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事前に知っていればな~ [ブータン]

医療の質と患者の安全を議論する国際会議
International conference to discuss quality and patient safety
Kuensel、2018年11月10日、Dechen Tshomo記者
http://www.kuenselonline.com/international-conference-to-discuss-quality-and-patient-safety/
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生体研究におけるインフォームドコンセントを巡る課題
Challenges involving informed consent in bio-medical research
Kuensel、2018年11月10日、Rinchen Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/challenges-involving-informed-consent-in-bio-medical-research/

医療過誤撲滅には調査と啓発が欠けている
Medical errors lack study and awareness
Kuensel、2018年11月10日、Nima、Sonam Choden記者
http://www.kuenselonline.com/medical-errors-lack-study-and-awareness/
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『モディが変えるインド』 [インド]

モディが変えるインド:台頭するアジア巨大国家の「静かな革命」

モディが変えるインド:台頭するアジア巨大国家の「静かな革命」

  • 作者: 笠井 亮平
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
「SNSフォロワー数世界一のリーダー」といわれる第18代首相の姿を通して、現代インドの政治、経済、社会、外交を概観し、南アジア情勢と日印関係を気鋭の研究者がわかりやすく解説する。

理由あって今はブータンにいる身であるが、古くからのフォロワーの方々には、「インドはどうなったんだ」とお叱りを受けそうなので、久々にインドネタで行かせてもらおうと思う。(…と言いつつ、今僕はインドに来ている。1泊だけの予定で。)

最近のインド本って全然読んでいないので、久しぶりにインドに来るにあたって、1冊ぐらい最近出た本を読んでおこうと思い、キンドルでダウンロードした。今のインドの政治経済外交と、そこに至るまでの経緯をおさらいするには良い本だと思う。

以前、僕は突然来られた方に、「ブータン情勢を10分で話せ」と急に要求され、しどろもどろになってるうちに、「お前じゃ話にならん」と怒られ、お客様をご立腹の状態でお帰しした苦い経験がある。自分よりもずっとご年配の方に、急に来られて「ブータン情勢」と言われて、その時は何をどう10分でまとめればいいのか全く頭の中が真っ白になってしまったが、この本を読んだら、ああ「情勢」と訊かれた場合は政治、経済、外交あたりをそれぞれ1トピックぐらいでさらっと喋れば10分で及第点が付くのかなと思った。僕がブータンでの仕事を終えて日本に帰って「喋ってくれ」と頼まれた時の話の枠組みとして、この本は参考にしたいと思う。

さて、その本の紹介文の中から、あえて「社会」を外したのは、紹介文が言うほど、「社会」っぽさが感じられない記述だったからだ。日本大使館で専門調査員をご経験されたインド研究者の方が書かれた本だと聞けば合点がいく。大所高所の記述、いかにも首都からものを見ているという記述になっていて、市井の人々の暮らしがなかなか見えない。むしろ政治経済の中枢をウォッチしてきた人でないと書けない内容で、その点では本書はとても有用だと思う。でも、南インドや北東州から見たデリーはどうなのかとか、それぞれの地域の情勢まではわからない。

また、僕自身がブータンにいるから余計に思うのだが、もうちょっと西ベンガルやアッサムの情勢について詳述された本でもあったら本当はいいのになと思ってしまう。ないものねだりだとわかっちゃいるが。

そもそもインドを200頁少々の本の中で語れというのは難しく、読者だってインドの何を知りたいのかという関心はそれぞれ違うから、それに1冊の本で答えるというのはとてつもなく困難な仕事だとは自分もわかっている。全国紙だって数紙あるし、地方紙でもそこそこ購読者数があるのだってある。各々視点やポジショニングも違うので、それらを全て読みこなして分析して行くのでも大変な作業である。しかも、デスクリサーチだけやってれば事足りるというわけでもなく、政策ウォッチャーや政権中枢にいる影響力のある人々にも食い込んでいないといけないわけだし。

でも、最大公約数的に、インド駐在を命じられた企業マンが取りあえず最初に読む本、あるいは、駐在員生活を終えて日本に帰られた方が「インドについて話してくれ」と言われた時に、自分自身の見聞だけに頼らないで、ある程度無難にインドについて知ったかぶりをするには、こういう本はネタ本として極めて有用だろうと思う。

さあ、そんな感じで復習したので、僕はこれから街に出ようか!

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『ソーシャルイノベーション』 [持続可能な開発]

ソーシャルイノベーション 社会福祉法人佛子園が「ごちゃまぜ」で挑む地方創生!

ソーシャルイノベーション 社会福祉法人佛子園が「ごちゃまぜ」で挑む地方創生!

  • 作者: 竹本 鉄雄
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
 佛子園は1960年に発足した社会福祉法人で、知的障害児の入所施設としてスタートした。95年からは知的障害者の更生施設の運営にも乗り出し、98年には障害者就労施設として奥能登に地ビールレストランを開設。地元福祉関係者や行政の間ではよく知られる存在だった。
 その名が全国区に躍り出たのは、2013年9月に金沢市郊外にオープンした「シェア金沢」がきっかけだった。監修者である雄谷理事長は、周辺地域住民が集まる福祉の町づくりを志向し、約1万坪の敷地にサ高住、障害児入所施設、訪問介護施設などのほか、天然温泉やキッチンスタジオなど周辺地域から人を呼び寄せる多様な施設を「ごちゃまぜ」をコンセプトに集積。高齢者、障害児、地域の人々が交流するコミュニティを形成した。「シェア金沢」は、地方創生を推進する政府にも注目され、日本版CCRC(生涯活躍のまち)のモデルともされた。
 その佛子園が約60年の歴史の中で積み重ねてきた大小さまざまな試みは、「ソーシャルイノベーション」に相当する。本書では、佛子園及び雄谷理事長ならではの先進性、独自性あふれる取り組みを。このソーシャルイノベーションの横串としてつまびらかにしていく。

佛子園はブータンでも事業展開している数少ない日本の市民社会組織。その佛子園の歩みが1冊の本にまとめられたというので、さっそくお取り寄せしてみることにした。分量的にも164頁程度なので、サクサク読める。佛子園の歩みは断片的にはこれまで知る機会も多かったので、飛ばせるところは飛ばして、3時間ほどで読了した。

「ごちゃまぜ」というコンセプトには大いに賛同する。歳を重ねるにつれて動作に障害が生じるのは当たり前のことなので、高齢者と障害者を分けて論じるのにはそもそも反対だし、それぞれを隔離して高齢者は高齢者ばかり、障害者は障害者ばかりの共同生活コミュニティを作るのにもあまり賛成ではない。ブータン教育省は全国に特殊ニーズ教育(SEN)指定校を増やし、アクセシビリティ改善や指定校の教員のスキルアップ等を図る計画だ。そこに障害を持った児童を集めることでサービス効率は高まるだろうが、SEN指定校から一歩外に出ればそこはアクセシビリティの問題だらけだ。SEN指定校を取り巻く地域社会全体に包容力がないと、本当の意味での社会的包摂性は得られない。また、障害を持った児童をSEN指定校に隔離してしまうことで、一般の学校の生徒には障害児の存在というものをわかりにくくしてしまう。

高齢者であろうが、障害者であろうが、地域の中で受け入れて、地域の人々が当たり前のようにケアしていく社会の実現が求められる。そういう多様性のある社会では、本書の文脈とはちょっと異なるけど、「イノベーション」は起こりやすい。障害者を見たことも接したこともない人に、その障害を軽減するようなデバイスを開発しようというアイデアが閃く可能性は非常に低い。常に接していないと、高齢者や障害者のニーズに対してアンテナを張ることは難しい。

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『この世界が消えたあとの科学文明のつくり方』 [仕事の小ネタ]

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた (河出文庫)

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた (河出文庫)

  • 作者: ルイス ダートネル
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/09/06
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
文明が滅びたあと、あなたはどのように生き残るのか?穀物の栽培や紡績、製鉄、発電、印刷、電気通信など、人類が蓄積してきた厖大な知識をどのように再構築し、文明を再建するのか?日々の生活を取り巻くさまざまな科学技術と、その発達の歴史について知り、「科学とは何か?」を考える、世界15カ国で刊行の大ベストセラー!

いやぁ、面白かった。450頁もあるから読むのも大変だったけど、面白かった。河出書房、ホント目の付け所が違う。今年読んだ本の中でも、出色の面白さだ。

今、ここで急に大地震でも起きて、何もかも倒壊してしまって、でも自分を含めて数人で辛うじて生き残った時、生きのびるために何からどう手を付けていったらいいのかはにわかには思い付きにくい。そういう、当面を生き残るための知識から始まって、長く生きのびるための様々な知識、科学的裏付けのある様々な知識がこの1冊に詰まっている。

まあ、そんな極端なケースが本当に起きるのかどうかは定かではないが、僕らが開発途上国で仕事していれば、日本にいる時よりもものがないのが当たり前の世界なので、実はこういう本が座右にあるだけでもものを見る時には非常に役立つ。農業を考えてみても種子のこと、肥料のこと、水のことなど考えなければいけなくなるが、実際に日本で農業に従事していたわけでもないので、にわか知識で渡り歩かなければならないことだってある。石灰のような鉱物資源なんてのも同様で、何をどう使っていったら自分達の生活を良くして行けるのかというのを考えるにあたり、鉱物資源をどう加工したら活用可能なのか、恥ずかしながら僕らはネットで調べたにわか勉強で対応しなければならない。

その肝心のネットすら使えない状況にある開発途上国の地方の村でそういう知識が必要になったとしても、多分調べられなくてろくな知識共有もできないだろう。僕らは先進国に生まれ育ったからといって、文明が崩壊してしまった状況やなにもものがない状況にポンと置かれた時には全くの無力で、そこには先進国だ途上国だといった区分は意味をなさなくなる。知識を持っていて、使いこなせる奴が強いのだ。

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機会を奪っているのは外国人の方か? [ブータン]

新たに4職種で外国人締め出し
Foreign workers are now closed to four more occupations
Kuensel、2018年11月3日、Rinchen Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/foreign-workers-are-now-closed-to-four-more-occupations/

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【ポイント】
労働省関係者によると、11月より、4つの職種について、政府は外国人労働者の就労許可証の更新、新規発給は行わないことになった。この措置は、2012年制定の外国人労働者採用管理規制法に基づくもので、対象となるのは「家具大工」「建築士」「建設工事監督」「就学前教育(ECCD)管理士及びスタッフ」の4つである。

この措置は、同職種でのブータン人労働力の活用促進と技能向上の機会提供を狙ったものでもある。ソナム・ワンディ労働局長によると、「国内で同等の技能を持った人材が得られるのであれば、外国人労働者の技能を活用することはできない」という。これら4職種については国内人材に十分な技能があると同局長は主張。

同様に外国人労働者の就労不可とする職種はこれまで28職種あった。これには「会計士」「行政官」「企業管理職」「コンピュータ・オペレーター」「電気工」「水道工」「庭師」「受付」「仕立屋」「警備員」等が含まれる。今回の4職種追加で、32職種となる。

一方、労働省が10月20日及び22日に公告した内容では、「土木技師、電気技師」「小中学校教員」という2職種も含まれていた。ソナム・ワンディ局長によると、この2職種についても検討は行われたが、最終的にはリストから削除されたという。先の公告は、ドラフト段階のものが誤って公開されてしまったものだという。

労働省が実施した調査によれば、2016年、17年に「家具大工」の研修を受けた国内人材は344人おり、うち職に就いている者は176人しかいないという。家具製造業は国内に408の事業所があり、そこで働いている外国人労働者は285人にのぼる。同様に、「建築士」も国内には十分な人材がいるのに、4年間無職状態の者もいる。ECCDは新しい概念だが、既存の教員ならこの仕事をこなせるだけの十分な技能がある、そう労働局長は強調する。

同省統計によると、現在ブータン国内で就労している外国人労働者は5万3000人いるという。

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ビジネス環境は良くなってないのか? [ブータン]

ビジネス環境評価で81位にランクダウン
Bhutan drops to 81st position in ease of doing business
Kuensel、2018年11月3日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-drops-to-81st-position-in-ease-of-doing-business/

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【ポイント】
世界銀行が毎年この時期に公表するビジネス環境評価『Doing Business』の2019年度版で、ブータンは前年の73位からランクを落とし、81位と位置付けられた。前政権はこのランクを上位50位以内に引き上げることを目標に掲げていたが、これが実現できなかった格好になる。2018年度版ランクでは、ブータンは南アジアで最上位の評価を受けていたが、2019年度版ではこれをインドに譲り(77位)、2位に甘んじる結果に。

Doing Businessには10の評価指標があるが、「納税」「越境貿易」「契約履行」の3指標については、ブータンのランクは比較的高い。一方で、「財産登記」(54位)には3つの手順を踏んで77日要する。「電気敷設」(73位)は、4つの手順で61日を要する上に、電力供給の安定度と料金体系の透明性について8段階評価で4にとどまる。「与信」(85位)は、信用情報センターのカバー率が35.9%にとどまることによるもの。「建設許可取得」(88位)については、21の手続を踏むのに150日を要することが反映されている。「新規事業設立」(91位)は、起業に至るまでに8つの手続を経て12日かかることが評価された結果。

「小株主保護」(125位)、「事業清算」(168位)は、前例がないことで評価困難として低評価につながっている。

Doing Businessは、多くの国が自国の規制枠組みの有効性について客観的な評価を確認するのに用いられているが、世銀が述べるように、ビジネス環境に影響を与える要素、政策・制度をすべて盛り込んだ評価とはなっていない点には注意が必要。マクロ経済の安定性や金融制度の発展度、市場規模、不正腐敗の頻度、労働力の質等はカバーしていない。

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GSTがやってくる [ブータン]

「暫定予算が経済成長に影響」とIMF
Interim budget likely to affect GDP growth: IMF
Kuensel、2018年11月1日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/interim-budget-likely-to-affect-gdp-growth-imf/

【ポイント】
国際通貨基金(IMF)は10月26日、憲章第4条に基づく対ブータン協議の結果を発表。これによると、2018/19会計年度のブータンのGDP成長率は、今年7月から12月までの暫定予算期に資本投資が行われなかった影響を受けて、4.8%に減速すると予想。一方で、マンデチュ水力発電事業が操業開始することで、2019/20年度の成長率は6%程度にまで回復し、さらに2021/22年度には残る2件の大規模水力発電事業が操業開始見込みであることから成長率はさらに高まるものと予想している。

一方、IMF理事会は、今後のブータンの資本投資は国内歳入と国内民間資金動員の増加を以って大規模に進められるべきとし、2020年7月までに施行が予定されている物品サービス税(GST)と、それに伴う免税措置の適用削減を歓迎した。免税措置は2017年のGDP成長率換算で3%程度の上乗せが行われた形となる。

物品サービス税2020年までに施行へ
GST regime to be implemented by 2020
Kuensel、2018年11月2日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/gst-regime-to-be-implemented-by-2020/

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タグ:財政 租税 GST
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『こころのつづき』 [森浩美]

こころのつづき (角川文庫)

こころのつづき (角川文庫)

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: 文庫
内容紹介
"やさしさ"はきっと近くにあるから――日常の些細な出来事を丁寧に掬い取った、心あたたまる感涙の家族小説集。ロングセラー『ほのかなひかり』に続く、シリーズ第二弾。

前回森浩美作品を読んだのは2017年3月の『終の日までの』以来であった。今、とんでもない大部の本と格闘していて、あまりにも読み込みスピードが遅くなっているので、息抜きに小説でも読もうと思って贔屓の作家の新作はないかと当たってみた。久しく読んでいないという意味では重松清なんかもそうなのだが、キンドルでダウンロードできないので諦めた。今回探し出した『こころのつづき』は新作ではないが、森浩美は続けて読むとありがたみが落ちるので、ある程度間を置こうとあえてリザーブにしていたのだと思う。

お陰で森作品を読み始めた頃に感じたような新鮮さを感じながら、改めて読むことができたと思う。重松清と扱うテーマがわりと似ているけれど、重松作品のように読者にある価値観を押し付けてくるようなところがなく、ある程度読者側の感受性に委ねてくれる余韻を残して終わらせてくれるほどよい作品が多いという印象。収録作品は順番に「ひかりのひみつ」「シッポの娘」「迷い桜」「小さな傷」「Fの壁」「押し入れ少年」「ダンナの腹具合」「お日さまに休息を」である。どうも同じ短編集の中でも限界効用逓減の法則は働くみたいで、個人的には最初の作品「ひかりのひみつ」がいちばん良かった。

ただ、本書はどうやら作品の並べ方にも仕掛けがあるようで、最初の「ひかりのひみつ」と最後の「お日さまに休息を」は対を成していたりする。シングルマザーに育てられた女性が、結婚を翌年に控えた12月、自分が生まれる前に死んだと聞かされていた実の父親が軽井沢で働いていると聞き、ひとり訪ねて行って、ランタンが灯る教会で意外な真実を聞かされるという前者は、これだけ読めばウルっと来る話なのだが、結婚前に実父に会ってわだかまりを解消できた後のこの主人公が、結婚後に新郎の親族からどのように見られているのかというのが最後の「お日さまに休息を」では登場する。この主人公・奈々にしてそうなのだから、他にも「周囲は自分のことをこう見ているんだけど、実際の自分はこうなんだ」という意外性をどこかに残しながらどの話も展開していく。驚きがあるわけではないけれども、ものの捉え方は当事者ひとりひとりによって異なるものなのだというのが改めての学びかと思う。

一方でちょっと難しかったのは、55歳という年齢のオッサンがこの8つの短編の中でどのように位置付けられるかという点。最愛のペットの死とか、いじめとか、姉さん女房とか、設定的に僕の世代の男性が登場しにくい話だったりして作品世界にイマイチ入り込めなかったところもあったし、名前としては登場しても、実物が作品の中に出てこないところで僕らの世代のオヤジが語られている作品もあった。実際にその人も登場して主人公と会話も交わすというシーンがあるという点でも、最初の作品「ひかりのひみつ」は良かった。

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