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『麒麟児』 [読書日記]

麒麟児

麒麟児

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/12/21
  • メディア: 単行本
内容紹介
『天地明察』の異才が放つ、勝海舟×西郷隆盛! 幕末歴史長編!慶応4年3月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。2人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰った。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。3月14日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた2人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。

皮肉なもので、帰国して最初の仕事は、日本史の学び直しとなった。僕の日本史といったら、政治史に関しては徳川三代将軍・家光の頃で終わっているし、幕末から明治・大正・昭和に至る近現代の歴史といったら、イザベラ・バードら外国人による日本旅行記か民衆史、あるいは仕事で集中して読んだ繊維産業の歴史ぐらいの読書しかしていない。政治外交史というのは、僕にとってはまったく不勉強だった領域だ。

それを今さら学術書を読んでにわか勉強したって、有識者はおろか、今の仕事に以前から関わっておられた関係者の方々には遠く及ばないし、政治外交史のエキスパートになるわけではないから、大雑把にではあっても政治外交史はつかんでおいて、自分の勝負は別の場で行うというのが、知識弱者である僕の戦術だと自覚する。

そこで考えられる方法論は2つある。1つは、引き続き自分の関心のある近現代史の領域で自分の理解を深めることであるが、もう1つは、自分にとっては不勉強な近現代の政治外交は、それを扱った小説を読むことでお茶を濁すというものである。特に、幕末から明治初期は、小説で扱われることが多い。海音寺潮五郎は西郷隆盛が登場する作品をライフワークとして度々発表したし、他にもかなりあるだろう。

ということで、本日ご紹介する小説は、冲方丁の『麒麟児』である。

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『奇跡のものづくり』 [読書日記]

奇跡のモノづくり

奇跡のモノづくり

  • 作者: 江上 剛
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本
内容紹介
世界に冠たる日本の技術を支える人たちは、何に悩み、何に挫折し、何に希望の光を見出したのか?日本再生に今こそ必要な人生哲学、仕事観がここにある!GDPがついに中国に抜かれ第三位に転落した日本。デフレ基調の不景気に歯止めがかからぬなか、国内産業は東日本大震災で未曽有の危機に直面している。しかし、意外にも業績が好調で、将来展望の明るい企業はまだまだ沢山あるという。なかでも、日本固有の技術、日本人ならではの気質を活かした製造業が元気だ。銀行員時代から数多くの事業・企業経営を客観的に眺めてきた著者が、「日本再生に今こそ必要な人生哲学、仕事観」を追い求めて、全国各地の製造業を徹底取材。伝統的産業から最先端企業まで、生産現場で汗する“仕事人”たちを訪ね、その世界基準といわれる技術や販売戦略を、時に熱く、時にクールに臨場感豊かにレポートする。効率化でもコストダウンでも利益極大化でもない……夢中になれば道は拓かれる!経済小説の旗手が描く血湧き肉躍るヒューマンドキュメント。日本再生に今こそ必要な人生哲学、仕事観がここにある!

昨日ご紹介した『ハードウェア・スタートアップ~』と同様、「ものづくり」ということでは本書も半年ほど前から読みたい本のリストに挙げていた。アマゾンの内容紹介を読む限りでは、知らない会社もないわけではなかったが、名の知れた会社も結構紹介されている。いずれも個人のスタートアップではなく、従業員がそこそこいる中小から大手企業なので、その点では慌てて読むべき本ともいえず、日本に戻ってきてから読もうと決めていた。

これくらいの頑固さと根気が必要なのだというのはよくわかる。そういうのが乏しい国で暮らしていたので、この点での日本人の凄さというのを感じるには本書はとても良い。こういうこだわりの部分を、外国の人には是非知って欲しいと思う。これくらいの根気が必要なんですよ。何事もそんなに簡単には成功は得られない。

粋を極めた技術なので、取材して文章に落し込む著者にも、描写で難しいところも相当あったに違いない。よく取材して、よく学んで描かれていると思う。

一方で、とはいってもこれからが大変だろうなという気もしてしまった。本書が出た2011年頃と比べても、今は至るところで「人手不足」というのが足かせになってきているように思える。本書で紹介されていた企業の中でも、後継者が既にいるケースはいいとしても、技術の継承、事業の持続可能性についてあまり触れられていないケースもあった。それ、8年後の今はどうなっているのだろうか。気になった。

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『テクノロジー・スタートアップが未来を創る』 [仕事の小ネタ]

テクノロジー・スタートアップが未来を創る: テック起業家をめざせ

テクノロジー・スタートアップが未来を創る: テック起業家をめざせ

  • 作者: 鎌田 富久
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2017/12/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
ロボットのSCHAFT、人工衛星のAxelspace、パーソナル・モビリティのWHILL、印刷する電子回路のElephantech、がんワクチンのVLP Therapeutics…。いま東京大学をはじめ、大学発ベンチャーが熱い。東京大学の人気講座・アントレプレナー道場の看板講師であり、自らも学生時代にACCESSを共同創業し、現在はエンジェル投資家でもある著者が、豊富な経験から指南する大学発ベンチャーのススメ。

半年ほど前から本書を読んでみたいと思っていたが、帰国してようやく手に取ることができた。今さら自分自身でハードウェア・スタートアップを目指したいとは思わないが、理系の我が子が飛び込んでいくこれからの社会がどういうところなのかを知る意味では、いい読書になったと思う。ちなみに本書は図書館で借りた。

帰国までは手に取れなかったとはいえ、今なぜ読んだのかというと、4月26日に行われた僕の帰国報告会に間に合うようにしたかったからだ。この年齢になってテクノロジーに関心を持ったのは、自分が役職定年や定年退職期を迎えて年収が激減した時に、身の回りで必要になりそうなものはある程度自分で作れる、あるいは修繕できるようにしておきたいと思ったからでもあるが、もう1つの理由は、このトレンドはブータンのような内陸国にももたらすメリットが大きいからでもある。報告会の前に自分の論点を頭の中で整理しておきたかったし、帰国して1カ月、前職とは全く異なる仕事を取りあえず始めて前職の記憶がかなり薄れてしまったので、モチベーションを立て直すきっかけが欲しかったということもある。

しかし、残念ながら報告会までに読了することはできなかった。結局今の仕事に追いまくられたからだ。

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