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『続・森崎書店の日々』 [読書日記]

続・森崎書店の日々 (小学館文庫)

続・森崎書店の日々 (小学館文庫)

  • 作者: 八木沢里志
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/10/05
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
本の街・神保町で近代文学を扱う古書店「森崎書店」。叔父のサトルが経営するこの店は2年前失意に沈んでいた貴子の心を癒してくれた場所だ。いまでは一時期出奔していた妻の桃子も店を手伝うようになり、貴子も休みの日のたび顔を見せていた。店で知り合った和田との交際も順調に進んでいたが、ある日、貴子は彼が喫茶店で昔の恋人と会っているのを目撃してしまう。一方、病後の桃子を労う様子のない叔父を目にし、貴子は夫婦での温泉旅行を手配するが、戻って来てから叔父の様子はどこかおかしくて…。書店を舞台に、やさしく温かな日々を綴った希望の物語。映画化された「ちよだ文学賞」大賞受賞作品の続編小説。
【購入(キンドル)】
『森崎書店の日々』をご紹介した際、「間髪入れずに続編も読むだろう」と述べていた通りで、すぐに読んだ。内容はあらすじでも示されている通りで、それ以上に踏み込むとネタバレになってしまうのであまり詳らかにはしないが、前作のうち、映画化された「ちよだ文学賞」大賞受賞作品というのは前半の部分のみで、後半の「桃子さんの帰還」自体が続編扱いとなっている。その桃子さんと、同じくこの頃貴子が知り合った「和田さん」というのが、本日ご紹介する続編のキーパーソンと言ってもいい。これら2冊はセットで1つの長編小説と考えてもいい。

で、前作と同様に神保町の本好きを虜にして止まない魅力や、落ち着いた佇まいが、作品全体からにじみ出ているようで、好感持てる作品だと改めて強調しておく。

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パロ・ティンプーの洪水予警報 [ブータン]

天気予測と早期警戒システムの信頼性と正確性の向上に向けて
Towards reliable and accurate weather forecast and early warning systems
Kelzang Choden記者、BBS、2022年6月9日(木)
http://www.bbs.bt/news/?p=170503
weather-meeting.jpg
【抄訳】
この国の天気予測と早期警戒警報システムをより正確で効率的なものにするための努力が続けられている。国立水文気象センター(NCHM)は、災害管理局(DDM)及びJICAとの共同プロジェクトを実施、その第2フェーズが現在進められている。その活動の一環として、今日、ティンプーで1回目の合同調整員会が開かれた。

この第2フェーズプロジェクトは第1フェーズの成果に加え、新しいテクノロジーも活用し、よりよい結果が得られるよう取り組む。ティンプーチュ及びパチュの流域の調査が進められる予定。この2流域は、流域人口の多さと洪水災害への脆弱性の観点から選ばれた。

洪水発生可能性評価に関する活動としては、早期警戒警報システムの開発や同システムのガイドラインの開発などが含まれる。プロジェクト第2フェーズのプロジェクトマネージャーであるテバ・ブッダ・タマン氏は、「重要なのは、警戒や警報発令の基準となる水位を定めることです。どの水位に達したら地域住民に避難するよう発令するのか。その重要な活動として、モデリングやマッピングを行っていく必要があります」と述べる。

さらに、プロジェクトは様々な活動を通じて気象予測の精度を上げる取組みにも力を割く。人工衛星データの活用や、天気予報のスタジオ開設などだ。プロジェクトマネージャー氏によると、山がちなこの国の天候は正確で信頼性の高い予測が難しい。「従って、改善を進めるための最善策は、すぐれた観測ネットワークの確立とドップラーレーダーや気象レーダーなど、上空の大気の観測システムの確立にあります。」

このプロジェクトは2020年に要請されたもので、2024年には終了予定。2013年から16年にかけて実施された第1フェーズでは、チャムカルチュ、マンデチュの両水系を対象に、人工衛星による観測モニタリングシステムが作られ、洪水早期警戒警報システムが設置された。

現地でのJICAの取組みを2日連続で紹介したりすると、「お前はJICAのファンサイトか」と言われそうだな。珍しいことなのだが、ここに来てメディアでのJICA報道がかまびすしい。

合同調整員会開催のレベルでもニュースで取り上げられるんだというのもちょっと驚きだ。技術協力プロジェクトなら、合同調整員会は協力期間中に5~6回は開かれているが、合同調整員会レベルでメディアが取り上げたプロジェクトは実は少ない。

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ごみ収集車運行状況確認アプリ [ブータン]

ティンプー市のごみ収集管理アプリ
‘Thimphu Thromde Waste App’ – tracking waste collection trucks
Choni Dema記者、BBS、2022年6月6日(月)
http://www.bbs.bt/news/?p=170368
TT-waste-app.jpg
【抄訳】
ティンプー市民はごみの廃棄のために路上で長時間待たなくても済むようになる。JICAブータン事務所がごみ収集車の運行状況を確認できるモバイルアプリを導入したからだ。このアプリは、今日ローンチされた。

「ティンプー市ごみアプリ」と名付けられたこのアプリは、市内を走るごみ収集車が今どこにいるか、リアルタイムで把握できる。収集車が自宅玄関前に来るまでにどれくらい時間がかかるのか、市民は知ることができる。これは、首都の住民が長年直面してきたごみ収集のタイミングや収集日程の見える化の問題への対応策ともなる。

これまで、ごみ収集車の運行状況は、市当局とごみ収集受託企業のみが把握していた。市役所の環境担当官補佐であるレクザン・ジャイエ・ドルジさんはこう述べる。「市民から私たちに寄せられる苦情の多くは、ごみ収集車が時間通りに収集に来ないとか、来ても素通りしてしまうというものでした。こんなことが起きると、市民は怒り、ごみを自宅近くに放置し、それが野犬に荒らされて、さらに大きな問題をもたらします。」彼女は、このアプリが収集車の場所をリアルタイムで知らせ、市民は収集車が自宅の軒先に来てくれるタイミングを知ることができると述べた。

JICAブータン事務所は、このアプリの開発をブータンのIT企業に外注した。日本政府はさらに20台の新しい収集車を供与しており、市内のごみ収集の円滑かつ高頻度の実施を可能としてくれている。

これは素晴らしいですね。どういうODAスキームを使ったのかわからないが、先般供与されたごみ収集車の無償資金協力のソフトコンポーネントなのだろうか。それとも、何か別のスキームなのだろうか。

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『森崎書店の日々』 [読書日記]

森崎書店の日々 (小学館文庫)

森崎書店の日々 (小学館文庫)

  • 作者: 八木沢里志
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/10/05
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
貴子は交際して一年の英明から、突然、他の女性と結婚すると告げられ、失意のどん底に陥る。職場恋愛であったために、会社も辞めることに。恋人と仕事を一遍に失った貴子のところに、本の街・神保町で、古書店を経営する叔父のサトルから電話が入る。飄々とした叔父を苦手としていた貴子だったが、「店に住み込んで、仕事を手伝って欲しい」という申し出に、自然、足は神保町に向いていた。古書店街を舞台に、一人の女性の成長をユーモラスかつペーソス溢れる筆致で描く。「第三回ちよだ文学賞」大賞受賞作品。書き下ろし続編小説「桃子さんの帰還」も収録。
【Kindle Unlimited】
以前、僕は岐阜県出身の作家さんは無条件で推すと述べていたことがあったが、それに付け加えるとしたら、ファッションモデルで女優の菊池亜希子さんも推しである。僕の実家の隣り町出身であるが、彼女が生まれた時には僕はすでに東京の大学に通っていたため、縁もゆかりもない(笑)。

あの、わかりづらくて受け付けない宮本輝『朝の歓び』を読んでから、口直しにもうちょっと気分的に受入れ可能な落ち着いた小説が読みたいと思い、Kindle Unlimitedを物色したら、なんと菊池亜希子さんが表紙を飾っている『森崎書店の日々』が目に飛び込んできた。しかも、内容紹介を見ると、舞台は神田神保町だという。これは読まねば―――矢も楯もたまらずすぐに飛びついた。

菊池亜希子さんや内藤剛志さんが表紙を飾っていることからもわかる通り、本作品は映画化もされている。推しと述べておきながら言うのもなんだが、菊池亜希子さんの初主演作だったというのを初めて知った。

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スーパーファブラボの概要 [ブータン]

王子殿下、JNWSFLとファブラボネットワーク発足を祝福
HRH Gyalsey inaugurates JNW Super FabLab and fablab network
無記名記事、Kuensel、2022年6月6日(火)
https://kuenselonline.com/hrh-gyalsey-inaugurates-jnw-super-fablab-and-fablab-network/
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【要約】
王子殿下は土曜日、ティンプーテックパークにおいて、ジグミナムゲルワンチュクスーパーファブラボ(JNWSFL)及びブータンにおけるファブラボネットワークの発足を祝った。

ファブラボネットワークとは、パロ県パンビサのDruk Gyalpo’s Institute、ゲレフのJigme Wangchuck Power Training Institute、ロベサの自然資源単科大学(CNR)のバイオラボという、3つのファブラボから構成されている。

ファブラボとは、米国MITにおいて開発されたコンセプトで、誰もがほとんど何でも作れるコンピュータ制御によるツールやマシンが配備された施設。

JNWSFLは米国国外のスーパーファブラボとしては世界で2つめとされ、ハイエンドで最新の機械が配備されている。国内の他の小規模なファブラボとともに、JNWSFLはこれからの企業家や自分で何かを作りたいと考えている人々に、上級のCNCマシンやロボティックス、3Dプリンティング、3Dスキャン、画像解析、ロジックアナライザ、電子回路製作、その他アイデアを具体的に試作につなげるのに使えるデジタル工作機械へのアクセスを提供する。

Gyalsey1.jpg

JNWSFLとブータンファブラボネットワークは、イノベーションとクリエイティブな文化を醸成するプラットフォームを作りたいとする国王陛下のビジョンに沿って行われたイニシアチブの1つである。これは「ブータンにおけるイノベーションとファブリケーションを通じた発明」という上位プロジェクトの1つで、好奇心を持つ人々に、我々が直面する課題に対する次世代のソリューションを作り出すようインスパイアすることを目的としている。これらのファブラボは、あらゆる年齢層の人々を巻き込み、活力ある学習環境を作り、この国のスタートアップエコシステムを強化するためのツールやプラットフォームを提供することが期待されている。

JNWSFLはドルックホールディングス(DHI)、王立STEM教育協会(RSSTEM)、MITビッツ&アトムズセンターによって共同設立された。プロジェクトのスポンサーは米国国務省で、ワシントンDCのブータンファンデーションを通じて資金拠出が行われ、DHIとの協調融資が行われた。(中略)

国内の他のファブラボは、ブータン政府が、労働人材省を通じて資金拠出したもので、国民総幸福量委員会(GNHC)が支援した。

JNWSFLはDHIのイノテック部により管理運営される。他の標準ファブラボはDHIを戦略的調整機関としたうえで、各機関がそれぞれ管理運営を担う。

土曜日の開所式から1日はさみ、週明け月曜日のクエンセルが、第1面でこの発足式について取り上げていた。BBSの報道が王子殿下の初の公務の方にもかなりウェートを置いた報じ方をしていたのに対し、クエンセルはJNWSFLと「ブータンファブラボネットワーク」というのに重きを置いた報じ方になっている。

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「ファブラボ・マンダラ」あってこそ [ブータン]


6月4日(土)、ジグミ・ナムゲル・ワンチュク・スーパー・ファブラボ(JNWSFL)がティンプー・テックパーク内にオープンした。当日の開所式には、王子様が主賓として招かれ、王子様として初めての公務を無事に果たされた。

JNWSFLの概要については、機会があればまた紹介したいと思う。当日の会場の様子を報じたBBSの動画でも、ドルックホールディングス(DHI)のウジュワルさんがインタビューで結構語っているし、動画でもなんとなくJNWSFLの雰囲気は伝わると思う。まあ、いずれご紹介します。

僕もJNWSFLの開所式に列席したが、2017年7月のファブラボ・ブータン(現ファブラボ・マンダラ)の開所式も目にした僕にとっては、一種のデジャブだった。時の首相の列席。黒色のスタッフTシャツ。スタッフは皆輝く顔で、陳列される新しい機械の操作を嬉々として来賓に説明する。来賓はよくわからないけどなんだかすごいことをやってくれてる、これこそブータンの未来だ、頑張ってほしいと納得顔で笑う。どれも5年前にあった話である。

陳列されている初期の試作品の中に、PETボトルからPETフィラメントを再生する簡単な装置があった。3Dプリンターや小型CNCの試作品も展示されていた。PETフィラメント生成装置は、いずれJNWSFLとDHI傘下の3つのファブラボには標準装備されるという。

IMG_20220604_112643.jpg

で、これらの試作品、JNWSFLのスタッフが作った。それは間違いない。でも、必ずしもJNWSFLのスタッフが独自にアイデア出しから企画立案して、製作したというわけではない。ファブラボ・マンダラが今ホストしている6カ月間のものづくりブートキャンプ、「ファブ・アカデミー」に、DHIから派遣されている受講者が、グループワーク演習の一環として試作したものが含まれている。

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『朝の歓び』(上下巻) [読書日記]

新装版 朝の歓び(上) (講談社文庫)

新装版 朝の歓び(上) (講談社文庫)

  • 作者: 宮本輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: Kindle版
新装版 朝の歓び(下) (講談社文庫)

新装版 朝の歓び(下) (講談社文庫)

  • 作者: 宮本輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: Kindle版
内容紹介
【上巻】妻を亡くした良介は、会社を辞めたことを子供たちに告げないまま旅に出た。昔愛した日出子の故郷を訪ねて再会した二人は、彼女が学生時代に旅行先で出会った少年の成長を確かめるためにイタリアへと旅立つ。それは良介にとっては父親と喧嘩して出奔しローマで暮らす兄と再会するための旅でもあった……。
【下巻】ボタンのかけ違いでもう会わないと決めた良介と日出子。親友の内海から愛人が妊娠したという相談を受け、ゴルフの師と仰ぐ大垣老人からは思いがけない過去を打ち明けられる。亡き妻に似てきた娘、登校拒否の息子、そして別れた二人の思いは? 人生における朝と夜、人間の幸福について問う傑作長編小説。
【Kindle Unlimited】
久しぶりに宮本輝でも――と思い、Kindle Unlimitedで選んだのが本作品。平成4年(1992年)9月から日本経済新聞紙上で1年間連載されていたらしい。どうりで、携帯電話があまり登場しない。私室に電話を引く引かないのとか、公衆電話のシーンも良く出てくるし、留守電も多用されている。そういうところには時代を感じる。

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研修は、1カ月で終わりました [ブータン]


この技能研修、注目してたんですよね。3月末にブログでもご紹介した際、募集案内には「2カ月」と書いてあった。3Dプリントの研修に2カ月は時間かけすぎやろと思ったので、シラバス入手できないものかと少し手をまわしたが、入手できなかった。でも、2カ月で募集をかけておきながら1カ月で修了させるって、そもそもシラバスがあったのかどうかも疑わしい。

そんな研修が、チュメ職業訓練校で5月27日に修了式を迎えたと報じられたわけだけれど、お詫びや訂正があるわけでもなく、淡々と修了したことだけが報じられている。僕もこんなに早く終わるとは思っていなかったので、ティンプーの知人から「Facebookにこんなの出てますよ」と知らされるまで、修了式の話はまったく知らなかった。

理由は何だったんでしょうかね。5月16日の労働人材省Facebookページには、同じような3Dプリントの研修を、ゲレフのジグミワンチュク電気訓練所(JWPTI)で行うとして、5月26日を応募締切日に募集開始するとある。研修開始は6月15日だそうだ。これもまた急な話だ。JWPTIは6月4日にファブラボを開所するので、それとの関連かもしれない。ただ、開所するためのファブラボJWPTIの代表者は現在ティンプーで研修中で、少なくとも6月いっぱいはその研修自体が終わらない。この代表者が不在の状態で、ファブラボを会場として提供してやっちゃうのだろうか。そしてその時のインストラクターは、チュメでのお仕事を終えられた韓国人のシニアの方なのだろうか。

5月31日、たまたま労働人材省の技術訓練局に伺う機会があったので、訊いてみた。元々JWPTIは同省傘下の職業訓練校で、今度ファブラボができて3Dプリンターが6台入る。さらに今後はここで3Dプリントの常設コースも開設するので、それに向けてさらに3Dプリンターが追加で導入され、15台ぐらいになるらしい。また、ファブラボの担当者が6月末まで不在なのも承知していて、6月15日からの研修をリードするのは、チュメ校と同じ韓国人のインストラクターなのだそうだ。

また、シラバスはちゃんとあるらしく、ショートリストに上がって外国人インストラクターからシラバス提供を求めて、それを評価してインストラクターを誰にするかを決めるらしい。外国人にこだわる理由は不明だが、欧米人だと人件費が高くつくので、韓国人やシンガポール人、タイ人、フィリピン人あたりが候補なんだとか。日本人も高いと言われた。

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