『幸福の経済学』 [持続可能な開発]
内容紹介
「幸せ」とは何か?人々の幸福度はどのようにして測ることができるのか? 所得が多いとどれだけ幸せになれるのか? 世界各国での実証研究を踏まえ、真の豊かさを捉える新しい経済学をわかりやすく解説。
10月から11月にかけて、5000ワード以上の英語の論文を2本書いた。それが結構しんどくて、11月末に2本目のペーパーをなんとか提出した後は、ちょっとした放心状態に陥った。年が明ければ次は2月末目標でもう1本を書き上げねばならないが、取りあえず年内いっぱいは充電期間だと開き直り、あまり頭を使う作業はやっていない。この2ヵ月は論文と関係ありそうな文献ばかりを読んでいたので、ちょっとぐらいはそこから外れたテーマの本でも読もうかと考え、2冊ばかり「幸福」に関する本を読んでみた。その第一弾が本書である。
これは僕はブータンに住んでいる日本人の方にはよく言うセリフなのだが、ブータン帰りというだけで、「GNHや幸福について一家言あるだろう」という色眼鏡で見られるのではないかと思っている。GNHに対してそんなに造詣があるわけではないが、帰国すれば絶対訊かれるだろう。「ブータン人って、幸せなんですか?」「ブータンで暮らしてみて、幸せを感じられましたか?」「ブータンの人が幸せなのはなぜなんです?」等等。
でも、パッと答えられない。そりゃ僕も幸せですよ。必死の思いで書いて期限までに投稿した論文がジャーナル掲載されたら嬉しいし、それ以前に、とにもかくにも脱稿して提出したらホッとする。自分が構想から1年がかりで仕込んだイベントがきちんと形になり、多くの方からご評価いただければ当然嬉しい。でも、僕が思う幸せと、ブータンの人々の幸せはかなり違う。同じ論文の話をすると、必死で書いて期限に間に合わせるというがむしゃらなところはブータン人にはなく、多忙を理由に簡単に諦める。しかも、「多忙」と言いつつもあがりはいつも定時で、どこが忙しいのかよくわからない。
1年がかりで地道な準備を重ねるというのもごく一部の限られた人にしかできない。ターゲットを1年後に決めて、そこからの逆算で今何をしなければいけないのかを考えるというのは一般的には不得手で、たいていの場合は、今日はここまでやって、明日はあそこまで、といった感じの足し算で考え、何か突発的に起きれば、取りあえずそれをやり過ごすのに全力を尽くす。でも結果うまくいかなくて、目標通りに1年後に目標達成できないという事態も多い。たいていの場合、期限などあってないようなもので、遅れるのが一般的だと思える。
話が脱線した。要するに、ブータン帰りなら「幸福」について語れという注文が結構付きそうな気がするので、ちょっとぐらい「お、こいつ知ってるぞ」と思わせられるようにしておこうと思い、その手始めに本書を読んでみたというわけである。