『沈黙の町で』 [奥田英朗]
内容紹介【購入(キンドル)】
北関東のある県で、中学2年生の男子生徒が部室の屋上から転落し、死亡した。事故か? 自殺か? それとも―― やがて祐一が同級生からいじめを受けていたことが明らかになる。小さな町で起きた1人の中学生の死をめぐり、町にひろがる波紋を描く。被害者や加害者とされた子の家族、学校、警察などさまざまな視点から描き出される群像小説で、地方都市の精神風土に迫る。朝日新聞連載時より大きな反響を呼んだ大問題作。
『リバー』を読んだ後、もう少し奥田英朗作品を味わってみたくて、次に選んだのも『リバー』と同じく北関東(たぶん群馬県)を舞台にした犯罪ものだった。但し、今回の作品は同級生4人が容疑者として早くから特定されていたにも関わらず、真相究明までが長く、事故なのか自殺なのか、屋上から転落するような状況に誰と誰が追い込んでいったのか、多くの中学生、さらには教師や父兄まで絡んできて、後味のあまり良くないエンディングになっていた気がする。
事故の真相はそんなところかなとは思ったが、そこに至るまでの闇の深さは圧倒的だ。どの登場人物の立場であったとしても、その場に置かれればそういう言動や行動を取っていただろうと思うし、それらが組み合わさって誰もが望まない、救われない事件に発展してしまう。そして、そうした事件が起きてしまった後の対応でも、13歳か14歳かによって、同じ同級生でも逮捕となるか否かが異なったり、また母子家庭と両親のいる家庭では置かれた状況が異なったり、また両親がいる家庭でも母親と父親では対応ぶりが異なったりと、これでもかこれでもかと言わんばかりに登場人物が分断されていく。
被害者と加害者のいずれにも、街の有力者とつながっている親がいたりする。とにかく、読者が作品中の特定の登場人物に加担することを許さない展開なのである。奥田英朗って、登場人物の一人一人を極限状態にまで追い詰めたところから生まれる人間のどうしょうもない反応を描くのが本当に上手い。
ゆっくり味わうつもりでいたら、今回も一気に読み切ってしまった。というか、そういう時間も今週はあった。今だから言えるが、今週は週明けに吐き気から発熱、頭痛、肩こり、下痢とオンパレードで、一時はデング熱かもという事態に陥った。幸い、熱は早くに下がったが、火曜日は大事を取って1日仕事を休み、翌日以降もぼちぼちと仕事の負荷を増やしていくような過ごし方をした。