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『ゼロからはじめる Zoom 基本&便利技』 [仕事の小ネタ]

ゼロからはじめる Zoom 基本&便利技

ゼロからはじめる Zoom 基本&便利技

  • 作者: マイカ
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2020/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
出版社からのコメント
Zoomは導入がかんたんで手軽なツールです。しかし、はじめてビデオ会議に参加したり、ミーティングを開催したりするときには、ちょっと戸惑う部分もあります。困ったとき、もっと便利に使いたいと思ったときに、手元にあると安心の1冊です!

今さらだが、Zoomの操作法の解説書を読んでみた。僕の周りでも3月頃から話題に出はじめ、僕自身も4月初旬にZoomを使ったウェビナーをホストした。社内最初のウェビナーだったので、接続やそこで再生する動画の配信テストなどを事前に行うなど、相当念入りに準備したつもりだ。

だから、Zoomの基本的な操作については、自分なりに試行錯誤して、自力である程度まで学んできている。それなのに今、改めてこんな解説書を読んでみたのは、僕のマスターしていない「便利技」がないかという期待感からである。

社内初のウェビナーホストをやった後、僕がZoomを使うのは、①他のホストが主催するウェビナーやセミナー、会議への参加、②遠隔地、多い時には時差のある5カ国ぐらいをつないでのミーティング、それと③オンライン飲み会ホスト、の3つの機会に限定されてきた。

ところが、11月に入ると、ブレークアウトセッションを伴うミーティングのホストや、大学のオンライン講義の講師やコーディネーション等、ホスト側の立場で今までよりも一歩進んだZoom利用の機会が増える見込みだ。今まではこじんまりとやっててよかったが、11月からは外部の人を招いたホストをやるので、より効率的に運営する方法を考えねばならない。

そう考えて本書を手に取った。

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『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』 [読書日記]

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

  • 作者: 末永 幸歩
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2020/02/20
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「こんな授業が受けたかった!」
700人超の中高生たちを熱狂させ、大人たちもいま最優先で受けたい「美術」の授業!!
論理もデータもあてにならない時代…20世紀アートを代表する6作品で「アーティストのように考える方法」がわかる!
いま、論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、「知覚」「感性」「直感」などが見直されつつある。本書は、中高生向けの「美術」の授業をベースに、
- 「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
- 「自分なりの答え」を生み出し、
- それによって「新たな問い」を生み出す
という、いわゆる「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説した一冊。「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」をつくりだす考え方を身につけよう!

今からちょうど1年前、山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読んでいた。外資系コンサルタントが、欧米のエリートがアート作品に触れるなどして美意識を磨いている、そしてそれが彼らのビジネスのセンスアップにも役立っているということをアピールされていた本である。これ読んで、「それじゃどうやったら美意識は鍛えられるのか」とか、「それは自助努力でなんとかしなきゃいけない話なのか、美意識を持った若者を量産する方法はないのか」とか、「だからどうしろと?」的な疑問が湧いた。でも、さすがにそこまでは書かれてなかったように記憶している。

周囲を見ていても、アーティスト的に物事を考えて仕事につなげている人は少ないように思うし、わけあって今関わっている高校生による問題解決イベントでも、意識高い系で頭もよく舌鋒も鋭い高校生は物事をものすごく真剣に捉えていて、ゲーム的要素を見落としがちなのかなと感じることがある。

つまり、高校生、というか中学生で高校受験に臨むような時期になってくると、受験勉強に追われて、アーティスト的センスを磨くことは後回しにされてしまう。最近は、中学入学すらが受験によるものにもなってきているので、もっと早くからこの実践は後回しにされているかもしれないが、入試があろうがなかろうが、中学に入学してひと息ついている13歳の頃が1つの節目。ここでそういう視点から美術やその他の授業も行われていれば、社会はセンスの良い若者をもっと高い確率で輩出できるようになっていくんじゃないだろうか。

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再読『初秋』 [ロバート・パーカー]

初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1988/04/01
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。―スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。スペンサー流のトレーニングが始まる。―人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。

あるブロガーの方が8月頃にロバート・B・パーカーの「私立探偵スペンサー」シリーズの名作『初秋』の表紙の写真を載せておられたのを見て、久しぶりに『初秋』を読んでみたくなった。僕のブログを読まれている方には意外かもしれないが、僕は1980年代から90年代にかけて、パーカーの作品はハヤカワ・ミステリーシリーズから新刊が出るたびに購入して読むというぐらいの大ファンで、その中でも「スペンサー」シリーズの『初秋』(原作初出1981年)と、独立系の作品『愛と名誉のために』(原作初出1983年)の2作品を推していた。この2作品は、ペーパーバックで原作も読んだし、訳本も数回にわたって読んでいる。

そして、SSブログでも、前回『初秋』を読んだ時の記事が書かれている。11年前の秋のことだ。
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2009-11-16

その時に書いた記事で本作品の概略はご理解いただけると思う。今回11年ぶりに再読してみて、僕が歳を重ねたことや、その間の読書遍歴の厚みもあって、前回気付かなかった新たな発見もあった。蔵書も読了後ただ単に書棚の肥やしにしておくだけでなく、ある程度間を置いて読み直してみると、その都度その都度新鮮な発見があって、いい読書体験になるなぁと改めて思った。

1つは、スペンサーの語り口。おしゃべりなだけでなく、一見すると意味不明の発言が時々飛び出し、聴いている側が「は?」みたいな聴き直しをしているシーンがある。年齢とともに口が重くなってきたことを痛感している昨今、これだけの会話は妻との間であってもなかなか成立させるのが難しくなってきた。会話の内容とテンポ、そして、スーザンに語りかける「甘~い」言葉の数々、これらを思い出すために、もう少しこのシリーズは読み返してもいいかなと今回思った。

2つめは、スペンサーは読書家で、スポーツ観戦や演劇鑑賞なども頻繁にしていることから、その体験から得られた知識をその語りの中でひけらかすシーンが度々出てくる。これは僕ら読者の知識量を試されている部分もあって、米国で長く住んでいればわかる話もある一方、本を沢山読んでいないと絶対に語れないような比喩も多い。

今回の気づきは、スペンサーがポールを連れて行って始めた森の中での生活で、ソロー(ヘンリー・ディビッド・ソロー)に一瞬言及するシーンがあったことだ。前回までの読書では読み飛ばして記憶にも残らなかった記述だが、この10年の間に、ソロー『森の生活』という作品について言及されている文献を数冊読んでいたので、今回『初秋』を読んでみて、スペンサーが『森の生活』を読んでいたということが初めてわかった。

やっぱり古典――というか有名作品はちゃんとよんでおかないとなぁ…。

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『じんかん』 [読書日記]

じんかん

じんかん

  • 作者: 今村翔吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
民を想い、民を信じ、正義を貫こうとした青年武将は、なぜ稀代の悪人となったか? 時は天正五年(1577年)。ある晩、天下統一に邁進する織田信長のもとへ急報が。信長に忠誠を尽くしていたはずの松永久秀が、二度目の謀叛を企てたという。前代未聞の事態を前に、主君の勘気に怯える伝聞役の小姓・狩野又九郎。だが、意外にも信長は、笑みを浮かべた。やがて信長は、かつて久秀と語り明かした時に直接聞いたという壮絶な半生を語り出す。大河ドラマのような重厚さと、胸アツな絆に合戦シーン。ここがエンターテインメントの最前線!

さすがに500頁を超える大作を簡単に読むことはできなかった。5日かかった。ただ、各章とも第1節が信長の回想から始まり、松永久秀から直接聞かされた半生について小姓に語らせた後、実際の久秀の歩みを次の数節で詳述していくという構成になっていた。区切って読みやすい超大作である。

それにしても、主君を殺して戦国下克上の象徴と見られ、織田信長に下ってからも二度信長を裏切り、最後は信長からの助命条件としての茶釜「平蜘蛛」の献上を拒否し、信貴山城もろとも壮絶な爆死を遂げたと言われる梟雄・松永久秀を主人公にして、どのようにエンターテインメント小説が描かれうるのかは興味津々だった。

大河ドラマの効果もあって、この時代を扱っている小説は最近多く出ている印象があるが、信長とか家康とか、その足取りが割と明確で書き手の独創性が発揮しづらい人物を主人公にするより、こういう、出自がわからなかったり、あるいはそもそもの行動が理解不能だったりする人物を中心として描く方が、ストーリー展開検討の自由度は高いと思う。「こういう見方もあったか」と唸らされる。

東大寺大仏殿焼き討ち事件や、二度の裏切り、信貴山城大爆破などは、これから大河ドラマでも描かれるポイントになってくるだろう。特に、『麒麟がくる』の主人公は明智光秀なので、ここまでの松永久秀の描き方を見ていると、信貴山城攻防戦はそれなりの重要シーンになってくるような予感がある。

本作品が面白かったから、次は石田三成を描いた『八本目の槍』なんかもいずれ読んでみたい。

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『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』 [時事]

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

  • 作者: 渡辺 由佳里
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
「アメリカで話題になっている本はなんですか?」は、人気レビュアーである著者がビジネスリーダーたちから常に聞かれる質問だ。本の良し悪しというより、話題となる本は、アメリカ人の興味を如実に映す。数々のトランプ本、ミシェル・オバマやヒラリーの回想録、ITビリオネアが抱く宇宙への夢、黒人や先住民から見える別の国アメリカ、ジェンダーの語られ方…「ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト」の連載を中心に、人気レビュアーが厳選して伝えるアメリカのいま。

アメリカ大統領選の投票まであとわずか。このタイミングで、こういう本を図書館ですぐに借りることができたのは、ものすごくラッキーだったと思う。7月にレベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』をご紹介したが、これを翻訳されたのが、本日ご紹介する本の著者である。今年3月だったか、米国で新型コロナウィルスの感染拡大が始まった頃、ラジオ番組に渡辺由佳里さんがゲスト出演されていて、レベッカ・ソルニットの著書と渡辺さんご自身の著書の宣伝をされていた。その頃から、いずれ2冊とも読もうとは思っていて、2冊目はギリギリ大統領選に間に合うタイミングでの読了となったわけだ。

本になるまでの効率がものすごくいい本だと思う。元々ブログやらニューズウィークやらのブックレビューで紹介してあった原稿をまとめたものなので、本にするにあたっての原稿書き下ろしの必要がほとんどない。普段コツコツやられてきたことの成果であり、見習いたいと思う。但し、僕の本のチョイスはこういう現代アメリカ社会といった特定の切り口ではないため、僕がいくらブログで記事を書き溜めたからといって、本にはとてもできないだろう。

レベッカ・ソルニットの著書を読んで、なんで4年前の大統領選でトランプが勝っちゃったんだか分析がされていたのだが、さらに今回ご紹介のブックレビュー集を読むと、ヒラリー候補が女性で、女性の有権者に敬遠されたというだけでなく、トランプを担ぐ共和党も昔の共和党ではなくなってきているらしく、ひょっとしたら今回も、トランプが勝っちゃうかもしれないと思えてきた。トランプはあれだけ嘘をまき散らしているのに、「しょうがない、トランプなんだから」というので許してしまう共和党右派支持者や白人労働者階級の人がすごく多いというのは衝撃的だ。「人は、自分が聴きたいと思うことを語ってくれる人を好む」とか、「政治家の小難しい論法よりもシンプルなトランプの物言いの方が率直に語っていると捉えている人が多い」とか、それはそうかもしれないが、危険だなと思う。

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『労働2.0』 [読書日記]

労働2.0 やりたいことして、食べていく

労働2.0 やりたいことして、食べていく

  • 作者: 中田 敦彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2019/03/16
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「やりたいことで、食べていけ!」 ――“今最も面白い経営者"中田敦彦が説く、好きなことをやって、がっぽり稼ぐ「最強の働き方革命」。
『オールナイトニッポンPremium』でも話題騒然!アパレルブランド「幸福洗脳」の戦略もまるわかり。

今週の週末読書。近所のコミセン図書室で軽い気持ちで借りたが、今格闘中の400ページ近い別の本の読み込みの合間に息抜きがしたくなり、それで90分ほどかけて先に読んでしまうことにした。

この本は、出されたタイミング的には彼のアパレルブランド「幸福洗脳」の宣伝も兼ねていると思う。かなりの頻度で「幸福洗脳」は出てくるし、そのコンセプト「着づらくて、高いものを売る」と、その商品開発ストーリーはそれなりに面白かった。黒Tシャツに1万円出してもいいという人には面白い売り方かもしれない。そういうのはありだと思う。また、こういう本の出版の仕方もありだと思う。有名人なんだから。「使えるものは使え」というのも、本書にあったメッセージだ。

なぜ今この本を手に取ったのかといえば、2時間弱で読み終われるというお手頃感が1つと、僕自身が2冊目の本を出した今、その本で書いたことにこれからも取り組み続けて、それで食べていきたいと思っているからだ。著者のあっちゃん自身も、50代半ば過ぎのオジサンを著書の読者層として想定しているとは思えないが、この歳になると会社の歯車になって黙々と仕事をやるのには抵抗感もあって、せっかくメシのタネらしきものを見つけたんだから、それで食いつないでいきたいと考えるようになった。特に、周囲にパワハラ気質の人が複数名いた昨年度の職場ではそれを感じたな。

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『日本の開国と多摩』 [シルク・コットン]

日本の開国と多摩: 生糸・農兵・武州一揆 (歴史文化ライブラリー)

日本の開国と多摩: 生糸・農兵・武州一揆 (歴史文化ライブラリー)

  • 作者: 覚, 藤田
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ペリー来航や開港・自由貿易の開始は多摩に何をもたらしたのか。際限ないカネ・ヒトの負担、生糸生産発展の一方で生じた経済格差、武州一揆の発生など、その要因・実態を探り、未曽有の大変革に生きた多摩の営みを描く。

ここに来てまたしても何の脈絡もないテーマ選択ですね~(苦笑)。でも、そんなこともない。コミセン図書室でこの本を借りたきっかけは、サブタイトルにあった「生糸・農兵・武州一揆」の最初の「生糸」にあったのだから。

昔、拙著『シルク大国インドに継承された日本の養蚕の技』の原稿を書いていた頃、時間を見つけては近場の蚕糸業遺産を訪ねるようにしていた。多摩地区在住だから、当然地区内の歴史資料館などには幾つか見学に出かけたが、八王子が19世紀半ば頃に生糸の集散地になっていたのは当然知っていて、鑓水の「絹の道」や「八木下要右衛門屋敷跡(絹の道資料館)」にも足を運んでいる。それが原稿執筆に反映されたわけではないが…。(ちなみに、この2012年発刊の拙著も最近電子書籍化が実現しました、と宣伝)

従って、本書を読むにあたっての僕の最大の関心は養蚕・生糸生産の部分で、その辺でメリハリをつけて返却期限までに読み切った。

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『日本人のわすれもの』 [宮本常一]

日本人のわすれもの―宮本常一『忘れられた日本人』を読み直す (いま読む!名著)

日本人のわすれもの―宮本常一『忘れられた日本人』を読み直す (いま読む!名著)

  • 作者: 岩田 重則
  • 出版社/メーカー: 現代書館
  • 発売日: 2014/07/01
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
『忘れられた日本人』をそのままの事実として受けとってはならない。事実とフィクションの間を自由自在に渡り歩く宮本独自のハナシ集として読むことでみえてくる人生の肯定性。

2020年は、宮本常一の代表作『忘れられた日本人』刊行から60周年の節目の年である。前回の外国駐在時に、事務所のスタッフに、「昔の日本の市民のことを知りたければ、Tuneichi Miyamotoの『The Forgotten Japanese』を読んだらいい」と吹聴していたので、そのうちに『忘れられた日本人』は読み直してみなければと思っていたが、まだ実行していない。でも、少し前に井上義朗『「新しい働き方」の経済学』を読んだ際、この現代書館の「いま読む!名著」シリーズに『忘れられた日本人』を扱ったものが存在するのを知り、これがいいチャンスだと思って、「名著」を読む前にその読書ガイドを図書館で借りて見ることにした。

いわば、「宮本常一」研究者による『忘れられた日本人』の読み方のガイドブックである。

何冊か宮本の著作を読んでいて、時々気になっていたのが、明らかに聞き取りにもとづく史実の説明が淡々とされている作品の他に、宮本自身を主語にした見聞の記録や、相手の語りを相手自身を一人称の主語にしてそのまま書き留めた記録があったりすること。要すれば、「形」が定まっていないことだった。特に、『忘れられた日本人』の中でも最も有名な「土佐源氏」のような口述筆記が、テープレコーダーもなかった時代に、よくもまああれだけ事細かく記録でき、再現できたものだなと驚かされる。

本当に全部語りに基づいているのか、それをどうやって記録できたのか、いろいろ想像はできるが、これに関して収録された各作品の背景や裏取りを行い、宮本がフィールドノートなしで完全に記憶に頼り、かつ自身の視点に基づいて再構築された「ハナシ」なのだと結論付けた、それが本書である。

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拙著『ブータンにデジタル工房を設置した』続報 [ブータン]

ブータンにデジタル工房を設置した (OnDeck Books(NextPublishing))

ブータンにデジタル工房を設置した (OnDeck Books(NextPublishing))

  • 作者: 山田 浩司
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: Kindle版

前回、拙著をご紹介した際に言及していませんでしたが、以下の2点、ご注意下さい。

1)この本を買いに、わざわざ本屋さんにお越しになられた方もいらっしゃると聞きました。スミマセン! この本は、電子書籍とアマゾン等で買えるオンデマンド印刷製本版(POD版)だけで、書店流通のルートには載っていません。

2)電子書籍だときれいなカラー写真になる口絵も、POD版だとものすごく黒っぽい白黒写真になってしまいます。電子書籍の方が強い出版社なんだろうなと思います。

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『貧しい人を助ける理由』 [持続可能な開発]

貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり

貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり

  • 作者: デビッド・ヒューム
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2017/11/29
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
日本人さえ豊かでいられればそれでいいのか? 金持ち国に住む我々と「遠くの見知らぬ貧しい人」とのつながりが、どれほど密接かつ多岐にわたるのか。金持ち世界に「自国民第一主義」が蔓延する中、その逆風に立ち向かい、「貧しい人を助ける理由」を次々に挙げていく。

この監訳者は今月に入って二度目だな。たまたま偶然だろうけど―――。

この本のことは、発刊された2017年秋の時点で既に知っていた。当時僕は海外駐在だったし、タイトルもベタだったし、さらにB5判のハードカバーで300ページぐらいあるんじゃないかと勝手に思い込んでいて、ずっと読む気になれないでいた。それが、近所の市立図書館に所蔵していることを知り、借りてみたところこれが意外と薄く、しかも訳文も読みやすくて、とてもいい本だと見方を改めることになった。

ベタなタイトルで引いちゃった潜在的読者は多いのではないかと思うが、内容的にはおススメする。特に、「持続可能な開発」の時代だからこそ考えるべき論点が含まれているし、なんでSDGsでことさらに気候変動ばかりが大きく取り上げられているのかも、わかった気がした。

2つめは、援助の役割の相対的低下を論じている点。これも同感で、この論点での深掘りはされていないけれども、貿易や移民受入なども含めた「政策の一貫性」を主張されている点も好感が持てる。援助なんかよりも、貿易の方がよっぽど貧困削減への貢献度が高いと見られているわけだし。ややもすると僕自身も忘れがちな論点だが、米国が綿花に生産補助金を給付しているおかげで、世界の綿花価格が低迷して、インドの綿花栽培農家の自殺問題につながっていく、そんな因果関係もあるかもしれない。

3つめは、僕がこれまでに読んでいた文献が、結構多く引用されていた点。自分の文献選択のセンスも悪くはないなと確認できたのは嬉しい。とはいえ、知らない文献もあったので、それらを中心にこれからも読むようにしたい。もしそういうことを人にしゃべらないといけない仕事を今後やるのであれば…。

ということで、本書は購入して座右に置いておいてもいい本だと判断する。

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