『囚われの山』 [伊東潤]
内容紹介
雑誌「歴史サーチ」の編集部員・菅原誠一は、特集企画「八甲田雪中行軍遭難事件」を担当することになった。遭難死した兵士の数が記録によって違うことに気づいた彼は、青森で取材を開始。当時の悲惨な状況を改めて知る。特集企画は成功を収め、社長からもう一度、特集を組むこと指示された菅原は、再び青森を訪れた。遭難死した兵士数の違いにこだわる彼は、遭難事件の半年後に病死した稲田庸三一等卒に注目。取材のため、地元ガイドの小山田ととともに冬の八甲田に足を踏み入れた、菅原が見たものとは一体――。話題の歴史小説『茶聖』の人気作家が、世にも有名な「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材に挑んだ、傑作クライムノベル!
あまり書きすぎるとネタばらしになってしまうので、今日はサラッと書く。
面白かったです。伊東潤てこういうテーマでミステリーものも書くんだというのが最初の驚きで、それで図書室で借りて読んでみたものだが、他書でも見られる伊東クオリティであった。八甲田雪中行軍遭難事件のことは、昔、小学校時代に映画『八甲田山』を見たので知っていた。あの、行軍隊の隊員がホワイトアウトの中でバタバタ倒れていくシーンは、子どもの眼にはかなりショッキングで、雪山の怖さというのはあの映画で痛切に学ばされた。
以後この遭難事件のことを本で読んだりしたことはなかったけれど、これがちょうど日露戦争の2年ほど前の出来事だったということで、当時の陸軍の様子を知るいい手がかりになるかもと思い、今回は歴史ミステリー小説として読んでみた。それでも当時の史料がちゃんと現在も保管されているというのには驚かされた。そしてそこから主人公が描いた仮説と、それを現代の出来事に結び付けていった構成も見事だと思う。
400ページ超の長編を、なんと平日に2日かけて読み切ってしまった。おかげで、昨夜は夜更かしして、今朝は早朝ウォーキングをサボる事態となった。