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再読『面白いほどよくわかる浄土真宗』 [家族]

【我が家の蔵書】
「再読」と付けた通り、実はこの本、今からちょうど10年前に一度読んでいる。その時に既にブログで紹介記事を書いているので、改めて紹介するのも変なのだが、年末から年始にかけて自分が有していた問題意識からすれば、今の方が確認しておきたいことが多く、またこういう解説書が手元にあって中に何が載っているかを知っておくだけでも結構心理的余裕はあるなという気持ちにはなれる。少し前にご紹介した『正信偈入門』と比べてもやはり入門書としての度合いは高く、『正信偈入門』を読んだ後だけに、今回のこの浄土真宗入門書はよりわかりやすいと感じた。

ついでに言うと、こういう入門書が既に我が家の蔵書として存在していたのに、なんで新たに別の書籍を買っちゃったんだろうかという反省の念も、頭の中を渦巻いているところだ。

当然、こういう関心を持ってしまったら、次は近所でもっと学ぶ機会はないのだろうかということになっていくのだけれど、10年前の記事でも触れた近所の真宗大谷派のお寺はなんだか入りにくそうで、一般門徒への開放はなされていない印象が強い。一度だけ地元でお世話になった先生の葬儀への参列で境内に入ったことはあるが、同じ宗派としての親近感を感じたことはない。また、そのお寺の隣りになんとか葬儀社というののお店が立っているが、そこで真宗大谷派勤行集(赤本)や蓮如上人の御文集はあるかと訊いてみたところ、「なにそれ?」という反応が店員の方から返って来た。宗派も問わず、葬儀のためだけにお寺やお店は存在しているのか? ちょっと驚いてしまった。

本書には真宗ゆかりの関東の名刹が列挙されているが、親鸞が滞在してその高弟が布教に務めた茨城の寺院はいっぱい出てくるが、東京の寺院は全然紹介されていない。本書を読んで関心を持った人が、次のステップとして何にどうアプローチしていったらいいか、ヒントなりとも書かれていると良かったのだが、なにぶん13年も前の本に今頃注文付けたってどうしょうもない。

タグ:正信偈 親鸞
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『インドの経済発展と人・労働』 [インド]

インドの経済発展と人・労働: フィールド調査で見えてきたこと

インドの経済発展と人・労働: フィールド調査で見えてきたこと

  • 作者: 木曽順子
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 単行本
内容紹介
発展著しいインド経済。それにより労働者の多様性は一層鮮明になってきた。生活まで踏み込んだフィールド調査でその実態に迫る。
【会社の図書室】
この本は、会社の図書室から借りて読んだものだが、実はそもそも会社の図書室に入れた張本人は僕である。2012年に大学院の指導教官から読むように勧められたので購入したのだが、2012年度末をもって僕はその大学院を自己都合退学した。インド駐在を2010年6月に終えて帰国して、しばらくは細々とでもインドと関わるようなことを、仕事でもプライベートでもしてきていたのだが、この大学院退学をもって完全にインドと関わる機会を失った。そんな中で、本書を読もうというモチベーションも起こらず、僕自身がキープしておくよりも他の人にも読んでもらえるようにしておいた方がいいと考え、図書室に寄贈した。

当然ながら、指導教官にも大変申し訳ないことをしたと思っている。既に退官もされて5年が経過する。先生の最後の弟子として期待をかけていただいていたのに。その後取り組んできたことを上手く組み合わせれば博士論文にまで仕上げることも可能かもしれないが、先生が退官されて以降、母校で僕の研究したいテーマで指導して下さる先生もいらっしゃらないため、どうしようか思案中である。とはいっても今自分が論文にまとめたいと思っているテーマは必ずしもインドがフィールドではないため、参考文献として本書を用いることはないと思う。

本書を購入した当時の僕の関心は、「インド北部から南部への人口移動は起こり得るのか」ということだった。例えば、ウッタルプラデシュ州やビハール州の貧困世帯なら、おそらく出稼ぎ労働者の行き先はデリーやコルカタ、ムンバイなどなんだろうが、それがバンガロールやチェンナイ、ハイデラバードあたりまで出稼ぎに行くような人はいるのだろうかということだった。今回本書を読んでみたけれど、その著者のフィールドはグジャラート州アーメダバードらしいので、2012年の購入直後に本書を読んでいたとしても、当時の僕にとって参考になったかどうかはかなり怪しい。

では今はどうか。今の僕の関心は、「オディシャ州やテランガナ州からムンバイ、アーメダバード方面への人口移動」である。そして、実際にこれらの州から出稼ぎに行った労働者が、どういう環境で生活し、どんな仕事を得ているのかということだった。それは、僕が2017年からプロボノで関わっている某財団法人が抱えているインド事業の文脈での話である。

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『SDGs――危機の時代の羅針盤』 [持続可能な開発]

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

SDGs――危機の時代の羅針盤 (岩波新書)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/11/21
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
地球の再生能力を超えない持続可能な世界を目指すゴールとターゲット。2030年の期限まで10年を切り、貧困や格差、環境破壊等の慢性的危機に加え、パンデミック危機の今その真価が問われている。日本政府の元交渉官とNGO代表とがSDGsの概要、交渉秘話、実践と展望を紹介する。21世紀を生き抜く知恵の宝庫がここに。
【購入】
年末年始を東京で過ごすことになったため、年末に新書をまとめ買いした。その中の1冊で、昨年夏頃から断続的に続いているSDGsに関するお勉強の一環だ。

僕自身も、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の策定プロセスを横目でウォッチしていた時期があるため、その策定プロセスで日本政府の首席交渉官を務めておられた南大使と、同じく市民社会代表として日本政府への申入れや他国の市民社会組織との連携の先頭に立っておられた稲場氏が、それも共著で本を出されたと知り、是非読んでみたくなった。特に、南大使のSDGs国際交渉回顧録は、僕らのようななかなか国際交渉の場を体験することができない人間にとっては歴史的価値がある文書だと思う。環境分野ではなく、貧困削減レジームの下でミレニアム開発目標(MDGs)の達成に取り組んできた開発協力の業界の人にとっては、待ちに待った1冊であり、そしてSDGsを扱った類書の中で、最もしっくりくる内容なのではないかと思う。

類書の多くは、気候変動対策を特に重視した内容だったり(結果的に貧困削減への取り組みやいわゆる「5つのP」のうちの「平和(Peace)」の文脈ではほとんど何も述べていなかったり)、企業にとってのビジネスチャンスという視点があまりにも前面に出過ぎていて、政府やNGO/NPOの取り組みどころか、地方自治体の取り組みへの言及すら薄かったりして、僕らは何だか「取り残されて」しまった寂寥感を覚えていた。

そんなところに真打ちとして登場された本書は、「いやいやそんなことはない、今でも貧困問題や平和構築は重要なアジェンダだし、民間資金がなかなか向かわない分野では公的な資金の役割も大きい」と勇気づけてくれそうな1冊になっている。思うに、SDGsの解説書は、自分がどういう立場でSDGsと向き合っているのかによって、どれを読んだらいいのかが変わってくる。会社勤めの方にはやっぱりその方々に向いた解説書が存在する。僕らの業界の読者にとっては本書だということなのだろう。

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『青が散る』 [読書日記]

青が散る (1982年)

青が散る (1982年)

  • 作者: 宮本 輝
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/01/11
  • メディア: -
内容紹介
燎平は、新設大学の一期生として、テニス部の創立に参加する。炎天下でのコートづくり、部員同士の友情と敵意、勝利への貪婪な欲望と「王道」、そして夏子との運命的な出会い―。青春の光あふれる鮮やかさ、荒々しいほどの野心、そして戸惑いと切なさを、白球を追う若者たちの群像に描いた宮本輝の代表作。退部を賭けたポンクと燎平の試合は、三時間四十分の死闘となった。勝ち進む者の誇りと孤独、コートから去って行く者の悲しみ。若さゆえのひたむきで無謀な賭けに運命を翻弄されながらも、自らの道を懸命に切り開いていこうとする男女たち。「青春」という一度だけの時間の崇高さと残酷さを描き切った永遠の名作。
【コミセン図書室】
新成人の皆さん、おめでとうございます!
今日は成人の日である。既に自分の子どもたちのうち、成人式を控えているのは1人を残すのみなので、成人の日だからどうだというのは特にはないのだけれど、たまたま読了した宮本輝作品が新成人を迎えるような若者たちを描いたものだったから、本日のご紹介はこれにさせて下さい。

『別冊文藝春秋』で1978年夏から82年夏まで連載され、82年には単行本化された作品で、83年秋にはテレビドラマ化もされている。作品の舞台はもっと昔、大学紛争があった60年代末だった。ドラマのイメージで東京のお話なのかと思っていたが、原作読んでみたらどうやら作者の通っていた追手門学院大学が舞台で、登場人物はほとんどがこてこての関西弁を話す。また、時代が大学紛争の頃だからといって、そういう空気はほとんど感じさせない。なにしろ出てくる学生が真面目に授業に出て勉強しているというシーンがほとんどないのだから。

作品の舞台と発表時期との間に10年近い時差があるわけだけれど、それほどの時差は感じなかった。それどころか、この作品が単行本化され、僕が大学入学した1982年頃にもこういう空気は残っていた。僕が大学に上がる頃の話だと言われても何の違和感もない。

それだけに、この作品を読んで思ったことがある。単行本が出た直後にこの作品と出会っていたら、僕の大学生活はどう変わっていたのだろうか―――。

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『正信偈入門』 [家族]

正信偈入門

正信偈入門

  • 作者: 早島鏡正
  • 出版社/メーカー: 法藏館
  • 発売日: 2019/08/09
  • メディア: 単行本
内容紹介
親鸞が浄土真宗の教えを120句にまとめた「正信念仏偈」について、幅広い仏教研究の成果をもつ著者が読み解き、その肝要を解り易く説く。現代語訳と詳細な語註が付された入門書。
【購入】
前回、読書に関する2021年の目標について述べた際、その3つ目の項目として、「わけあって、浄土真宗に関する文献を読む」と書いた。今回はその第1弾。

どんなわけがあったかというと、実家の祖母が2002年に亡くなって後、父が続けてきた勤行を、僕がやることになったからである。祖母の後、父は十数年、朝のお勤めを続けてきた。しかし、70代も後半になると、膝を痛めて正座もすることがままならず、たまに僕らが帰省しても、父がお勤めをしているのを見かけたことが無くなった。歩かなくなったので体重が増え、それで余計に歩けなくなっていった。

その父が、先月中旬、急に具合が悪くなって、一時は寝たきりになった。意識も混濁して、すは認知が始まったかと僕らも観念したことがあった。新型コロナウィルス感染拡大の状況の中、あまり褒められたこととは思えないが、母が1人で老老介護をやって共倒れになるリスクも高まったため、やむにやまれず帰省して、年末年始を父に過ごしてもらえるショートステイ先をなんとか確保し、介護初期の交通整理をしてきた。

時は年末、大掃除の時期である。母からは仏壇の掃除もやらねばならぬと言われ、同じく実家に顔を出してくれた弟とともに、仏壇と仏具の掃除をやった。その際、父には車椅子に乗った状態で監督をしてもらった。

掃除が済めばお勤めだ。『真宗大谷派勤行集』を手に取り、『正信偈』と『和讃』を読誦し、蓮如上人が著したといわれる『御文』を読む。これまで祖母が務め、その後は父が務めてきたリード役は、父が車椅子なのでできない。よって子どもの頃からよく勤行集を読んでいた僕が、その役を務めることになった。

大変だった。

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2020年の読書まとめ [備忘録]

2020年の読書メーター
読んだ本の数:207冊
読んだページ数:53165ページ
ナイス数:1061ナイス

207冊! 久しぶりの年間200冊越え。頑張ったなぁ。

まさか1年間ずっと日本にいられると思わなかったが、コロナの巣ごもりを利用して、長年積読状態だった洋書だの専門書だのを片っ端から通読することができた。読書メーターで長年、「読みたい本」リストに挙がっていた文献についても、入手困難なものには見切りをつけてリストから外す措置をとり、借りられるものは図書館で借りて、とにかくリストの圧縮に努めてきた。

新たに蔵書に加わったものや、読みたい本リストに加わったものがあるため、見かけの冊数はあまり変わっていないが、長年リストに残っていて橋にも棒にもかからぬ本は、かなり減ったと思う。いわば、読書管理リストの大掃除だった。

わりとすっきりした状態で新年を迎えたが、今年の目標は以下の通りだ。

1.『国富論』(アダムスミス)や『資本論』(マルクス)など、なるべく古典を読む。

2.インドを含むアジアの開発問題に関する文献を重点的に読む。

3.わけあって、浄土真宗に関する文献を読む。

4.小説では、宮本輝、垣谷美雨作品は重点的に読む。SFとして藤井太洋作品に挑戦する。


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『新興アジア経済論』 [時事]

新興アジア経済論――キャッチアップを超えて (シリーズ 現代経済の展望)

新興アジア経済論――キャッチアップを超えて (シリーズ 現代経済の展望)

  • 作者: 末廣 昭
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/07/30
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより) グローバル化、経済自由化、IT革命…国際環境は大きく変化している。その動向を追いながら、中国の台頭、域内相互依存の深化、「中所得国の罠」、人口動態や国内格差といった社会問題にも着目して、従来の「キャッチアップ型工業化論」を刷新する。
【会社の図書室】
著者が2000年に『キャッチアップ型工業化論』という本を出された直後、僕は当時通っていた大学院で、この本をテキストに使った講座を履修したことがある。僕は1980年代後半に別の大学で学生をやっていた当時、当時一世を風靡していた「雁行型経済発展論」を少しかじったことがあるので、それとどこが違うんだ最初からこの講座で批判的な発言をして、担当教授を激怒させ、途中から講義室に行かなくなった。その後、「大いなる収斂」のような主張も出てきていて、平均で見た場合の国家間の格差は収斂してきていて、見た目はキャッチアップが進んでいるようであり、なおのこと「キャッチアップ工業化とは何だったのか」がわからなくなりつつあった。

その提唱者が、2014年に、サブタイトルに「キャッチアップを超えて」と付された新たなアジア経済論の本を出された時、早く読もうと思った。でも、近隣の市立図書館には所蔵されておらず、いきなり買って読むほどには僕も勇気がなく、躊躇している間に5年半が経過してしまった。その間に、SDGsは制定され、気候変動対策がかなり前面に出てきた。アジアが生産面でも消費面でも世界経済を牽引しているという認識には異論はないが、今のような状況になってくると、世界経済を牽引しているアジア地域で、新興国やASEAN諸国が、気候変動対策にどう取り組んでいくのかには関心もあるが、本書の発刊ではそこまでは言及されていない。その点では少し古さも感じるし、本書発刊後に各国で行われたであろう人口センサス等の統計を踏まえて、何が変わってきているのか、アップデートするような新たな文献には触れる必要があるかもしれない。

とはいえ、自分の理解を現在にまでアップデートしていくためには、2014年時点でのアジアのスナップショットを、ベースラインとして理解しておく必要はあると思う。本書で出てくる大泉『老いていくアジア』や『消費するアジア』は、発刊直後に一度読んでいて、アジアの高齢化や中所得者層の台頭については、それなりの理解はしてきたつもりだが、そういうのも全部まとめて、一度整理したい。そういうニーズには本書は応えてくれる良書だと思う。

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『カイゼン・ジャーニー』 [仕事の小ネタ]

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
ITエンジニアとしてSIer企業に勤務する江島は、問題だらけのプロジェクト、やる気のない社員たちに嫌気が差していた。そんな中、ある開発者向けイベントに参加したことがきっかけで、まずは自分の仕事から見直していこうと考える。タスクボードや「ふりかえり」などを1人が地道に続けていると、同僚が興味を示したため、今度は2人でカイゼンに取り組んでいく。ここから、チームやクライアントを巻き込んだ、現場の改革がはじまる。チーム内の軋轢、クライアントの無理難題、迫りくるローンチ…。さまざまな困難を乗り越え、江島がたどり着いた「越境する開発」とは。

【市立図書館MI】
この本は発刊当時から話題になっていたが、去年2月に三省堂書店神田本店に行った時にも1階の新刊書/ベストセラー書のコーナーで平積みになっており、一瞬購入したくなったことがある。今から思えば神田・大手町周辺にはソフトウェア開発をやってそうな企業が集積しているエリアだから、神田の書店街でこういうタイプの本の需要がそこそこあるのだろう。

この本が僕が住む市の公立図書館に所蔵されているのを知ったのは1カ月ほど前のこと。少しだけ待たされた後、先月下旬に借りることができた。ざっと読んでみたものの、カタカナや英語の略語が頻出して、読んでいて序盤で嫌気がさしてきた。「カイゼン」という言葉に惹かれて借りてみたものの、内容的にはソフトウェアのアジャイル開発の話で、それをやってない、というかやったこともない僕のような読者には、そもそもその横文字の意味すらわからず、読むのが時間のムダだとすら感じてしまった。

でも、断っておくが、本書の内容が良くないと言っているわけではない。こういう仕事をしていて、こういう横文字を日常職場で使っておられるような読者にとっては、腑に落ちるところが多い良書であろう。そのことはアマゾンでも読書メーターでも、多くの評者がポジティブに評価しているのでわかる。問題は読者である僕自身にあったように思う。

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『小さな地球の大きな世界』 [持続可能な開発]

小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2018/07/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
プラネタリー・バウンダリーは、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の基礎となった概念です。著者のロックストローム博士はこの概念を主導する科学者グループのリーダーであり、本書はSDGsをより深く理解するのに役立ちます。私たちは、地球上の自然には限りがなく、それを使ってどこまでも豊かになれると誤解してきました。しかし、人類の活動の爆発的な拡大により地球は限界に近づき、増え続ける異常気象、生物種の大量絶滅、大気や海洋の異変など、地球は私たちに重大な警告を発しています。いまこそ、地球環境が安定して機能する範囲内で将来の世代にわたって成長と発展を続けていくための、新しい経済と社会のパラダイムが求められています。本書は、科学的なデータと美しく印象的な写真を用いて地球の状況を示したうえで、人間と自然の関係を再構築するプロセスを提示し、その実現への励ましを与えてくれます。
【コミセン図書室】
実は、本書は12月にコミセン図書室で借りて、返却期限までに読み切れずに2週間の延長手続きを取り、それで年末までには読み切っていた本である。本書刊行の経緯については監修者の1人が本書の冒頭で語っておられるが、2015年に出た原書がいい本だから、日本の読者にも紹介したいと考えた石井菜穂子氏が、訳本刊行への協力をIGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)に打診し、IGESの首脳陣がそれに乗ったということだったらしい。

でも、できれば原書同様、電子書籍版も作って、書籍版よりも安く販売して欲しかったとも思う。メッセージとしてはいい本なんだけれど、税別で3,200円という価格は高すぎ。美しい写真や示唆に富んだカラー図表を何点も挿入するために上質の紙を使って印刷されているからなのかもしれないが、これに3,200円は出せないなぁ。取りあえず通読した上で、必要ならコミセン図書室で再び借りることにしよう。

SDGsについては多くの解説書が書店の棚を賑わせているが、理論的支柱にまで踏み込んだ解説書はあまり多くない。企業にとってのビジネスチャンスだ主張する本では、SDGsの理論的支柱と言われた「プラネタリー・バウンダリー」にまで言及していないことが多い。僕も最近はSDGsについて人前で話す機会が少しあり、それが昨秋あたりからSDGsの解説書を文献リサーチする動機となっているが、この際だからプラネタリー・バウンダリーについてまるまる1冊扱っている文献でも読んでみようかと思い、本書を手に取った。

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『プロトタイプシティ』 [仕事の小ネタ]

プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション (角川書店単行本)

プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション (角川書店単行本)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/07/31
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
産業の中心は「非連続的価値創造」にシフトした―。現代は「プロトタイプ」、計画を立てるよりも先に手を動かして試作品を作る人や企業が勝利する時代となった。そして、プロトタイプ駆動によるイノベーションを次々と生み出す場「プロトタイプシティ」が誕生し、力を持った。その代表が中国の深圳である。深圳の成功理由から、個々人の新時代への対応方法まで、執筆陣が徹底開示する!

「まず、手を動かす」
――今年はこれにこだわってみたいと思う。

ソフトウェアの開発手法のモデルには、ウォーターフォールとアジャイルという2つの大きな潮流があるらしい。でも、中国のは違う。「アドホックモデル」とか「ビルド&フィックスモデル」とか呼ばれ、「とりあえずプログラムを組んでみる。そこで問題があれば改善する」というやり方だという。工程分割も開発方向修正を巡る密なコミュニケーションもひとまず措いておき、まず作る、拡張性や保守性は二の次でいい、とにかく作ってみるという発想らしい。

 頭でっかちな計画を立てるよりも、手を動かす中で正解を探していくプロトタイプ駆動。そのプロトタイプ駆動をより効率的に行うために必要なコミュニティが、新興国など新たな都市に芽生えている。プロトタイプ駆動とその実践の場、すなわちプロトタイプシティの時代が始まっている。――あとがき(p.251)

企画書を書くよりも作ったほうが早いからです。頭の中にあるものを他人にわかるように説明するコミュニケーションコストは、かなり必要です。ならば、まずは試作品を作り、それを見せたほうがわかってもらえます。いくら言葉を重ねても伝わらないものが、見れば一瞬で理解できるようになるわけです。自分の場合は、ユニティを使い、とりあえず動作するでもプログラムを作ってしまいます。それが企画書代わりになるわけです。まずは、手を動かしたほうがいい。――第5章でのGOROmanさんの発言(p.232)

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