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『定年オヤジ改造計画』 [読書日記]

定年オヤジ改造計画

定年オヤジ改造計画

  • 作者: 垣谷美雨
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2018/10/26
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
大手石油会社を定年退職した庄司常雄。悠悠自適の老後を夢見ていたが、良妻賢母だった妻は「夫源病」を患い、娘からは「アンタ」呼ばわり。気が付けば、暇と孤独だけが友達に。そんなある日、共働きの息子夫婦から孫二人の保育園のお迎えを頼まれ…。崖っぷちオヤジ、人生初の子守を通じて離婚回避&家族再生に挑む!長寿時代を生き抜くヒントが詰まった「定年小説」の傑作

コミセン図書室で本を借りる際に、文庫/新書を必ず1冊含めるのをノルマにしている。通勤途中で読むのにちょうどいい内容とボリュームだからだ。

それで今回借りたのは定番の垣谷美雨。といっても、男性主人公の作品は初めてとなる。今までは女性目線から見てイラッと来る旦那とか舅とか息子とかが出てくるケースはあったが、彼らの心情までは描かれていなかった。その点で、男性目線でこれまでと同じようなテーマを取り上げるのは新鮮ではあったが、序盤から中盤にかけての庄司の言動や心情は、読んでいて胸糞が悪くなるものだった。

垣谷作品は、中盤に転換点があって、そこまでは事態が悪い方向へ悪い方向へと展開していくが、転換点を過ぎると、すべてが好転していき、最後はハッピーエンドという形になるというのが1つのパターンになっている。予め展開が予想できていたからいたたまれないような主人公の言動であっても我慢して読み進められたが、いくらなんでも今どきいるのかこんな極端な「ズレ男」は! 

僕も定年が近い身で、庄司と大して世代は変わらないが、ここまでひどいオヤジではないと思っている、というか、思いたい。だから、独りよがりにならないよう、我が身を振り返るという意味で読んでおいて良かった本だとは言える。

ストーリーには踏み込みません。でも、垣谷作品のパターンは踏襲しているから、読後感がいいことは請け合いです。

タグ:垣谷美雨
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『60分でわかる!SDGs超入門』 [持続可能な開発]

60分でわかる!  SDGs 超入門

60分でわかる! SDGs 超入門

  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2019/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
ビジネス×サステナブルの決定版! なぜSDGsは注目されるのか?CSRと何が違うのか? 企業が取り組むべき理由とビジネスチャンスのある領域は? SDGs目標達成のカギを握るESG投資とは? 経営とリンクさせるツールSDG Compassについても解説。課題と目標がひと目でわかるバリューチェーンマップ付き。

先月あたりからプチブームになっている、SDGs関連書籍の読み込み。そんなにいろいろ読む気はないものの、顔を知っていて名刺交換をしたことがあるぐらいの方の著書ぐらいは目を通しておこう―――そんなシリーズの第二弾は、蟹江憲史『SDGs(持続可能な開発目標)』以上にビジネスに重心を置いた編集になっている。SDGsをメシの種にして企業コンサルタントで食っていくならこの程度のことは知っておけという内容だな。肝に銘じておこう。

ここまで思い切って「SDGsはビジネスチャンス」と謳っている本は気持ちがいい。想定読者もビジネスマンに絞り込んでいるんだろう。だから、本書にはもう1つのシリアスアクターである自治体ですら姿が薄いし、次世代を担う大学生や中高生というのも出てこない。今ビジネスやっている人が読む分にはいいが、大学生や高校生が本書を読んでSDGsをわかった気になるのはちょっとリスクがあるかも。

企業の取組みに絞っているから、自社製品のバリューチェーン全体をSDGsへの貢献で見て、リスクとチャンスを包括的に把握しようという興味深いメッセージになっている。監修者のお二人が「持続可能なサプライチェーン」という研究会で主要メンバーになっておられるのも、本書を読めば合点がゆく。この点は本書の大きな特徴なんだろう。

但し、そこに物足りなさも感じるところがある。

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『囚われの山』 [伊東潤]

囚われの山【電子特典付】 (コルク)

囚われの山【電子特典付】 (コルク)

  • 作者: 伊東潤
  • 出版社/メーカー: コルク
  • 発売日: 2020/06/29
  • メディア: Kindle版

内容紹介
雑誌「歴史サーチ」の編集部員・菅原誠一は、特集企画「八甲田雪中行軍遭難事件」を担当することになった。遭難死した兵士の数が記録によって違うことに気づいた彼は、青森で取材を開始。当時の悲惨な状況を改めて知る。特集企画は成功を収め、社長からもう一度、特集を組むこと指示された菅原は、再び青森を訪れた。遭難死した兵士数の違いにこだわる彼は、遭難事件の半年後に病死した稲田庸三一等卒に注目。取材のため、地元ガイドの小山田ととともに冬の八甲田に足を踏み入れた、菅原が見たものとは一体――。話題の歴史小説『茶聖』の人気作家が、世にも有名な「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材に挑んだ、傑作クライムノベル! 

あまり書きすぎるとネタばらしになってしまうので、今日はサラッと書く。

面白かったです。伊東潤てこういうテーマでミステリーものも書くんだというのが最初の驚きで、それで図書室で借りて読んでみたものだが、他書でも見られる伊東クオリティであった。八甲田雪中行軍遭難事件のことは、昔、小学校時代に映画『八甲田山』を見たので知っていた。あの、行軍隊の隊員がホワイトアウトの中でバタバタ倒れていくシーンは、子どもの眼にはかなりショッキングで、雪山の怖さというのはあの映画で痛切に学ばされた。

以後この遭難事件のことを本で読んだりしたことはなかったけれど、これがちょうど日露戦争の2年ほど前の出来事だったということで、当時の陸軍の様子を知るいい手がかりになるかもと思い、今回は歴史ミステリー小説として読んでみた。それでも当時の史料がちゃんと現在も保管されているというのには驚かされた。そしてそこから主人公が描いた仮説と、それを現代の出来事に結び付けていった構成も見事だと思う。

400ページ超の長編を、なんと平日に2日かけて読み切ってしまった。おかげで、昨夜は夜更かしして、今朝は早朝ウォーキングをサボる事態となった。

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『いつか、すべての子供たちに』 [読書日記]

いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと

いつか、すべての子供たちに――「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと

  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2009/04/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
大学卒業後の若者たちが2年間、全国各地の学校で「教師」になったら、世の中はどう変わるだろう?―こんなアイディアを思いついた当時21歳のウェンディが立ち上げた「ティーチ・フォー・アメリカ」は、国じゅうの大学生を巻き込んで、たちまち全国に広がった。世間では「ミー・ジェネレーション(自分のことしか考えない世代)」と言われていた若者たちが、同じ夢を抱いて立ち上がったのだ。それは、「いつか、すべての子供たちに、優れた教育を受ける機会が与えられること」。―貧しい地域の学校にドラマチックな成果をもたらし、大勢の子供たちの人生を変え、今や米国大学生の「理想の就職先」第10位に選ばれるまでになったティーチ・フォー・アメリカの軌跡を創業者がいきいきと描く。

先月読んだ井上義朗『「新しい働き方」の経済学』の中で引用されていたので、間髪あまり入れずに本書も読んでみることにした。Teach For America(TFA)のことはよく耳にもしていたし、TFAの生い立ちをその創設者の手記として読んでみるのも悪くないかなと思った。

図書館で借りたのだけれど、手にとっての第一印象は、その古さであった。訳本が出たのは2009年4月とあり、それだけでも古さは感じたのだけれど、読み始めてすぐに、TFAの誕生ストーリーが、僕自身の社会人生活並みに古いということがわかった。本書の原本である『One Day, All Children...: The Unlikely Triumph Of Teach For America And What I Learned Along The Way』が米国で出たのは2003年である。訳本が出るまでに6年もの時差があり、実際にTFAが発足したのは、著者がプリンストン大学を卒業した直後の1989年だという。(ちなみに僕の社会人1年目も1989年だ。)

なんだなんだ、井上義朗『「新しい働き方」の経済学』は、そんなに昔の話を「社会的企業」としてとり上げたということか―――。

そんな幻滅も感じてとっとと読んでしまおうという気持ちになり、細部はあまり気にせず一気に読み進めた。難しい本ではないが、いろんな読み方ができる本だと思う。

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『海と地域を蘇らせるプラスチック「革命」』 [持続可能な開発]

海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」

海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」

  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2020/05/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
プラスチックはもう使ってはいけないのか?
海洋プラスチック問題が世界的課題になるなか、ダボス会議で「21世紀のリーダー」の1人に選出され、「ブルーエコノミー」や「ゼロエミッション」の提唱者でもあるサステナビリティ分野の起業家グンター・パウリ氏が、プラスチックの生産方法と利用の仕方を変え、経済を回す新しいビジネスモデルを提言しているのが本書である。プラスチック問題の解決によって、海ばかりでなく地域も再生するシナリオを描いている。環境ジャーナリストの枝廣淳子氏が監訳した。プラスチック問題は国連のSDGs(持続可能な開発目標)にとって重要なテーマであり、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を進める企業にとって必須の書籍である。

海洋プラスチック問題に関する本を、折を見て読むようにしている。本書は発刊は今年の5月で、もうちょっと待たなければならないかと覚悟していたら、なんと市立図書館では一発で借りることができた。ラッキー!本書は税抜きで2,000円だが、興味深いことに、原書版の方は、今年の7月発売(日本語版より2カ月遅い!)で、電子書籍版だとなんと537円という価格が付いている。製本版でも1,773円です。ということは、1冊当たり230円は翻訳にかかった費用の回収分となり、製本版と電子書籍版の差額約1,200円分が印刷製本及び出版流通にかかる費用ということになる。

著者の印税は350円ぐらいだろうか。これが、共著者の1人が設立した財団の活動資金になるのなら、買ってもいいかなと思う。それくらい、本書での提言内容には惹かれるものがあったし、海洋にとどまらずプラスチック問題の深刻さについて、目を開かせてくれる内容となっていた。

僕たちは、毎週5グラム、クレジットカード1枚分のプラスチックを摂取していると警告している。僕らは植物連鎖の中で、水中を漂うマイクロプラスチックを魚が食べて、その魚を食べることで摂取する危険があるという考え方をしていた。しかし、人が直接摂取してしまっているプラスチックもあるという。ゾーッ。

怖いのは、僕らがカフェに行って使っているマドラーからでも、ガムシロップやコーヒーフレッシュのパックからでも、またコンビニで買って街中で飲んでいるペットボトルからでも、スナック菓子のパッケージからでも、料理を保存しておくタッパーからでも、食べ残しにかぶせるラップからでも、溶出したり剥がれ落ちたりしたマイクロプラスチックを摂取してしまっているということだ。歯ブラシだってそうだし、歯磨き粉も研磨用のポリマーが含まれている(そしてそれを洗面所で流してもいる)。

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『ブータンにデジタル工房を設置した』 [ブータン]

ブータンにデジタル工房を設置した (OnDeck Books(NextPublishing))

ブータンにデジタル工房を設置した (OnDeck Books(NextPublishing))

  • 作者: 山田 浩司
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
内容紹介
 本書は、2016年4月から19年3月までの3年間、JICA事務所長としてブータンに駐在した著者の活動記録を、「デジタルものづくり(デジタル・ファブリケーション)」という概念の普及と事業の具体化という点に絞ってまとめたものです。
 ネット社会が到来したばかりのブータンで、デジタルデータを利用したものづくりが可能な拠点施設を作り、距離と時間の壁を一気に乗り越え、それによって現地で就業機会を生み出す、というのが著者の狙いでした。
 本書は、これからブータンで始まるJICAの技術協力プロジェクトの参考情報としてだけでなく、他国で開発協力を展開する皆さんにも参考になるでしょう。現地にあるファブラボのようなデジタルものづくり拠点は、使いようによってはどんな開発ニーズにも、たとえそれが自然災害や感染症拡大のような突如襲ってくる緊急事態に対する支援ニーズであったとしても、現場での迅速対応を可能にするでしょう。

著者です。ずっと匿名でやってきたブログで、自分の正体を明かすのには躊躇もありますけど、自分の本を紹介するのに三人称を使うのは、いかにも他人行儀で書きづらい。セールスプロモーションへの本気度も問われますので、ここは実名で拙著を紹介させていただきます。

今回、初めて自分がやったことを一人称で描きました。人は人生において必ず1冊は本が書ける、自分の歩んできた道のりを描けばいいと言われます。今回はそんなわがままを通させていただきました。かなり独りよがりの書きぶりで、前著の冷静で客観的な記述とのギャップがスゴイと思いますが、そこは私自身のこのテーマへの取組みの「熱さ」だと思ってご容赦下さい。

ブータンについて紹介している本は最近も出されています。平山修一さんの『現代ブータンを知るための60章』(改訂版)とか、冨安裕一さんの『幸福の国で働いてみた』とか。ブータンのことを俯瞰的に見るなら平山さんの本、そして2000年以降の農業協力の歩みを知るなら冨安さんの本はおススメです。どちらも、ブータンにこれから渡航される方には是非読んでいただきたい文献です。

その上で、拙著はブータンのこれからを思いながら描きました。私の仕事がそうだから、きっと国際協力の記録だろうと思われるかもしれませんが、ちょっと違います。確かに私は国際協力機関の職員として現地駐在していましたが、本書で書かれたことの多くは、国際協力事業にはつながっていないから。しいて言うなら、これをやりたがっていた若いブータン人と出会い、政府高官や職員に働きかけて、彼らが活躍できる環境を作っていっただけですから。

でも、きっと面白いと思います。日本でアートやクリエイター、建築設計、木材加工、コミュニティデザインなどの仕事をしている若い方々に読んで欲しいと思います。そういう人に、ブータンに関心持って欲しい。あ、ブータンだけじゃなく、インドやネパールにも関心持って欲しいと思います。タイトルからは想像できませんが、近隣国のファブ施設を訪ねた話にも紙面を割いていますので。

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