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『いのちを守るデザイン』 [仕事の小ネタ]

コミュニケーションデザイン 1 いのちを守るデザイン

コミュニケーションデザイン 1 いのちを守るデザイン

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 遊子館
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 大型本
コミュニケーションデザインは関係のデザインである。かかわりのデザイン、あるいはふれあいのデザインといってもよい。関係やかかわりには主体と目的の明確化が欠かせない。生活者としての生命体、未だ誕生を見ていない動植物も含めて生物は全てコミュニケーションデザインの主体者となる。これまでのデザインは、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックなどの専門分野に分かれていた。コミュニケーションデザインでは、そうした分類も意味をなさなくなる。本書『コミュニケーションデザイン』では、主体者相互並びに環境とのよりよい関係を生み出すデザインに注目し、掘り下げている。写真・図版のウェイトを高め、ビジュアルに時代を見通す素材として役立つものとした。第1巻『いのちを守るデザイン』では、あらゆる分野で、いのちを守るために試みられている多くの事例を紹介し、デザインに何ができるかを、読者とともに考えようとした。

成人の日の三連休。僕は持ち帰り残業があったのだけれど、どうしてもこの作業をやる気になれず、連休最終日を迎えてしまった。この作業をやったから明日以降の仕事がその分はかどるというわけでもなく、やっても無駄になるか、あるいは大幅な改編を出勤してからやらなければならなくなるだろう。そんな作業に時間を割きたくないという気持ちが、持ち帰っていた資料に目を通す気持ちを萎えさせる。

現実逃避のためか、その分今週は余計な読書が進んだ。当初読む予定じゃなかったものまでガンガン読んでいて、お陰で積読蔵書も多少ははけた。本日ご紹介する図鑑もそんな1冊。連休二日目の枕元に持ち込み、就寝前と翌朝の1時間弱を使って、全部目を通した。図鑑なので。

そもそもこの本に手を出したのは、先月読んだビクター・パパネック『生きのびるためのデザイン』の延長である。パパネックも、複数の専門分野の人が、垣根を越えて協働し、課題解決につながるものやサービスのデザインを考えよと、1970年代には既に提唱していた人である。それを、21世紀的文脈において、どこでどうデザインされたのか、それをビジュアルに見られる図鑑を手元に置いておきたかったというのが購入の意図。ひょっとしたら、全5巻といわれるこのシリーズ、続刊についても買い揃えちゃおうかとも思っている。

本書には、1件のみだが開発途上国の課題解決にプロダクトデザインが生かされている事例が紹介されている。南アフリカのデザイン事務所が考案した水運搬タンク「Qドラム」で、これはこの手の書籍を昔重点的にブログで扱った際にも、最も僕が印象に残った事例の1つとして紹介した記憶がある(山崎亮『ソーシャルデザイン・アトラス』)。これは目からうろこであった。

昨年11月にインドを訪問した際、オディシャ州で訪れた公立学校で、学校菜園を始めたはいいが、水場から菜園までの50メートルほど距離があるので、水を運ぶのが大変だから援助して欲しいと生徒に言われた。だったら最初から菜園をそんなに離れた場所にしなけりゃよかったじゃないとか、もっと言えば、50メートルってそんなに大変な距離なのか、とか思わないでもなかったが、Qドラムのことが頭にあったので、「援助はできないけど、自分たちでどうしたらいいか、もう少し考えてみてよ」と言って返した。

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