『蓮如文集』 [家族]
内容紹介【購入】
おふみとも御文章ともいわれるこの文集は、蓮如(1415-99)が、親鸞の教えを手紙の形で易しく述べたもの。寺内で逼塞していた蓮如は、その期間を十分な研鑽にあて、のち本文集を拠り所として活発な布教活動を行ない、本願寺を一大教団に作り上げた。耳馴れた「朝には紅顔ありて夕には白骨となる身なり」の一文もこの中にある。
3月末に父が亡くなってから、実家での滞在中は自分自身でお勤めを行う機会が増えた。正信偈や和讃はこれまでも何度か読んできているからよいが、御文に関しては、実家の御文箱に入っていた御文集を開けると漢字以外はすべてカタカナで表記されていて、カタカナ表記の文章の音読などほとんどやったことがなかった僕は、御文集を読むのに大苦戦した。
それがきっかけとなって、少し御文を朗読する練習を積もうと考え、前にも大谷暢順『蓮如〔御文〕読本』を読んだりもしたのだが、この本は原文よりも原文の解釈と著者による語りが長く、分厚い割には収録されている御文の五帖の数編に限定されていて、読み切るのにものすごい時間がかかった。
それに比べると、岩波文庫から出ている本書は、校注者による注釈は控えめにして徹底的に原文を掲載している。その数は、帖内に含まれるもの含まれないものを合わせると78通にも及び、しかも原文のカタカナはひらがなに変換されている。朗読もしやすいし、行間が広めにとってあるので、ページをめくっていくペースもある程度早く行ける。第三者による講釈を聴くよりも、先ずは自分自身で原文を味わってみようという人には、本書の方がおススメかもしれない。
ただ、どういう基準でこれら78通が選ばれたのかはよくわからない。蓮如の御文は全部で二百数十通あると言われ、帖内御文だけで80通にもなる。たぶん、実家の御文箱に収められている御文集はこの五帖御文だろう。なので、僕が知っている有名なのでは、「白骨の章」しか本書には収録されていない。果たして、これの朗読で舌慣らししたら、実家の御文集を読めるようになるのかどうかは、正直自信はない。