SSブログ

『軍師の門』(下) [読書日記]

軍師の門 下 (角川文庫)

軍師の門 下 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
有岡城から生還した黒田官兵衛は、竹中半兵衛の死を知ると同時に、その遺志と豊臣秀吉の軍師の座を引き継ぐ。稀代の謀略家として恐れられる一方、信義を重んじ、敵将からも信頼される官兵衛。しかし秀吉は、おのが権力が強大になればなるほど、彼を恐れ、遠ざけてゆくのだった。秀吉亡きあと、官兵衛(如水)は、はじめて自らの野望を関ヶ原に賭すが―男たちの戦国絵巻を圧倒的スケールで描く傑作歴史長編。
【コミセン図書室】
上巻に続き下巻もご紹介する。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』はいよいよ今週末が最終回、本能寺の変が描かれる。でも、事前報道によると、黒田官兵衛役を濱田岳クンが演じるというので話題になっていて、羽柴秀吉による備中高松城水攻めから中国大返しのシーンもちょっとだけ描かれるのかなという期待がある。濱田岳クン、以前の大河ドラマ『軍師官兵衛』では官兵衛側近の栗山善助役だった。今回、それが官兵衛役に「昇格」したというので話題になっているのだ。

そういうタイミングなので、あえて戦国ものの歴史小説。金曜夜から読み始めて、土曜夕方までには読了した。元々、この時代を扱った歴史小説としては、今のところは司馬遼太郎の『播磨灘物語』がいちばん好きだという人間なので、黒田官兵衛主人公で、信長・秀吉・家康の天下人三代を客観的に捉えている作品が自分にはフィットしていると思っている。ましてや光秀の行為が第三者の目線からはどう映るのかを考えてみるのも面白い。

そういう意味で、今『軍師の門』上下巻を読めたのは良かったと思う。官兵衛の描き方が、作者によって大きく変わるところは稀で、結局誰が描いたとしても、「天下」が目の前にちらついて以降の秀吉が変わってしまって、それで官兵衛が遠ざけられるという展開には大きな差はないかもしれない。だが、本作品は前半の竹中半兵衛が主人公で官兵衛が半兵衛の遺志を継ぐというストーリー展開があるので、最後の九州平定戦の手じまい方のところに半兵衛を夢の中で出してくるという、ちょっとだけひねりが加わっている。本当にそうだったのかは今となってはわからないけれども、そういうところで作家のオリジナリティを出しているように思える。

それに、黒田官兵衛目線で描いているので、蜂須賀小六とか、羽柴秀長とか、安国寺恵瓊とか、小早川隆景とか、なかなか主人公になりにくい人々もうまく活写できていると思う。大河ドラマになるとどうしてもキャストから落とされてしまうことが多い人々も含まれるので、そういう人々にも光を当てる描き方には、上巻同様に好感が持てた。

さあ、こうして現実逃避的に小説を1冊読み切ったので、今週末の残りの時間は、もうちょっと時事ネタや実用書を狙っていきたいと思う。勿論、大河ドラマの最終回は、しっかり観させてもらうつもり。


nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ: