府やNGO/NPOの取り組みどころか、地方自治体の取り組みへの言及すら薄かったりして、僕らは何だか「取り残されて」しまった寂寥感を覚えていた。

そんなところに真打ちとして登場された本書は、「いやいやそんなことはない、今でも貧困問題や平和構築は重要なアジェンダだし、民間資金がなかなか向かわない分野では公的な資金の役割も大きい」と勇気づけてくれそうな1冊になっている。思うに、SDGsの解説書は、自分がどういう立場でSDGsと向き合っているのかによって、どれを読んだらいいのかが変わってくる。会社勤めの方にはやっぱりその方々に向いた解説書が存在する。僕らの業界の読者にとっては本書だということなのだろう。

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『小さな地球の大きな世界』 [持続可能な開発]

小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
プラネタリー・バウンダリーは、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の基礎となった概念です。著者のロックストローム博士はこの概念を主導する科学者グループのリーダーであり、本書はSDGsをより深く理解するのに役立ちます。私たちは、地球上の自然には限りがなく、それを使ってどこまでも豊かになれると誤解してきました。しかし、人類の活動の爆発的な拡大により地球は限界に近づき、増え続ける異常気象、生物種の大量絶滅、大気や海洋の異変など、地球は私たちに重大な警告を発しています。いまこそ、地球環境が安定して機能する範囲内で将来の世代にわたって成長と発展を続けていくための、新しい経済と社会のパラダイムが求められています。本書は、科学的なデータと美しく印象的な写真を用いて地球の状況を示したうえで、人間と自然の関係を再構築するプロセスを提示し、その実現への励ましを与えてくれます。
【コミセン図書室】
実は、本書は12月にコミセン図書室で借りて、返却期限までに読み切れずに2週間の延長手続きを取り、それで年末までには読み切っていた本である。本書刊行の経緯については監修者の1人が本書の冒頭で語っておられるが、2015年に出た原書がいい本だから、日本の読者にも紹介したいと考えた石井菜穂子氏が、訳本刊行への協力をIGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)に打診し、IGESの首脳陣がそれに乗ったということだったらしい。

でも、できれば原書同様、電子書籍版も作って、書籍版よりも安く販売して欲しかったとも思う。メッセージとしてはいい本なんだけれど、税別で3,200円という価格は高すぎ。美しい写真や示唆に富んだカラー図表を何点も挿入するために上質の紙を使って印刷されているからなのかもしれないが、これに3,200円は出せないなぁ。取りあえず通読した上で、必要ならコミセン図書室で再び借りることにしよう。

SDGsについては多くの解説書が書店の棚を賑わせているが、理論的支柱にまで踏み込んだ解説書はあまり多くない。企業にとってのビジネスチャンスだ主張する本では、SDGsの理論的支柱と言われた「プラネタリー・バウンダリー」にまで言及していないことが多い。僕も最近はSDGsについて人前で話す機会が少しあり、それが昨秋あたりからSDGsの解説書を文献リサーチする動機となっているが、この際だからプラネタリー・バウンダリーについてまるまる1冊扱っている文献でも読んでみようかと思い、本書を手に取った。

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『サーキュラー・エコノミー』 [持続可能な開発]

サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書 (ポプラ新書)

サーキュラー・エコノミー 企業がやるべきSDGs実践の書 (ポプラ新書)

  • 作者: 中石和良
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」とは、環境への負荷を最小限に抑え、同時に最大限の経済効果を得るための新しい経済・産業システム。企業におけるSDGsの実践方法としても注目を集めている。本書では、先端企業による業界別の取り組みを通して、新しい発想や仕組みづくりを提案する。

先々週、知り合いから頼まれてSDGsに関する論考を書かせてもらうことになった。それまでに得ていた知識である程度は書けそうだと思ったものの、1冊ぐらい近刊書籍を読んで頭をブラッシュアップしてから書こうかと思い、先週近所のコミセン図書室で借りた。新書サイズだったし、通勤の合間に読めば2日ぐらいで読み終われるだろうと甘く見ていた。

結果。読みづらかった。「です・ます」調の書きっぷりで、一見優しそうに見えるのだが、読み始めて2日間、序論の部分だけで全然頭に入って来ず、その間に例のSDGsの原稿を書き上げてしまおうと思ったので、結局本書は間に合わなくなってしまった。原稿は先週末一気に脱稿。本書は、脱稿後、週明け2日間を費やしてようやく読み切った。アリバイ作りのように。

決して悪い本じゃない、意図は良いと思うし、書かれているのは正論だが、引っかかったのは31頁の「バタフライ・ダイアグラム」と36頁のアクセンチュアの「サーキュラー・バリューチェーン」の5つのビジネスモデルという図。この2つの理解に手間取って、先に進めなくなった。そして、ようやく理解して序章を読み終えて第1章(つまり本編)に入って行ったのだが、これが企業、それも大企業の取組み事例の紹介だった。大企業のCSRかサステナブルの担当者なら読んでて損はないだろうが、会社勤めじゃない僕にはなかなか響かなかった。

それに、超有名な大企業の取組みばかりを紹介しているけれど、それでは同業他社はどうなのというのがわからない。要は取り組めている企業と取り組めていない企業にはどこで差が生まれるのかがあまり考慮されておらず、一部の大企業がやっているから皆さんもやりましょう的な推奨のされ方に感じた。

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タグ:SDGs 自給自足
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