『大収斂』 [仕事の小ネタ]
内容(「BOOK」データベースより)
先進国の経済格差が広がる一方で新興国の中産階級が爆発的に増大する!世界はどうなるのか?日本は何をすべきか?アジアに視点をおいた新たなグローバル論。
8年前、『「アジア半球」が世界を動かす』を著したシンガポールのリー・クアン・ユー公共政策大学院のキショール・マブバニ院長の続刊。「収斂(コンバージェンス)」という言葉は、僕の教えている大学院の担当講座でのキーワードの1つでもあり、参考文献の1つとして、取りあえず本書は目を通しておきたいとずっと思っていたが、この充電生活期間中、ようやく読むことができた。(但し、マブバニ氏は、昨年末をもってリー・クアン・ユー公共政策大学院長を退任されている。)
前回、『アジア半球~』でもご紹介した通り、従来から論じられてきた「グローバル化」は欧米人目線のものが多かった中で、国連大使も務めたマブバニ氏はアジア人目線で「グローバル化」を論じる論客として注目されてきた。「コンバージェンス」という言葉も、アジア人目線で見れば、ウェルカムなものとして称賛されるべきということになる。そして、「コンバージェンス」に合わせて、国連システム、グローバルなガバナンスのあり方も見直していく必要があると主張している。現行の国連システムに対する米国の冷たい対応や、世界銀行の歴代総裁が米国人限定であること、IMFの歴代専務理事が欧州出身者限定であること等が、時代と合わなくなってきている現状を徹底して指摘している。
「徹底して」と書いたのは、この著者、他所からの引用が結構多くて、しかも引用箇所が結構長いという特徴がある。この手の本を読むのが久しぶりだというのもあるが、こんなに執拗かつ長めの引用が多い本というのも珍しい。国際政治学や国際関係論はどこで誰が何を言ったかというのをつなぎ合わせて論文が形成されるものが多いのかもしれない。ネタ元としてはEconomistやFinancial Times、それに幾つかのアカデミックジャーナルがあるようだし、この時期にインパクトのあった書籍はけっこうカバーされている。