『三十光年の星たち』 [読書日記]
内容紹介【購入(キンドル)】
【上巻】彼女にも逃げられ、親からも勘当された無職の青年、坪木仁志は謹厳な金貸しの老人、佐伯平蔵の運転手として、久美浜に向かった。乏しい生活費の中から毎月数千円ずつ32年に渡って佐伯に返済し続けた女性に会うためだった。そこで仁志は本物の森を作るという運動に参加することになるのだが──。
【下巻】十年後も十光年先も、百年後も百光年先も、百万年後も百万光年先も、小さな水晶玉のなかにある。──与えられた謎の言葉を胸に秘め、仁志は洋食店のシェフとして、虎雄は焼き物の目利きとして、紗由里は染色の職人としてそれぞれが階段を着実に登り始めた。懸命に生きる若者と彼らを厳しくも優しく導く大人たちの姿を描いて人生の真実を捉えた、涙なくしては読み得ない名作完結編。
冒頭で少し個人的なことを書いておくと、先月末、滞在先のホテルのカフェテリアで、朝食時に不注意からちょっとバランスを崩し、右胸を1人掛けの椅子の肘掛けで強打した。ぶつけた瞬間、肋骨やっちゃったかもと思った。それから1週間は痛みはあったものの、我慢できないわけではなかった。
それが、気温が下がってきたのが良くないのか、先週土曜日は朝起きた時から患部の痛みがひどく、ベッドから上半身を起こして立ち上がったり、しゃがんだりするのもつらかった。それでも土曜日は午前中は仕事をなんとかこなしたが、午後はフリーになれたので、宿舎に直帰して、そのまま横になって安静にすることにした。日曜日も同様で、外出もせず、多くの時間を横になって過ごした。
こういう状態だったので、この週末は仕事のことはこれ以上せず、横になって小説でも読むことにした。こういう場合の小説は、こと2021年に限っては年明けから宮本輝作品を優先的にセレクトしている。上下巻といった具合に長編が多いので、土日かけて計600頁超というボリュームを一気に読み進めてそれで時間をやり過ごすにはちょうどよい。
9月に『いのちの姿 完全版』という随筆集をご紹介したが、この随筆は京都・高台寺にある料亭『和久傳』の女将に依頼されてこの料亭の発刊する雑誌に寄稿したものを集めていた。この和久傳の女将というのが、本日ご紹介の作品の上巻で登場する、「乏しい生活費の中から毎月数千円ずつ32年に渡って佐伯に返済し続けた女性」のモデルらしい。