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『アキラとあきら』 [池井戸潤]

アキラとあきら (徳間文庫)

アキラとあきら (徳間文庫)

  • 作者: 池井戸潤
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/05/17
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
零細工場の息子・山崎瑛(あきら)と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬(あきら)。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった―。感動の青春巨篇。

この小説、読み始めたのが金曜日の夜、読了したのは土曜日の夕方。文庫本ながら720頁もある超大作、起きている時間のほとんどはこの読み込みに充てた。当地で17日(土)の午後といったら、韓国・ブータン国交樹立30周年記念事業の一環だった韓国K-POPスーパーコンサートというのがティンプー・チャンリミタン国立競技場で開催されており、僕ら外国人でも入場できたのだが、普段馴染みのないK-POPよりも池井戸潤だとばかりに、コンサート開始時刻15時を過ぎても自宅で読み込みを続け、16時には読み切った。こんなに時間の経つのも忘れて読んだのは実に久しぶりだ。

池井戸潤といったら銀行を舞台とした作品がもともと多い作家だが、これまで読んできた作品は、たいていの場合は銀行の内部を舞台にした勧善懲悪ものか、或いは銀行と、銀行と結託した大企業に翻弄される町工場の経営者や従業員を描いた勧善懲悪ものかのどちらかということが多かった。それが、今回はかなり長期間にわたる2人の青年の成長過程を描いていて、初期は銀行に振り回される町工場の悲哀、一大企業グループ内での親族間のいざこざで翻弄される本家経営者とその息子というのが描かれ、そこで少年時代を過ごした2人の「あきら」が、進路を銀行に定めて、その後力を合わせて企業とそこで働く人々の救済に奔走する話となっている。

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『陸王』 [池井戸潤]

陸王 (集英社文芸単行本)

陸王 (集英社文芸単行本)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/07/08
  • メディア: Kindle版
内容紹介
勝利を、信じろ――。足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?

この本は、今週一時帰国していれば、単行本を買ってブータンに持ち帰ろうかと思っていた池井戸潤の新刊である。こちらで、ある大物人物と来年3月のブータン国際マラソン(フル)を一緒に走る約束をしてしまった。実際本番まで残り半年となったので、最近になってようやくジョギングを再開した。気分的に盛り上がるには、こういう池井戸さんの勧善懲悪ものを読むのがいいかと思って、ひそかに楽しみにしていた。しかも、今度の作品の舞台がマラソン・駅伝。ランナーのパフォーマンスを下支えする、ランニングシューズに関するお話である。

ところが、楽しみにしていた一時帰国が急にできなくなってしまい、単行本を買ってくる計画も頓挫。でも読みたい気持ちは変わらずで、それならということでキンドル版をダウンロードすることにした。書籍版だと588頁もある超大作だが、電子書籍だとそんなに分厚い本だという印象はなかった。さすがにあっという間に読了というわけにはいかないが、楽しいひと時を過ごさせてもらった。現実逃避とも言えるが(笑)。

実は読み始める直前、僕は10月1日(土)に当地で開かれる12kmのロードレースにエントリーした。普段の練習では5kmしか走っていない人間が、いきなりその倍以上の距離を走るというのだから大変だ。気持ちが焦る反面、ここ2日ほどあいにくの雨で朝方ジョギングにも出かけることができずに過ごしている。そういう時のための長編小説。イメージトレーニングをしつつ、気合を入れるには十分すぎる1冊だ。

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『下町ロケット2 ガウディ計画』 [池井戸潤]

下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/11/05
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
ロケットから人体へ―佃製作所の新たな挑戦!前作から5年。ふたたび日本に夢と希望と勇気をもたらすエンターテインメント長編!!

TVドラマ面白いですね。ドラマが二部構成になっていて、後半は池井戸さんの新刊『ガウディ計画』がベースになっていると知り、せめて第2部が中間点を過ぎてドラマが佳境に入ったあたりで原作を読んでおこうと考えていた。

先週末、ちょうど第8話が終わり、週末から関わっていた東南アジア某国への出張もひと段落したので、出張先最後の日の夕方、現地で電子書籍版を購入した。電子書籍版はこういうシチュエーションで気軽に購入できるからとても便利だ。

元々東京までの帰国フライトの機内で読もうと思っていた。ところが、前夜少し時間があったので、ホテルのジムでトレッドミルで10kmほど走っておこうと考え、走りながら読むのにこの作品を選択したのがよくなかった。走りながら1/4ぐらい読み進めてしまうと、続きが気になって仕方がない。走った後の夕食も外のレストランじゃなくルームサービスに切り替え、さらに読書を継続、さらには就寝時間も無視して読み進めてしまい、結局読了したのは午前1時を回っていた。

翌朝の帰国フライトが早いため、朝は4時起床を想定していた。午前2時近くにもなってあと2時間寝るのは目覚ましでも起きられないリスクが大きいと考え、結局そのままパソコンと向き合い次の仕事の資料作成などをやって過ごすことにし、朝睡眠不足のまま空港に向かうことになってしまった(苦笑)。

池井戸さん、なんて罪作り…。自分がいけないことは重々承知しているけど、こんなグイグイ読ませる作品を描いたあなたにもひと言申し上げたい(笑)。それだけ面白かったということです、ドラマのキャストを思い浮かべながら読めた。

これで予習は完璧。それでは最終回までのあと2回、ドラマを楽しむことにしよう!

*内容紹介してなくてスイマセン。まあ「日記」ということでお許しを!!
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『株価暴落』 [池井戸潤]

株価暴落 (文春文庫)

株価暴落 (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/03/09
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
巨大スーパー・一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東は企画部の二戸と対立する。一方、警視庁の野猿刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。傑作金融エンタテイメント。
今月に入って4作目の池井戸作品のご紹介になる。短期間にこれだけ続けると飽きが来ないかとも思うが、今月読んだ4作品は銀行が舞台となっているという1点を除けばストーリーの共通性はあまりないので、新たに読むたびに新鮮なカタルシスを味わうことができた。

なぜこれほど集中したかというと、『銀翼のイカロス』を除く3作品は、近所のコミセン図書室に収められている文庫版で、たまたま借りることができたからというのに過ぎない。以前から狙っていた本であり、書架で発見したら迷わず手に取ることにしている。池井戸潤は人気が出てしまったので、一瞬でも借りるのを躊躇すると、誰かに借りられてしまう恐れがある。

月末が近くなってきていて、僕はお盆休みの帰省中に読まねばと思いつつどうしても読み切れなかった専門書2冊の読み込みを最優先でやらねばならない状況である。ところが、お盆休みが明け、その間に借りていた3冊を図書室に返却に行ったところ、たまたま新着本の棚に『株価暴落』の文庫版があるのを発見してしまった。千載一遇のチャンスである。他に優先しなければいけない専門書があったものの、就寝前のひと時や朝出勤前の風呂、トイレ等の時間を利用して少しでも読めると踏み、僕は新たにこの本を借りることにした。

本にまつわるエピソードが長くなってしまったが、ここからが本題―――。

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寸評:今週読んだ本(2014年8月中旬②) [池井戸潤]

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《前が見えなくなるほどのどしゃ降りです》

報道されている通り、このお盆の数日、近畿、東海地方を中心に集中豪雨に襲われ、避難を余儀なくされた住民の方々、命を落とされた方々が大勢いらっしゃった。同じ岐阜県でも被害が大きかった飛騨・高山の方とは比較にならないけれど、僕がお盆休みを過ごした西濃地方でも、14日から17日までの間、ろくに晴れ間が顔をのぞかせたことすらなかった。雨が降らない時間が1時間でも続くことはまれで、当然ながらジョギングにも行けず、アウトドア系のアトラクションの多い故郷では、雨の中外出しても行けるところは限られてしまう。

僕自身もストレスをためたが、それ以上にストレスをためていたのがうちの妻。連れてきている子供たちはテレビゲームをやるか漫画を読むか、あるいは単にテレビ番組を見てゲラゲラ笑っているだけでも楽しかったのかもしれないが、そういう、持ってきた宿題すらやらずにダレた毎日を過ごしている子供達を見て、妻はストレスをため、さらには僕がまた子供同様に腰が重かったために、そのストレスに油を注いでしまった。

折角のリフレッシュの機会がこうしてストレス増幅の機会になってしまうのはたまらない。妻も読書を趣味として、雨の日はおとなしく屋内で書物を読むというので満足してくれたら嬉しいのだけれど、その部分については残念ながら共有できない。僕の読書量も、肝心の妻には全く評価されていないのは残念だ。(・・・などとブログで愚痴を書いても、僕のブログなどチェックもしていないだろうから問題にならないだろう。)

そんなわけで、読了した本の感想を共有するのは、もっぱらこのブログの読者ということでご理解下さい。

さて、前回書いた通り、このお盆休みの里帰りに持ち帰った本の多くは仕事の関連の文献だったわけだが、寝る前ぐらいは息抜きがあってもいいかと思い、2冊小説を持ってきた。いずれも池井戸潤作品の文庫版で、枕元に置いて読むにはちょうどいいサイズ。個別に紹介してもいいところだったが、このところ平日にブログの記事をアップするのは容易ではないので、いっそのこと休暇中にまとめて掲載するようにしようかと考えた。

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『銀翼のイカロス』 [池井戸潤]

銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2014/08/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力!  新たな敵にも倍返し! !
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?
先週、バンコクに出張する際、なんとなく読みたくなり、Kindle版を成田空港で注文。空港で出発までの待ち時間に読み始め、滞在先での空き時間を使って2日間で読了した。以前海外出張した際に読んだ本を紹介する際にも一度言及したことがあるが、電子書籍の最大のメリットは、読みたいと思った時にすぐに購入して読み始められることだ。しかも、何冊購入しても基本Kindle1台に収まってしまうので、自宅の蔵書が積み上がってスペースを取ることがない。デメリットとしては、気軽に購入できるが財布を握っている我が家の大蔵大臣のあずかり知らぬところで購入しているので後で大目玉を食らうことが多々あること、加えて、電子書籍化されているのは圧倒的に小説が多く、もうちょっと専門書も電子書籍化してくれれば、普段の通勤でもKindleを携行するんだけど、今のところは出張に携行してオフタイムに小説を読む程度にしか使うことができていないというのも、デメリットとはいえる。

さて、多くの半沢直樹ファンが待ちに待った第4弾『銀翼のイカロス』が今月発売となった。半沢クンも人事異動を重ねるたびに重い仕事を任されるようになりつつあり、大阪西支店時代は5億円の債権回収だったのが、本店営業第二部次長で伊勢島ホテル再建では100億円になり、東京セントラル証券出向を経て営業第二部次長に復帰したと思ったら、今度は500億円の債権放棄ときた。この間に経過した時間は振り返ってみるとそんなに長くない。証券子会社出向はせいぜい数カ月だった筈なので、伊勢島ホテル再建から帝国航空再建までの期間もかなり短かった筈である。そう考えると、半沢の成長カーブは相当急激に上昇した筈だし、中野渡頭取は意外と短命だったのかもという気がする。

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再読『ロスジェネの逆襲』 [池井戸潤]

ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/06/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
ときは2004年。銀行の系列子会社東京セントラル証券の業績は鳴かず飛ばず。そこにIT企業の雄、電脳雑伎集団社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだ。ところが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った主人公の半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、周囲をアッといわせる秘策に出た―。直木賞作家による、企業を舞台にしたエンタテインメント小説の傑作!
持ち回りの宿直で、会社に泊まり込んだ。宿直時間の間は基本的に緊急連絡への対応と時々自分で情報収集をするぐらいで、18時から翌朝の9時過ぎまでやることもなく、持ち帰り残業やればいいじゃないかというご批判もあろうことかとは思いますが、小説でも読んでしまおうかと考えた。

池井戸潤さんの半沢直樹シリーズの最新刊『銀翼のイカロス』が間もなく発売される。『銀翼~』についてもいずれ早い時期に読んで感想を述べたいと思っているが、その前に復習を兼ねて『ロスジェネの逆襲』を読んでおくことにした。

2012年発刊のこの本は、かなり早い段階で一度読み切っているが、その後『半沢直樹』としてテレビドラマ化された「バブル組」の2部の続編として、テレビドラマ放送終了後から注目を集め、多くの人が読んだ作品となっている。突然の出向命令で系列の証券子会社に行くことになったところでドラマは終わっているが、出向先でも「倍返し」は続くというわけだ。

今回は、ドラマでも登場した同期の渡真利や近藤、中野渡頭取、内藤部長は出てくる。なので、半沢のセリフは堺正人さんのイメージで、中野渡頭取のセリフは北大路欣也さんのイメージで、その他ミッチーや古田鋼太郎さんが実際にそのセリフを言っているのをイメージしながら、楽しく読むことができた。

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『花咲舞が黙ってない』の原作 [池井戸潤]

新装版 不祥事 (講談社文庫)

新装版 不祥事 (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/11/15
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
ベテラン女子行員はコストだよ―そう、うそぶく石頭の幹部をメッタ斬るのは、若手ホープの“狂咲”こと花咲舞。トラブルを抱えた支店を回って業務改善を指導する花咲は、事務と人間観察の名手。歯に衣着せぬ言動で、歪んだモラルと因習に支配されたメガバンクを蹴り上げる!新ヒロインの活躍が痛快なオフィス名編集。

新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)

新装版 銀行総務特命 (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/11/15
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
帝都銀行で唯一、行内の不祥事処理を任された指宿修平。顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくり…スキャンダルに事欠かない伏魔殿を指宿は奔走する。腐敗した組織が、ある罠を用意しているとも知らずに―「総務特命担当者」の運命はいかに!?意外な仕掛けに唸らされる傑作ミステリー。
先週から日本テレビ系列でドラマ『花咲舞が黙ってない』が始まった。『半沢直樹』以来の銀行を舞台にした池井戸潤作品だし、NHK朝ドラ『ごちそうさん』終了後の杏さんの主演ドラマということもあって、開始からある程度は視聴率が稼げるだろうと見られていたドラマだ。平日午後10時の放送時間帯だと、最近の僕では帰宅して見るのは間に合わない可能性が高いが、ビデオ録画しておいて週末にでも見ようかと考えてはいる。

先週、月曜日から海外出張に出かけていた。またしても中米だったので、月曜に成田を出発してそのまま月曜お昼の到着となる。そして月曜から木曜まで働き、木曜深夜出発の給油時間込みで17時間のフライトで、成田に戻ってきたのは土曜日の朝だった。時差ボケに加えて出張先が海抜2200メートルの高地だったこともあり、眠りが浅く、夜何度も目が覚め、頭痛にも悩まされた。日中の仕事に加えて、別の仕事も持ってきていたので夜や早朝もホテルの自室で仕事した。その仕事も木曜日にある程度片付いたので、帰りのフライトは仕事のことは一時忘れようと考えた。そこで、ホテルを出発する前に小説の電子書籍を2冊ほど購入して、機内で読んでしまうことにした。こういう時だけは、電子書籍リーダーKindleを持っているのは便利だ。

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『シャイロックの子供たち』 [池井戸潤]

シャイロックの子供たち (文春文庫)

シャイロックの子供たち (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/07
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。
最近、近所のコミセンがかなり気張って池井戸潤作品の拡充を図っている。元々単行本の書架には5冊ほどしかなく、あとは新刊が出るたびに高回転で回っていてよほど運が良くなければ借りられない最近の作品(『下町ロケット』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『ロスジェネの逆襲』、『七つの会議』)があるくらいだった。それが、文庫化された作品を中心に新着本の棚に何冊か並び始めたのだ。さすがに「バブル組」のシリーズは読む気にはならないが、それ以外に銀行を舞台にした作品の文庫版は何冊か入荷しており、これからも時々読んで紹介していきたいと思っている。

そういうわけで今回読んだのは『シャイロックの子供たち』。東京・五反田を発着する東急池上線の長原駅近くにある、東京第一銀行の支店を舞台にした連作短編集である。大田区の中小企業中心の顧客構成なので、大手都市銀行の一支店とはいえ、その日常業務は非常に親近感を感じる。(それでも、僕が働いていた地方銀行の大都市の支店と比べても規模は大きいなと感じたのだが(笑))


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タグ:人事 銀行
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『仇敵』 [池井戸潤]

仇敵 (講談社文庫)

仇敵 (講談社文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/01/13
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす―。不正を知った男は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。乱歩賞作家、渾身の連作ミステリー。
今やTBSテレビのドラマ『半沢直樹』で有名になってしまった池井戸潤の銀行ミステリー。実は池井戸潤は半沢直樹を主人公にした銀行員シリーズ3作の他に、銀行を舞台にした短編・長編を幾つか発表しているのはご存じだろうか。しかも、半沢直樹のようなエリート行員が主人公の話だけではなく、銀行業務に関連する様々な立場の人々を主人公にした作品も多い。

池井戸潤のデビュー作は『果つる底なき』で、その主人公は大手都市銀行の融資課長代理だったが、その後は、第4作『銀行総務特命』では総務部の調査役を主人公に仕立て、第6作となる『仇敵』では上記紹介にある通り店頭案内や駐車場の整理、段ボール箱の運搬、店内掲示ポスター類の張替などの雑務をこなす庶務行員、第8作『最終退行』では負け組の副支店長、第9作『株価暴落』では業績悪化企業を中心に担当する部署の調査役、第10作『金融探偵』では銀行を放逐された男、第11作『不祥事』では、銀行窓口の女性テラー、第13作『銀行仕置人』では、エリートコースから脱落して座敷牢といわれる場所で社員名簿の修正という不要不急の業務をさせられる窓際銀行員を扱っている。(『仇敵』文庫版の作品解説より)言わば銀行の中でも傍流の行員を扱った作品まであるのである。

そういうわけで、本日はこの傍流にいる庶務行員が主人公の勧善懲悪ものをご紹介する。

この作品は面白い構成になっている。基本短編でひとつひとつの作品の中では武蔵小杉にある某地方銀行の支店を舞台にして日々持ち上がる問題を若手の融資係・松木が庶務行員である恋窪の助言を得て解決していく。その一方で、地銀の一支店の庶務担当に過ぎない恋窪がなぜこうした的確な助言をできるのかというと、彼には大手都市銀行の企画部門で次長職まで務めたエリート行員だった過去があるからである。行内で私腹をこらしていると噂される某役員の裏金工作を暴こうと調査をしていたが、足元の企画部門内で起こった別の非違行為の罪を着せられる形で辞職、再就職の道も妨害に遭った結果、地銀の某支店の庶務行員として拾われることになったのである。

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タグ:銀行
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