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『ハヤブサ消防団』 [池井戸潤]

ハヤブサ消防団 (集英社文芸単行本)

ハヤブサ消防団 (集英社文芸単行本)

  • 作者: 池井戸潤
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/09/05
  • メディア: Kindle版

内容紹介
ミステリ作家vs連続放火犯
のどかな集落を揺るがす闘い!
東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知る───。連続放火事件に隠された真実とは?地方の小さな町を舞台にした、池井戸作品初の“田園”小説として、「小説すばる」連載中から話題を呼んだ珠玉のミステリ。
【購入(キンドル)】
今、日本でつかの間の休暇を過ごしている。その往路となるパロ~バンコク~羽田の空の旅の途中、思い付いてキンドルでダウンロードしたのが池井戸潤の新作だった。結構なボリュームがあって読了には時間を要したが、バンコク~羽田の夜行便の機中では取りあえず読み切るところまでは行けた。

池井戸潤といったら、メガバンクや企業を舞台にした作品がほとんどで、地方が舞台となる作品は極めて珍しく、新鮮な思いを抱きながら読み進めた。舞台となる八百万市というのは岐阜県八百津町をモデルにしているのだろうと思われるし、劇中登場する新興宗教との関わりで言えば、岐阜県では過去、郡上八幡や国道417号線の福井県境近くで「パナウェーブ研究所」という白装束集団の不気味な活動が話題になったことがあったので、本作品で出てきた新興宗教も、モデルは多分オウム真理教だろうと理解しつつも、パナウェーブ研究所騒動を思い出しながら読んだ。

過去、池井戸潤はこういう作品は描いたことがないので、とても新鮮に感じた。都会から引っ越してきた太郎が地元の人々の勧誘に遭って消防団に入団し、消防団の活動に深く関わっていくことになるプロセスは、重松清作品でもよく見られる展開だなと思っていたものの、中盤以降は消防団の活動そのものよりも、超高齢化が進む過疎地の集落に押し寄せる波を意識させるような内容に、ちょっとサスペンスを重ねる展開で、僕的には楽しめた。重松作品にはあまりミステリー要素ないから。似てる作品を挙げるとしたら、米澤穂信『Ⅰの悲劇』かも。で、米澤作品も舞台は岐阜県だったわけだけど。

このところ「宗教と政治」というのが日本では大きな関心事となっているみたいだし、そのうちこの作品もテレビドラマ化でもされるのではないかと期待したい。ドラマ化させやすい作品には仕上がっていると思う。田舎の良さというのは映像にした方がもっと伝わる気がする。


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