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『マッキンゼーが予測する未来』 [仕事の小ネタ]

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
世界一のコンサルティング・ファームが予測する近未来は、こんなにも激しく、破壊的だ―――
英『ザ・エコノミスト』『フォーチュン』『フォーブス』が選ぶ必読書
エリック・シュミット「これから何が起こるのか、先見の明ある診断を提供してくれるばかりか、日々変化の速度を増していく世界でどのようにすれば成功できるのかがわかる」
戦略コンサルティング・ファーム, マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営および世界経済の研究部門である、MGI(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート)のディレクターであるコンサルタント3名による未来予測本。

さすがマッキンゼー。僕の同僚、そして部下が何人か転籍していった会社である―――なんて冗談はさておき、この本も貸出期間を2週間延長して、4週間も借りていたにも関わらず、読了するのが返却期限ギリギリになってしまった。ダラダラ読んでたので頭にもキッチリ入ってないし、あまりに長期間にわたって読んでいたもので、最初の方に書かれていたことが容易に思い出せなくもなっている。

コンサルタントのレポートなら、分厚いのはともかく、理解を助けるポンチ絵でも付けてくれたら良かったのに…。

とはいえ、目次を一覧すれば何が書かれていたかを思い出すのはさほど難しくはない。特に第Ⅰ部で挙げられている「4つの破壊的な力」――「都市化」「デジタル技術」「高齢社会」「データ」は、未来予測を行った他書でもたいてい指摘されているポイントだとも言える。予測不可能なことが将来起こる、直観力をリセットせよと主張されているけれど、本書は企業の取組み事例が豊富で、「もうしっかり予測して行動している企業が結構あるじゃん」と思えてきてしまう。こうして取組み先行事例を列挙するのはコンサルタントの調査レポートではよくあるけれど、結局未来はそれらの先進的企業の取組みの先にあるのが予測できているということではないか。

まあそんなことはいいので、僕が読みたかった記述だけ幾つか拾って、備忘録的に紹介しておく。

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『危機と人類』(下) [読書日記]

危機と人類(下)

危機と人類(下)

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2019/10/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
国家的危機に直面した国々は、選択的変化によって生き残る―では、現代日本が選ぶべき変化とは何か? 現代日本は数多くの国家的問題を抱えているが、なかには日本人が無視しているように見えるものもある。女性の役割、少子化、人口減少、高齢化、膨大な国債発行残高には関心が寄せられている一方で、天然資源の保護、移民の受け入れ、隣国との非友好的関係、第二次世界大戦の清算といった問題には、関心が低いようだ。現代日本は、基本的価値観を再評価し、意味が薄れたものと残すべきものを峻別し、新しい価値観をさらに加えることで、現実に適応できるだろうか? 博覧強記の博士が、世界を襲う危機と、解決への道筋を提案する。

今月中旬、本書の上巻をご紹介した際に、なんとなく下巻も読まないと済まない気がしたので、上巻を図書館で返却した折に、すかさず下巻も借りた。この2週間、借りた本を読み切るのに相当追いまくられた挙句、下巻を読むのに充てられた時間はわずか3日。返却予定日当日、なんとか帳尻合わせのように読み切った。

本書の分析枠組みは既に上巻冒頭で示されていて、僕もブログでその部分を紹介してしまったので、下巻については、ドイツとオーストラリアという新たな2ケースに、現在進行形の「危機」としての日本の再登場と米国のケースが取り上げられ、最後はどちらかというと人類全体、というか地球自体の危機のゆくえという点での考察につながっている。

ドイツとオーストラリアのケースは勉強になった。第二次大戦後、ナチスの影響が長く残っていたというのは新たな気付きだったし、僕らが小中学生だった頃は、オーストラリアは白豪主義の国だと習った。それが、僕が1980年代後半に大学院生だった頃の指導教官は、『太平洋国家オーストラリア』(東大出版会、1988年)に寄稿しておられたし、21世紀に入ってから僕自身が関わることになった南アジアの国々では、オーストラリアは留学希望先の第1位になっていた。もはや白豪主義という状況ではない。どのようにオーストラリアが変わっていったのかを知るには、いい解説になっていた。

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『農業新時代』 [読書日記]

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)

農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)

  • 作者: イオ, 川内
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
衰退産業の代名詞とされてきた日本の農業。しかし、この常識は覆りつつある。独自のアイデアと先端技術で稀少かつ高品質の商品、サービスを生み出す変革者たち。時代を先取る彼らの生き方、働き方―。明日のビジネスのヒントがここに!

わずか週2回だが、通勤していると、会社で使っているラップトップを常に通勤途中で持ち歩いているかっこうになるので、他に通勤途中で読む本はおのずと軽量のものが求められる。新書や文庫、最悪でも四六判までで、ページ数も200ページ少々ぐらいのものがいい。間違っても、A5判のハードカバーなんて持ち歩くもんじゃない。

そういう基準で図書館で借りる本も選んでみたりする。近所のコミセン図書室で一度に借りられる本は4冊まで。これだと2週間で3冊が限界だが、「新書は別腹」とばかりに、これまでの読書の傾向からは何の脈絡もないテーマの新書をもう1冊加えて見たくなったりする。それが、今回の農業に関する本である。

そうはいっても目下の関心とまったく無関係化と言われると決してそうではない。これから自分が関わる仕事で何か参考になるかもしれないし、また、迫りくる老後のことを考えたら、猛暑の炎天下で畑仕事をせねばならない状況をなんとか緩和して、妻の持っている畑に対して自分なりのアプローチを加えられたら面白いかも、なんて考えないわけではない。

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『読書を仕事につなげる技術』 [読書日記]

外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術

外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術

  • 作者: 山口 周
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/10/20
  • メディア: Kindle版
内容紹介
著者は電通からBCGに転職する際、経営学を独学するため1000冊以上の本を読破。「戦略読書マップ」をつくり上げた。その体験をもとに、完全独学可能、かつ必ず成果に結びつける技術を伝授する。超お得な1冊!

僕はコロナ禍の今、22時には就寝するのが日課になっている。が、24日(月)夜は寝入りっぱなに近所でバイクを空ぶかしした1人カミナリ族に起こされてその後眠れなくなり、翌25日(火)は睡眠不足から21時前には布団を敷いて横になっていたが、1時間ほど眠れた後に別のスクーター野郎に家の前でふかされてまたしても目が覚めてしまった。(余談だけど、外出自粛になって以降、こういう走り屋が急増したような気がする。)前夜は暗闇の中キンドルで洋書を読んで2時間かけて再び眠りに入ったが、2日目は目先を変えようと思い、図書館の返却期限が迫っていた本書を、拾い読みだけで2時間かけて読み切った。

それくらいの真剣度でいい本だと思う。著者のように外資系の経営コンサルタントにでもなりたいのなら、こういう読書はしなければいけないのだろうが、僕はそういうところは目指しているわけではないので、特にビジネス書で「これだけ」読めばいいとして書かれている内容自体にあまり納得はしていない。著者は仕事につなげる読書の6つの大原則の1つに、「成果を出すには「2種類の読書」が必要」だとして、ビジネス書と教養書を分けているが、この区分は経営コンサルタントを目指すなら必要かもしれないが、僕にとってはビジネス書も教養書に含まれるようなものだ。

ただ、ビジネス書のところで言われている、「古典の解説書」ではなく「古典」そのものを読めという主張には賛成である。別にビジネス書には限らない話だと思う。僕もそういう意識は持って読む本を選んでいるつもりだ(いつもそうではないが)。

でも、ビジネス書について、原典を読めと言われている割には本書自体が解説書になっているような気がするし、新刊のビジネス書に書いてあることのほとんどは、古典的名著といわれるビジネス書に書いてあることを、事例や業界を変えて繰り返し説明しているに過ぎないとか、ベストセラーを読むというのは費用対効果が低い投資だとか書かれているのに、それじゃあなんでこんな本を出されたのかという質問もしたくなってしまう。

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タグ:山口周
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冲方丁『戦の国』 [読書日記]

戦の国 (講談社文庫)

戦の国 (講談社文庫)

  • 作者: 冲方丁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
『戦国』―日ノ本が造られた激動の55年を、織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼ら六傑の視点から描く、かつてない連作歴史長編。

岐阜県出身の作家の本は、無条件で読みます―――。

さて、今週末の読書は、NHK大河ドラマ『麒麟が来る』の放送再開を前に、景気づけに戦国ものの歴史小説を1冊。桶狭間の合戦から大坂夏の陣までの間の出来事を、6人の登場人物の視点から描いた連作短編である。しかも、各短編は、これまでに講談社がこの時代の出来事に絡んだ人物を主人公に仕立て、別々の歴史小説作家が描くというアンソロジー『決戦!』シリーズで、過去に冲方丁自身が執筆担当した作品だけで再構成されている。

 「覇舞踊」(織田信長)――『決戦!桶狭間』(2016年)
 「五宝の矛」(上杉謙信)――『決戦!川中島』(2016年)
 「純白き鬼札」(明智光秀)――『決戦!本能寺』(2015年)
 「燃ゆる病葉」(大谷吉継)――『決戦!関ケ原2』(2017年)
 「真紅の米」(小早川秀秋)――『決戦!関ケ原』(2014年)
 「黄金児」(豊臣秀頼)――『決戦!大坂城』(2015年)

『決戦!』シリーズは、本能寺、関ケ原、大坂城あたりまでの初期の3作品は読んでいて、その中でも冲方丁による小早川秀秋や豊臣秀頼の描き方の面白さにブログで言及していた。今回の連作を読んでいて、特にこの2編については既視感があったので、調べてみたらそういうことだったという次第。

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川喜田二郎『発想法・改版』 [仕事の小ネタ]

発想法 改版 創造性開発のために (中公新書)

発想法 改版 創造性開発のために (中公新書)

  • 作者: 川喜田二郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/03/15
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
ここで語られる「発想法」つまりアイディアを創りだす方法は、発想法一般ではなく、著者が長年野外研究をつづけた体験から編みだした独創的なものだ。「データそれ自体に語らしめつつそれをどうして啓発的にまとめらよいか」という願いから、KJ法が考案された。ブレーン・ストーミング法に似ながら、問題提起→記録→分類→統合にいたる実技とその効用をのべる本書は、会議に調査に勉強に、新しい着想をもたらす。

先週から今週にかけて、僕の周辺で起きていた出来事を考えてみるにあたり、川喜田二郎先生の「KJ法」をちょっとしっかりと学んでみたいなという気持ちになった。KJ法のことを知ったのは1990年代半ばである。最初に読んだ先生の著書は1995年の『ヒマラヤに架ける夢―エコロジーと参画に基づいた山村活性化』であり、これを読んでから96年にはアンナプルナ・トレッキングでシーカ谷を通った。次に読んだのは、カトマンズのタメル地区の日本人長期滞在者向けの古本屋で見つけた『鳥葬の国―秘境ヒマラヤ探検記』である。

このように、川喜田二郎先生の著書を読んだのは、多分に僕自身がネパールに駐在していたことと関連が強い。その後、『鳥葬の国』は1960年の初版を東京都内の某図書館で見つけ、再読した。その時の目的はヒマラヤ探検隊からその後ブータンでの農業指導に転じた西岡京治先生の、川喜田探検隊在籍当時の現地での活動の様子を知りたかったからだ。これについては、その部分の記述の引用も含め、ブログでも紹介している。

『発想法』の初版は1966年に出て、川喜田先生が「KJ法」を発表したのも1967年のことだから、先生がKJ法の体系をまとめられた頃には、西岡先生は既にブータンでのご活動が始まっていたことになる。ただ、『発想法』を今回読んで、その後で『鳥葬の国』での西岡先生の野外活動の描写を改めて読み直すと、既に野外調査で各隊員が見た経験や気付きを片っぱしから「フィールドノート」に書き込んでいたという姿に、KJ法の萌芽のようなものを見ることができる。そして、自分が村に入った時、ここまで片っ端からノートに書き込むような実践はできていなかったなと猛省させられる。

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プンツォリンでの医療施設の現状(8月15日時点) [ブータン]

COVIDセンターでは過去最大の20人を隔離中
Phuentsholing COVID Centre manages highest ever number of 20 positive cases
The Bhutanese、2020年8月15日(土)
https://thebhutanese.bt/phuentsholing-covid-centre-manages-highest-ever-number-of-20-positive-cases/

2020-8-15 TheBhutanese.jpg
【抄訳】
全国的なロックダウンが4日目に入ったが、プンツォリンの隔離病棟は、大きな問題なく陽性患者を収容している。ロックダウン初日には3件の陽性例が報告され、翌日には12例にまで増加した。 プンツォリンのCOVIDセンターは、ゲレフで最初に陽性患者が確認された後、直ちに開設され、その後、13日は3件、14日には2件のケースが確認された。

プンツォリンCOVIDセンターは、土曜日の時点で20件の陽性症例を処理している。COVID-19陽性患者のほとんどは、軽度の症状がみられる数名を除けば、特に問題なく過ごしているという。ほとんどは40歳未満とかなり若いため、完全に制御可能と見られている。しかし、患者の症状が深刻化するとそれも困難になり、陽性の症例が増えると、病院は他の地方病院から訓練を受けた医師を呼ぶ必要が生じるかもしれない。

南部地域は温暖な気候のため、陽性患者を担当する医療スタッフは困難に直面している。病院はエアコン(AC)を設置されていなかったため、現在はポータブルACを使用している。プンツォリン総合病院のタシ・トブゲイ医師によると、医師は隔離病棟に常にいる必要がないため、それほど問題ではないが、隔離病棟に6時間、場合によっては8時間いる看護師にとっては、保護具(PPE)を装着していても完全防御では困難だという。また、ゴーグルや手袋を使用すると、医療スタッフが2層または3層にもわたって着用しなければならないので、かなりの苦痛になると指摘する。

上記記事の抄訳をここまで書いてきて、前回の記事のデータに上書きしてしまっていたことに気付いた。今さら前の記事を復活させることも手間なので、このまま走ることにする。

新型コロナウィルス感染拡大で、日本にいてもいろいろ余計なことを考えるようになった。時には人間不信にもなったし、時には所属する組織に対する不信にもなった。自宅にいる時間が長くなり、その分体調管理には時間をかけられるようにもなったが、1日2時間近いウォーキングをやっていて、それで余計な考えごとまでするようになった。

次のステップに向けた具体的な展望も見えないが、何かしらやっていないともっと余計なことを考えそうなので、先週短い夏休みをいただいていた間に、今まで惰性で過ごしていた日常を変える刺激を、自分自身に与えることにした。その1つが、久しぶりにこのブログでブータンの報道を扱うことである。

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『野望の憑依者(よりまし)』 [伊東潤]

野望の憑依者 (徳間時代小説文庫)

野望の憑依者 (徳間時代小説文庫)

  • 作者: 潤, 伊東
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
時は鎌倉時代末期。幕府より後醍醐帝追討の命を受け上洛の途に就いた高師直は、思う。「これは主人である尊氏に天下を取らせる好機だ」。帝方に寝返った足利軍の活躍により、鎌倉幕府は崩壊。建武の新政を開始した後醍醐帝だったが、次第に尊氏の存在に危機感を覚え、追討の命を下す。そのとき師直は…。野望の炎を燃やす婆裟羅者・高師直の苛烈な一生を描いた南北朝ピカレスク、開演。

小説が読みたい――そんな気持ちが強くなったので、土曜日にコミセン図書室で歴史小説を借りた。久々の伊東潤作品、そして久々の南北朝作品である。但し、伊東潤が南北朝ものを扱うのは多分本作品が唯一でもある。

なぜ南北朝? それは、現在NHK-BSで日曜早朝に放送されている大河ドラマのアンコール放送が『太平記』であるからだ。『太平記』は1991年1月から放映開始されたが、1980年代の大河ドラマをまったく見ていない僕が再び大河ドラマを見るようになるきっかけとなった作品であり、かつNHK大河ドラマ史上最高傑作ともいえる作品とも言われている。

もっと振り返れば、なぜこの『太平記』から大河ドラマを再び見るようになったかといえば、以前何かの拍子にブログでも述べたことがあるが、僕が歴史大好き人間になるきっかけをくれたのも、小学校時代に学校図書館で読んだポプラ社古典文学全集の『太平記』であったからだ。阿新丸(日野資朝の息子)の佐渡潜入、護良親王の般若寺脱出、楠木正成の赤坂城・千早城攻防戦、新田義貞の鎌倉攻撃、楠木正成父子の桜井の別れ等、古典太平記の中から拾ったエピソードだけで構成された短編集になっていた。

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『遅いインターネット』 [読書日記]

遅いインターネット (NewsPicks Book)

遅いインターネット (NewsPicks Book)

  • 作者: 宇野常寛
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: Kindle版

内容紹介
インターネットによって失った未来をインターネットによって取り戻す。
インターネットは世の中の「速度」を決定的に上げた。しかしその弊害がさまざまな場面で現出している。世界の分断、排外主義の台頭、そしてポピュリズムによる民主主義の暴走は、「速すぎるインターネット」がもたらすそれの典型例だ。インターネットによって本来辿り着くべきだった未来を取り戻すには、今何が必要なのか。気鋭の評論家が提言する。

なんだかね~。またNewsPicks&幻冬舎かという感じ。当然、バックにいるのは箕輪厚介さん。ヒット連発の編集者なんだけど、NewsPicksって元々名前が売れている論者を著者として引っ張ってきて本を出させるのだから、売れない筈がない。出版不況の中での出版社のサバイバル戦略としては正しいかもしれないけれど、無名のライターには割り込む余地がない。逆恨みだけど、NewsPicksの本を手に取ると、僕は最初からすごい敗北感を感じてしまう。

それで読み始めると、タイトルの簡潔さに惹かれて手に取ってしまった読書が一気に苦痛に変わる。そもそもこういった社会評論的な書物をあまり多く読んでないという自分のキャパシティの問題が大きいのだが、前半の100ページぐらいは読んでて自分はちゃんと理解しているのか確認するのに難儀した。

この著者の本は初めてなのだが、とにかく、AというものとBというものを並置して、それらを同じものを示すメタファーとして使ってみたり、間に対立軸を立てて対立する2つの異なる概念として提示して見たり、時間軸に沿ってAからBへと展開していく姿を描いてみたりと、そういう記述がものすごく多い。

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『危機と人類』(上) [読書日記]

危機と人類(上)

危機と人類(上)

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版
  • 発売日: 2019/10/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ペリー来航で開国を迫られた日本、ソ連に侵攻されたフィンランド、軍事クーデターとピノチェトの独裁政権に苦しんだチリ、クーデター失敗と大量虐殺を経験したインドネシア、東西分断とナチスの負の遺産に向き合ったドイツ、白豪主義の放棄とナショナル・アイデンティティの危機に直面したオーストラリア、そして現在進行中の危機に直面するアメリカと日本…。国家的危機に直面した各国国民は、いかにして変革を選び取り、繁栄への道を進むことができたのか? ジャレド・ダイアモンド博士が、世界7カ国の事例から、次の劇的変化を乗り越えるための叡智を解き明かす!

またまた、上巻だけ読んで紹介に回すというパターン。上下巻まとめて借りるという自信もなかったし、自分が読みたかった第3章「近代日本の起源」を取りあえず読めればいいと思っていたから、先ずは上巻のみでお許し下さい。

危機に対してうまく対応するためには、それが国家にとっての危機であっても、個人にとっての危機であっても、選択的変化が必要だと著者は主張する。かつてのアイデンティティを完全に捨てて、まったく異なるものへと変化するのは不可能なので、その時点で機能良好で変えなくてよい部分と、機能不全で変えなければならない部分を峻別する必要がある。そのためには、自身の能力と価値観を公正に冷静に評価しなければならない。

どれが現時点で機能し、変化後の新環境でも機能するか――つまり現状維持でよい部分を見極める。そして、新たな状況に対応すべく、勇気をもって変える部分も見極める。これを実行するには、残す部分と能力に見合った新しい解決策を編み出す必要がある。同時に、アイデンティティの基礎となる要素を選び出して、重要性を強調し、絶対に変えないという意思を表明する。(pp.15-16)

――それができるのかが大きな課題だという。「選択的」というところがキーワードだとも。

それを歴史上もっともうまくやったのが、フィンランドの対ソ戦争と、1853年の黒船到来以降の明治の近代化なのだと著者は主張しているのである。他に、上巻ではチリとインドネシアの経験が紹介されているが、いずれもヒトラーとも比較されるような国のリーダーの下で、かなり凄惨な虐殺や弾圧行為が行われてきた。

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