『偉い人ほどすぐ逃げる』 [読書日記]
内容紹介【購入】
「このまま忘れてもらおう」作戦に惑わされない―――。
偉い人が嘘をついて真っ先に逃げ出し、監視しあう空気と共に「逆らうのは良くないよね」ムードが社会に蔓延。「それどころではない」のに五輪中止が即断されず、言葉の劣化はますます加速。身内に甘いメディア、届かないアベノマスクを待ち続ける私……これでいいのか?このところ、俺は偉いんだぞ、と叫びながらこっちに向かってくるのではなく、そう叫びながら逃げていく姿ばかりが目に入る。そんな社会を活写したところ、こんな一冊に仕上がった。(「あとがき」より)
赴任国での到着後の隔離生活も今日で21日。三度目の週末を迎えている。退所は明後日らしい。体調には異常はない。これまで二度PCR検査を受けたが、いずれも陰性だった。
さすがに分厚い古典(『森の生活~ウォールデン』のこと)と格闘していると、気分転換的に同時並行でもう少し読みやすい本が欲しくなった。そんな時に、Yahooのコラムで、ライターの武田砂鉄さんが東京五輪の問題に絡めて本書のことを紹介されていたので、てっきり東京五輪フォーカスの話だろうと思ってキンドルでダウンロードしてみた。
実際のところは、版元の文藝春秋の月刊文芸誌『文學界』で、2016年から連載されていた「時事殺し」というコラムを1冊にまとめたもので、テーマも東京五輪の話ばかりではなかった。著者が冒頭述べているが、こうして書いてきたコラムを横串しで見直してみて、共通するメッセージこそが本書のタイトル「偉い人ひどすぐ逃げる」なのだという。
国家を揺るがす問題であっても、また別の問題が浮上してくれば、その前の問題がそのまま放置され、忘れ去られるようになった。どんな悪事にも、いつまでやってんの、という声が必ず向かう。向かう先が、悪事を働いた権力者ではなく、なぜか、追求する側なのだ。(中略)
わざわざ重言で記すが、疑惑を疑う、という当たり前の行為が、やたらと過激な行為として受け取られ、そういった言葉を向ける様子に、よくぞ言った、勇気があるよね、なんて評定が下される。(「はじめに」より)