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『危機と人類』(上) [読書日記]

危機と人類(上)

危機と人類(上)

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2019/10/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ペリー来航で開国を迫られた日本、ソ連に侵攻されたフィンランド、軍事クーデターとピノチェトの独裁政権に苦しんだチリ、クーデター失敗と大量虐殺を経験したインドネシア、東西分断とナチスの負の遺産に向き合ったドイツ、白豪主義の放棄とナショナル・アイデンティティの危機に直面したオーストラリア、そして現在進行中の危機に直面するアメリカと日本…。国家的危機に直面した各国国民は、いかにして変革を選び取り、繁栄への道を進むことができたのか? ジャレド・ダイアモンド博士が、世界7カ国の事例から、次の劇的変化を乗り越えるための叡智を解き明かす!

またまた、上巻だけ読んで紹介に回すというパターン。上下巻まとめて借りるという自信もなかったし、自分が読みたかった第3章「近代日本の起源」を取りあえず読めればいいと思っていたから、先ずは上巻のみでお許し下さい。

危機に対してうまく対応するためには、それが国家にとっての危機であっても、個人にとっての危機であっても、選択的変化が必要だと著者は主張する。かつてのアイデンティティを完全に捨てて、まったく異なるものへと変化するのは不可能なので、その時点で機能良好で変えなくてよい部分と、機能不全で変えなければならない部分を峻別する必要がある。そのためには、自身の能力と価値観を公正に冷静に評価しなければならない。

どれが現時点で機能し、変化後の新環境でも機能するか――つまり現状維持でよい部分を見極める。そして、新たな状況に対応すべく、勇気をもって変える部分も見極める。これを実行するには、残す部分と能力に見合った新しい解決策を編み出す必要がある。同時に、アイデンティティの基礎となる要素を選び出して、重要性を強調し、絶対に変えないという意思を表明する。(pp.15-16)

――それができるのかが大きな課題だという。「選択的」というところがキーワードだとも。

それを歴史上もっともうまくやったのが、フィンランドの対ソ戦争と、1853年の黒船到来以降の明治の近代化なのだと著者は主張しているのである。他に、上巻ではチリとインドネシアの経験が紹介されているが、いずれもヒトラーとも比較されるような国のリーダーの下で、かなり凄惨な虐殺や弾圧行為が行われてきた。

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