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所得格差⇒地価高騰⇒若者の犯罪 [ブータン]

所得格差、第11次五カ年計画期間中に拡大
Income gap widens in 11th Plan
Kuensel、2018年7月5日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/income-gap-widens-in-11th-plan/

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【ポイント】
今年6月末で終了した第11次五カ年計画の成果に関する記事。間もなく公表される同五カ年計画最終報告書の内容をベースに、主要達成指標(KPI)であった、①所得貧困率の5%以下への引き下げ、②ジニ係数の0.3未満への引き下げ、について、いずれも目標未達で終わったことを指摘。①については、12%(2012年)から8.2%(2017年)へ、②については0.36(2012年)から0.38(2017年)に微増。所得五分位階級別で第Ⅰ~第Ⅲ分位の個人の一人当たり消費額は5年間で減少したのに対し、第Ⅳ~第Ⅴ分位では増加し、第Ⅰ分位と第Ⅴ分位の格差は7倍に拡大した。

◇◇◇◇

経済成長、金融アクセス、土地希少性、送金により、ティンプーの地価は高騰
Economic growth, access to finance, land scarcity and remittances lead to skyrocketing land prices in Thimphu
The Bhutanese、2018年6月23日、Tenzing Lamsang記者
https://thebhutanese.bt/economic-growth-access-to-finance-land-scarcity-and-remittances-lead-to-skyrocketing-land-prices-in-thimphu/

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【ポイント】
経済危機に見舞われた2013年、ティンプーの地価は30~40%の急落を記録したが、2014年に下げ止まり、2015年は回復基調に入ったが、2017年、2018年はさらなる急騰を見せ、2012年のピークを上回るようになった。最近の例では、市内南部のオラカ地区の土地が、売出し後わずか4分で、0.1エーカー当たり85万5000ニュルタムで売買成立した。この土地の昨年の地価は50万ニュルタムだった。地価の高騰は、単純に需要が供給をはるかに上回っているから起きているが、その背景には見出しで挙げられた要因がある。(送金とは、オーストラリアや米国で暮らすブータン人が、渡航先で稼いだお金を元手に、帰国後最初に行うこととして土地の購入があるから。)

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求人件数>若年失業者数 [ブータン]

若年失業者5,371人に対して求人は6,373件
5,371 unemployed youths vs 6,373 job vacancies in Bhutan
The Bhutanese、2018年7月7日、Sonam Yangdon記者
https://thebhutanese.bt/5371-unemployed-youths-vs-6373-job-vacancies-in-bhutan/

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【ポイント】
国営企業で初任給が15,000ニュルタム、職の安定性は保証されていて、従業員退職準備金積立も付き、公務員同等の俸給表や待遇も適用される―――そんな仕事であってもブータンの若者は手を出そうとはしない。FMCLやGreen Bhutan、Bhutan Livestock Development等の国営企業には、合計586件の求人がある。にもかかわらず、ブータンの若者は応募することすら拒否している。

労働省雇用人材局のシェラブ・テンジン局長に言わせると、現状は若者の非現実的な願望とデスクワークやブルーカラー職種に対する姿勢によるところが大きい。「彼らは自分のキャリア選択について確たる意思があるわけでもなく、その仕事に就いてもいいのかどうか混乱を来しているのです。その上、彼らは主にデスクワークの仕事を中心に考えていて、マネジメント的仕事にすぐに就けることを期待しています。事務職以外の仕事は考えもしません。肉体労働を伴うからです。」さらに、ほとんどの若者、特に都市に住む若者の場合、合同家族制が現存していると急いで仕事に就かねばならないという切迫感に欠ける。

労働省は未だ埋まっていない求人6,373件を求人サイトに掲載。国営企業以外にも、外資系のホテルや観光産業、フロントデスク、工房、パン屋、建設業、農業等の求人がある。一方で、2017年国勢調査では、失業中の若者が5,371人いることが明らかになった。若者の失業率は10.6%である。

ちなみに労働省によれば、国内求人のある事業所の労働条件や労働環境は、2007年労働雇用法及び関連規則により保証されている。

労働省関係者によると、同省では、高校卒業後の若者をできるだけ職業訓練施設へと誘導したい考えでいるという。ここで若者のマインドセットを変え、仕事に合ったスキルをここで身に付けさせたいとしている。シンガポールの場合、高校卒業後の進路として技術職業訓練系の進路選択をする若者が全体の6割を占めている。職業訓練校に在籍する間に、企業でのインターンを経験するという。

今後の方向性として、政府は、第12次五ヵ年計画において、最低日給制から時給制に移行して労働時間のフレキシビリティを高め、建設業であっても若者が入りやすい環境を整える必要があると考えている。加えて適切な社会保障制度、年金恩給制度、家賃補助制度などの拡充も必要との認識。

労働省が2013年から2018年にかけて実施した雇用促進プログラムでは、34,887件のポストが提示され、これに33,064人の若者が就いた。国営企業への就職あっせんにより、1,509人が職に就いた。6月28日の国会演説で、トブゲイ首相は国内には5,000件の求人があると述べたが、これは今年5月に開催された若者就職フェアに向け、労働省が集めた求人を合計した4,459件が根拠となっている。これに政府の海外直接雇用制度や外資系ホテルの求人1,914件を足すと、労働省が言う6,373件という数字になる。

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『データの見えざる手』 [仕事の小ネタ]

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

  • 作者: 矢野 和男
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2014/07/17
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
人間の行動を支配する隠れた法則を、「方程式」に表す。ヒューマンビッグデータがそれを初めて可能にした! 時間の使い方・組織運営・経済現象など、人間と社会に関する認識を根底からくつがえす科学的新事実。科学としての確立と現場での応用が同時進行し、世界を変えつつある新たなサイエンスの登場を、世界の第一人者が自ら綴る!

昨年12月、サンディ・ペントランド『ソーシャル物理学』という本を紹介した。一見意味のないような微妙な身体運動の大きさやタイミング、たまたま誰の近くにいたか、たまたま何を目にしたか、などに関連する「データのパンくず」に、社会を理解するためのお宝が含まれているという趣旨の本で、しかも技術畑の人間でない僕のような読者にでもとっつきやすく書かれた良書だと述べている。

同じような趣旨のものを、技術畑の読者向けに書くと、本日ご紹介するような本の内容になっていくのかと思う。日立製作所中央研究所がやった「ビジネス顕微鏡」研究については、西垣通『集合知とは何か』など、これまで読んできた文献の中でも度々紹介されてきたが、本書はその研究の当事者が執筆したもので、よりその実験そのものの背景や実施概要、結果についての考察などが詳述されている。読みごたえは当然あるが、技術畑の人じゃないと理解しづらい記述も多くて、読みにくくもあった。

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難しい教員の業績評価 [ブータン]

教育省、個別教員成果管理は同省に移管するよう主張
MOE proposal says IWP should be done by MoE and ranking of teachers should be done by school authorities
The Bhutanese、2018年7月7日、Pema Seldon記者
http://www.kuenselonline.com/spirit-possession-accepted-as-circumstantial-and-corroborative-evidence-in-trongsa-double-murder-casehttps://thebhutanese.bt/moe-proposal-says-iwp-should-be-done-by-moe-and-ranking-of-teachers-should-be-done-by-school-authorities//

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【ポイント】
首相からの指示を受け、教育省はこれまで、個別業績評価システム(IWP)の教員への適用のあり方につき見直し検討を進めてきた。タスクフォースが全国11県、3市にわたって887人の教員、161人の学校スタッフ、74人の校長、3人の学校カウンセラーにヒアリングを行い、IWPの教員への適用には、教員の注意を教務から他の学校活動に逸らす、教員の書類準備にかける負担の増加、自分の実績を示すエビデンスの収集にかける負担の増加、IWPの教員評価ランク付けのあり方等に課題があると結論付けた。

これに基づき、教育省では提言をまとめた。

第1に、現在王立人事院(RCSC)所管となっているIWPについて、教員及び学校スタッフのIWPの所管をを教育省に移し、学校レベルでのIWPの評価をより徹底させること。

第2に、現在6つある教員IWPの成果領域のうち、教務に直接関係する「カリキュラムの実践」「包括的評価」の2領域のウェートを各25%に高め、より教務に集中しやすくする。

第3に、書類準備負担に関しては、教務関連領域の評価は生徒のテスト成績や年間授業計画、日次授業計画等、元々ある文書を用いて行うこととする。評価の80%は、これらの文書を用いる。教務に直接関連しない4領域での評価では文書に基づく評価のウェートは5%に抑制。

第4に、教員評価結果のランク付けは、学校長と学校運営委員会が行うこと。現在4段階評価になっているが、各ランクの人数制限(クオータ)は設けない。

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タグ:教育
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憑依霊の言葉が判決につながる国 [ブータン]

憑依霊の言葉がトンサ殺人事件の裏付けに
Spirit possession accepted as circumstantial and corroborative evidence in Trongsa double murder case
Kuensel、2018年7月3日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/spirit-possession-accepted-as-circumstantial-and-corroborative-evidence-in-trongsa-double-murder-case/

【ポイント】
2015年8月にトンサ県ケンガラブテンで起こった殺人事件に関して、県裁判所に検察側から、被告人カドが有罪であるとの証拠として、殺された被害者の霊が人に憑依して語った言葉が調書として提出された。この調書には9名が署名しており、中には殺された16歳の男子高校生が通っていたサムチョリン高校の教員と4人の生徒も含まれており、彼らは男子高校生の霊が学校の料理人に憑依して、彼とその祖母を殺害したのが彼の家の門番を務めていたカドであると述べたのを目撃したという。

この料理人は小学校も出ていないが、憑依された後、流暢な英語を話し始め、校長や被害者が好きだった教師、ガールフレンドと会いたいと何度も語ったという。

検察官は同じく、サムチョリン高校の別の女子生徒にも霊は憑依し、カドがやったと語る映像も証拠として提出。憑依霊の言葉であってもこの国の文化では受入可能なものであるとし、証拠として認めるよう裁判官に求めた。裁判官は、この国の文化や伝統は憑依霊を認めており、証拠法に基づき、状況証拠、裏付けとなる証拠としてこれを受け入れると述べた。

一方、被告人のカド(46歳)は無罪を主張。彼がトンサに連れてきた捜査犬はマンデチュ水力発電プロジェクトの警備員を務めている別の男性が真犯人であり、自分ではないと強く主張した。地元警察はこの警備員を5日間にわたって拘束したが、最終的には解放したという。警察と検察側は、この犬が警備員を特定できなかったこと、また被告人が証拠隠滅を図ったふしがあると主張。カドは2件の殺人の罪で終身刑、さらに武装強盗罪で9年、証拠隠滅と訴追妨害の罪で1カ月の懲役が言い渡された。

刑が確定すれば、憑依霊の言葉が証拠として提出され、判決に影響を与えた最初の事例となる。

◇◇◇◇

もはや解説は不要だろう。こういうことがあり得る国なのだというのがわかったエピソードであった。

タグ:トンサ
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2017年国勢調査の結果、ようやく公表 [ブータン]

ブータンの人口は73万5,553人
Bhutan's population is 735,553
Kuensel、2018年6月26日、Tshering Palden記者
*理由はわかりませんが、HPにURLが掲載されておりません。

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【ポイント】
6月25日、昨年5月末に実施された国勢調査(Population and Housing Census of Bhutan、PHCB)の結果が、トブゲイ首相により公表された。これによると、ブータンの総人口は2017年5月時点で73万5553人で、前回調査時から10万571人増加した。総人口のうち、68万1720人がブータン人だという。

人口関連指標では、合計特殊出生率(TFR)は前回(2005年)の2.5から1.7に低下。人口置換水準(2.1)を割り込んでおり、首相も懸念材料として認めた。一方で識字率は59.5%から71.4%に上昇。農村人口は62.2%。出生児平均余命は70.2年と、ブータン史上初めて、寿命が70歳を上回った(前回は66.3年)。女性の方が71.7年と長寿で、男性は68.8歳。こうして長寿化が進むことで、従属人口指数も低下が見られ、前回60.6%から、今回は47%にまで低下。

2017年の失業率は2.4%。うち都市部では4.6%で農村部では1.3%だった。若年失業率は全国平均で10.6%と高いが、都市部はさらに高くて16.7%を記録(農村部は6.7%)。

ブータンで生まれた人口の48.7%は、自分が生まれたゲオッグ(郡)から他所に転出、39.8%は生まれたゾンカク(県)からも他県へと転出していることがわかった。また、約22%は農村から都市部へと流入。人口社会増が最も多かったのはティンプー県、ティンプー市、プンツォリン市で、逆に社会減げ顕著だったのはシェムガン県、ルンツィ県、タシガン県だった。

世帯数は前回12万6115世帯から29.2%増加、16万3001世帯となった。同時に小家族化が進んでおり、1世帯当たりの平均家族数は4.6人から3.9人に減少。

家庭内照明に電気を利用している世帯は、前回57.1%から96.6%にまで上昇。飲料水へのアクセスも、84.5%から98.6%に改善したが、一方で18%の世帯が、飲料水には信頼が置けないとも回答。トイレ普及率は74.8%だった。自宅から30分以内で車両通行可能な道路に出られる世帯の割合は、前回63%から92%へと改善、道路網整備が進んだことも反映されている。

2017年PHCBは全国レポートの他に、全20県の県別レポートも整備、いずれも国立統計局(NSB)ウェブサイトからダウンロード可能。

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『町を住みこなす』 [持続可能な開発]

町を住みこなす――超高齢社会の居場所づくり (岩波新書)

町を住みこなす――超高齢社会の居場所づくり (岩波新書)

  • 作者: 大月 敏雄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/07/29
  • メディア: 新書
内容紹介
人口減少社会における居住は、個人にも、地域にも、社会にも今や大問題。「一家族一住宅一敷地」という考え方はもはや古い。住宅に求めるものは、長い人生のステージに合わせて、さまざまに変遷していくことに注目。町の多様性をいかに担保していけるか。居場所づくりのユニークな事例を多数紹介し、これからの住まいのあり方を考える。

積読蔵書のクリアランスを久々に再開した。昨夜から今日にかけて、1冊読み切った。この本は昨年末に一時帰国した際に購入、一時期人口高齢化に関する書籍をやたらと読み漁っていた2006~07年頃のことを思い出し、ついつい衝動買いしてしまったものだ。

サブタイトルに「超高齢社会の居場所づくり」とあり、そこに惹かれて買ったものだが、実際に読み始めてみての印象はもっと都市計画に近く、20年後、30年後にどのような町であることが望ましいかを考えつつ、居住政策を誘導していかないといけないと説いている。キーワードは「35歳と生まれたて」で、短期的な利益を考えて住宅開発を進めると、世帯主が35歳前後で、小さな赤ちゃんがいる世帯がそこに集中し、そのコホートがそのまま20年後、30年後まで持ち上がり、子どもは成長して家を出てしまうと、高齢者ばかりのコミュニティが出来上がることが予想されるとしている。いわゆるニュータウンの高齢化の問題がそれである。

そこで著者が示しているもう1つのキーワードは「町の多様性」―――人口構成や世帯構成の多様性、建物の持つ機能や用途の多様性、家族間のやり取りの多様性、移住と定住の間にある地域への根付き方の多様性、地域に存在すべき「居場所」の多様性等を包含して、「町の多様性」という言葉でまとめている。

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橋とトンネルに秘められた日本の土木 [仕事の小ネタ]

びっくり! すごい! 美しい! 「橋」と「トンネル」に秘められた日本のドボク (じっぴコンパクト新書)

びっくり! すごい! 美しい! 「橋」と「トンネル」に秘められた日本のドボク (じっぴコンパクト新書)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2017/01/27
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
地形を克服し、物流・移動を確保して国土の骨格を造り上げる橋とトンネル。海を渡る橋から街中の小さな橋、流動に「風穴を開けた」長大トンネルから歩行用の小さなトンネル、無数にあるそれらは一見、無骨で味気なく見えるけれど、視線を向けてみれば個性がそこここに散りばめられ、そこに造られた必然性や個々の事情も見えてくる。橋やトンネルの発展の歴史も、世界や日本の産業史とも強く関わっていて、とてもドラマチックなのだ。この1冊で、橋とトンネルの見え方が変わります!

あまり頻繁にブログ更新すると、僕の仕事にまだ余力があると思われる読者の方がいらっしゃるようで、まだまだ働かせる余地があると思われているのか、結構手厳しいお言葉をいただいて気が滅入っているところである。普通のブータンの職場と違い、僕は平均すると朝8時には出勤し、夕方も18時30分過ぎまではオフィスに残っている。それでも「まだできるはず」と一方的に思われるのは残念である。

と愚痴から始めたこの記事だが、実は読み始めたのは2週間近く前なのに、読み切るのに時間がかかった。単純に読んでいる時間がなかったからである。この本を今読み始めた理由もご想像にお任せするが、何で忙しかったのかもご想像にお任せする。これ以上は時間捻出できないというギリギリのところでダラダラと読み進め、読了日のターゲットを見事に外してしまった。悔いの残る読書の仕方だ。

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『デザイン思考が世界を変える』 [持続可能な開発]

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: ティム・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/05/10
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
人々のニーズを探り出し、飛躍的発想で生活を豊かにする―それが「デザイン思考」だ。研究や開発部門だけでなく全社的に浸透させれば、組織は持続的にイノベーションを生み出すことができる!その推進役として世界に名を馳せるデザイン・ファームIDEOのCEOが、デザインとイノベーションの重要性を熱く語り、組織を蘇らせる方法や社会問題を解決するための秘訣を経験談とともに明かす。

怒涛の6月を終えて、これからの3カ月は比較的「凪」状態。積読本の在庫一掃計画を再開しようと思っている。その第一弾は、米カリフォルニア州パロアルトにあるデザインコンサルティング会社IDEOのCEOが書いたデザイン思考に関する本である。

振り返れば3年ほど前、「デザイン」と名の付く本を集中的に読んでいた時期があった。当時高1だったうちの娘が大学でデザイン専攻したいようなことを言っていて、僕自身も仕事を通じて元プロダクトデザイナーだったという方と知り合いになったりしていて、どうせデザイン専攻するならプロダクトデザイナーを目指してくれないかなという思いもあったので、オヤジとしては先回りして勉強しとこうと考えた。但し、デザインはデザインでも、「コミュニティデザイン」という言葉にはちょっと拒否反応があって、コミュニティデザイナーがやっていることについては理解はできるものの、単に言葉の響きがあまり好きではないなと感じた。(結局、うちの娘はシステムデザイン専攻を偏差値が圧倒的に足りずに断念し、辛うじて拾ってもらえた某女子大に進学し、専攻も変えてしまった。)

本書の主題となる「デザイン思考」は、IDEOの歴史を振り返るとプロダクトデザインからスタートしているのかなと思うが、本書でも語られている通り、無味乾燥な製品にデザインで独自のフレーバーを付けたらおしまいというのではなく、その製品が使われる環境に関する十分な洞察を図り、人間工学的な考察も加えて、広く長く使われる製品を作り出すという、途中の過程を見る限りは、相当包括的で他分野の知見を総合する実践が図られていて、これはシステムデザインやコミュニティデザインにも適用される取組みなんだろうなと改めて思った。

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