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再読『初秋』 [ロバート・パーカー]

初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1988/04/01
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。―スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。スペンサー流のトレーニングが始まる。―人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。

あるブロガーの方が8月頃にロバート・B・パーカーの「私立探偵スペンサー」シリーズの名作『初秋』の表紙の写真を載せておられたのを見て、久しぶりに『初秋』を読んでみたくなった。僕のブログを読まれている方には意外かもしれないが、僕は1980年代から90年代にかけて、パーカーの作品はハヤカワ・ミステリーシリーズから新刊が出るたびに購入して読むというぐらいの大ファンで、その中でも「スペンサー」シリーズの『初秋』(原作初出1981年)と、独立系の作品『愛と名誉のために』(原作初出1983年)の2作品を推していた。この2作品は、ペーパーバックで原作も読んだし、訳本も数回にわたって読んでいる。

そして、SSブログでも、前回『初秋』を読んだ時の記事が書かれている。11年前の秋のことだ。
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2009-11-16

その時に書いた記事で本作品の概略はご理解いただけると思う。今回11年ぶりに再読してみて、僕が歳を重ねたことや、その間の読書遍歴の厚みもあって、前回気付かなかった新たな発見もあった。蔵書も読了後ただ単に書棚の肥やしにしておくだけでなく、ある程度間を置いて読み直してみると、その都度その都度新鮮な発見があって、いい読書体験になるなぁと改めて思った。

1つは、スペンサーの語り口。おしゃべりなだけでなく、一見すると意味不明の発言が時々飛び出し、聴いている側が「は?」みたいな聴き直しをしているシーンがある。年齢とともに口が重くなってきたことを痛感している昨今、これだけの会話は妻との間であってもなかなか成立させるのが難しくなってきた。会話の内容とテンポ、そして、スーザンに語りかける「甘~い」言葉の数々、これらを思い出すために、もう少しこのシリーズは読み返してもいいかなと今回思った。

2つめは、スペンサーは読書家で、スポーツ観戦や演劇鑑賞なども頻繁にしていることから、その体験から得られた知識をその語りの中でひけらかすシーンが度々出てくる。これは僕ら読者の知識量を試されている部分もあって、米国で長く住んでいればわかる話もある一方、本を沢山読んでいないと絶対に語れないような比喩も多い。

今回の気づきは、スペンサーがポールを連れて行って始めた森の中での生活で、ソロー(ヘンリー・ディビッド・ソロー)に一瞬言及するシーンがあったことだ。前回までの読書では読み飛ばして記憶にも残らなかった記述だが、この10年の間に、ソロー『森の生活』という作品について言及されている文献を数冊読んでいたので、今回『初秋』を読んでみて、スペンサーが『森の生活』を読んでいたということが初めてわかった。

やっぱり古典――というか有名作品はちゃんとよんでおかないとなぁ…。

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