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非感染性疾患に取り組むには… [ブータン]

非感染性疾患が無償医療サービスの持続にとっての重荷に
Growing incidence of NCDs, a challenge to sustain free health care
Kuensel、2017年11月4日、Dechen Tshomo記者
http://www.kuenselonline.com/growing-incidence-of-ncds-a-challenge-to-sustain-free-health-care/

【ポイント】
11月3日から3日間の予定で、王立ブータン大学で始まった第3回医療保健学国際カンファレンスの冒頭、主賓として挨拶に立ったレキ・ドルジ経済大臣は、保健省が第12次五カ年計画で、非感染性疾患(NCD)対策予算の53%が各県に配分することにしており、これが地方の意思決定に大きな力を与えるだろうと述べた。

世界銀行のNCDポリシーブリーフによると、ブータンは人口転換の初期段階にあり、2025年までには高齢化率が4.4%から7.3%に上昇すると予測している。これに伴い、NCDの症例は増加が見込まれ、ブータンの疾病の62%が怪我を含めたNCDで占められ、感染症や母子健康関連の症例は38%に低下するという。

NCDが増えることで、医療費が急増し、多くの患者が外国医療機関に紹介されることに伴い、今後、基礎医療サービスの無償提供を持続することが大きな課題となってくると大臣は述べた。また、NCD関連のSDGsを達成するためには、NCDの早期発見、スクリーニング、治療を一次医療レベルで一体的に実施していくことが重要であり、そのためには監視システムの開発や医療従事者の能力向上が不可欠だと述べた。

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ブータンの投資環境を評価する(2) [ブータン]

ブータン、ビジネス環境ランキングを下げる
Bhutan slips in ease of doing business ranking
Kuensel、2017年11月3日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-slips-in-ease-of-doing-business-ranking-2/

【ポイント】
次の2年間でランキングを50位以内にまで上げるとする政府の公約とそれに基づく各種改革にも関わらず、世界銀行の国別ビジネス環境ランキング(Doing Business 2018)において、ブータンは3年連続でランクを下げ、75位となった。2015年は70位だったため、そこからのランクは71位(2016年)、73位(2017年)、そして75位へと下がっている。但し、世銀は2015年に評価方法を変更しており、旧評価法にのっとった場合、2015年のランクは124位であった。

75位というランクは、南アジアでは最高位。インド100位、ネパール105位、スリランカ111位、モルジブ(136位)、パキスタン(147位)、バングラデシュ(177位)、アフガニスタン(183位)である。

起業については、ブータンは88位にランクされた。ブータン国内で起業するには8つの手続きが必要で、トータルで約12日を要する。

建設許可取得については、82位。21段階の手続きがあり、約150日を要する。

電気敷設については、56位。4段階の手続きがあり、51日を要する。

財産登記についても、56位。3段階の手続きに77日を要する。

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脆弱な人々とは [ブータン]

政策介入が必要な14の脆弱なグループを特定
Assessment identifies 14 vulnerable groups for intervention
Kuensel、2017年11月1日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/assessment-identifies-14-vulnerable-groups-for-intervention/

2017-11-1 Kuensel.jpg

【ポイント】
10月31日、ティンプーにおいて、「ブータン脆弱性評価レポート2016」がリリースされた。国連開発計画(UNDP)の支援により実施されたこの調査では、脆弱なグループとして、①物乞い、②法的紛争下に置かれた子ども、③支援が必要な高齢者、④歌や舞踊に従事する女性(Drayang)、⑤危険な性的行為を行う人々、⑥薬物やアルコールを摂取する人々、⑦障害者、⑧孤児、⑨非就学児童、⑩HIVエイズ影響下にある人々、⑪母子/父子世帯、⑫失業状態にある若者、⑬家庭内暴力の犠牲者、⑭脆弱な都市居住者、の14グループを特定、その各々について、原因、脆弱性、現行の政策制度枠組み、政策提言をまとめている。

例えば、⑫失業状態にある若者については、その原因として、個々人の学業成績、学校卒業生の増加に対して十分とは言えない就業機会、雇用者と求職者との間での期待感のギャップ、職業訓練の質と重点分野の問題などが、若者を失業状態に追いやる原因として挙げられている。失業状態にある若者は、健康リスクや社会的疎外に対して脆弱で、犯罪を犯す可能性が高い。

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タグ:職業訓練
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ポンプ動かぬ消防車 [ブータン]

整備士不足が消防車8台を出動困難に
Lack of mechanics keep eight fire engines off road
Kuensel、2017年10月30日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/lack-of-mechanics-keep-eight-fire-engines-off-road/

2017-10-30 Kuensel.jpg

【ポイント】
消防車のポンプ部の修理やメンテナンスができる整備士の不足が、消防局の頭痛の種になりつつある。現在、消防局には52台の消防車が配備されている。26台はインド製、残る26台は日本製である。ティンプーには、チャンザムトック地区にある消防本署に9台、デチェンチョリン、モティタン、タシチョゾンの分署に各1台が配備されている。しかし、52台のうち、8台は現在使用不能で、その内訳は、モンガル、タシヤンツェ、トンサ、プナカ、タシチョゾンの各1台と、ティンプー本署の3台となっている。消防局は2011年にインド政府の援助で19代を配備して以降、新たな消防車は供与されていない。

消防局関係者によると、消防車のエンジン部分の整備はブータンの自動車整備工場でも可能だが、ポンプ部分の修理やメンテナンスを行える専門的な整備士が自動車整備工場にはいないという。出動回数が少ない夏場に消防局が行った修理・メンテナンスにより明らかになった。LBプラダン消防局長によると、国内の自動車整備工場では、溶接やタイヤ交換、補充等の小さな修理は喜んで行うが、一般車両と違って消防車の整備は収益性が高くないので、専門知識を持った整備士を配置していないという。

スペアパーツの調達にも課題がある。特にポンプ部のスペアパーツは、調達業者も整備工場もストックを置くのに消極的である。一般車両よりも場所を食う消防車は、整備工場での取扱いも消極的。日本製消防車はそれが機能しているうちは効率的だが、エンジン部の問題発生は少ないものの、ポンプ部が壊れた場合、パーツに名前が付いていなかったり、品番号がなかったりして、たとえ整備工場が修理を請け負ってくれたとしても、仕様がわからないことが問題となるケースが多い。

現在、2人の整備士が消防局に常駐して、試行錯誤を繰り返しながら、修理や整備にあたっている。3人目の整備士は1年間の訓練のためインドに行っている。

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タグ:JICA ODA
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これは便利なプラットフォーム [ブータン]

なんとなくの予感はあったのですが、今月に入ってからも大切なお客様をお迎えしたり、自分自身が重要な会議で発表したりする日程が続きました。新聞も適当に斜め読みすることが多く、ゆっくり考察してブログを書くというのが全然できていませんでした。今日は祭日なので、取りあえずは1つぐらいアップしておこうと思い、PCに向かっています。これから2週間ほどは、もうちょっと頻度を上げられたらと思っています。

スタートアップ・ウイークエンド始まる
Startup Weekend begins in Phuentsholing
Kuensel、2017年10月28日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/startup-weekend-begins-in-phuentsholing/

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スタートアップ・ウイークエンド、規模拡大へ
Startup Weekend to get bigger
Kuensel、2017年10月31日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/startup-weekend-to-get-bigger/

2017-10-31 Kuensel.jpg

【ポイント】
10月27日(金)から29日(日)まで、南部プンツォリンにある王立ブータン大学科学技術カレッジ(CST)で、「スタートアップ・ウィークエンド」というイベントが開催された。これは、国内各カレッジの学生や一般の起業家が参加し、自分のアイデアをピッチするもの。最も優れた起業アイデアの上位3点までが表彰の対象となる。主催はティンプー・テックパーク、テックスターズ社、情報通信省IT通信局(DITT)、国連開発計画(UNDP)。

約80点ものアイデアがピッチされ、うち16点が最終ステージに進み、プレゼンやデモ等が行われた。結果第1位に選ばれたのは、ナムゲル・ドルジ君のグループが発表した「bundle.bt」。ティンプーとプンツォリンの間を結ぶクーリエサービスで、専用アプリを使ったプラットフォームビジネス。小包を送りたい人と車で移動する人がユーザー登録し、マッチングできれば、移動する人はbundle.btのデポセンターに行き、先に送付希望者がそこに預けた小包を引き取り、これを目的地のデポセンターまで搬送する。ナムゲル・ドルジ君は、アマゾンがブータン国内への配送を行っておらず、書籍がインド側のジャイガオンにまでしか届かないことを知り、このギャップを埋めたいと思ってこのサービスを思いついた。

第2位は、ペマ・シンゲ君のグループが考案した、「スマート・ミルク・クリーム分離機(SMCS)」。牛乳からバターを分離する装置で、同種の装置は既に存在するが、ペマ・シンゲ君のグループは、これをより操作しやすいものに改良したという。

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『北海タイムス物語』 [読書日記]

北海タイムス物語

北海タイムス物語

  • 作者: 増田俊也
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/04/21
  • メディア: 単行本
内容紹介
破格の低賃金、驚異の長時間労働、 そして、超個性的な同僚たち……。『七帝柔道記』の続編は、新人新聞記者の奮闘を描く 熱血お仕事小説!「仕事っていうのはな、恋愛と同じなんだ。お前が好きだって思えば向こうも好きだって言ってくれる」平成2年(1990年)。全国紙の採用試験にすべて落ち、北海道の名門紙・北海タイムスに入社した野々村巡洋。縁もゆかりもない土地、地味な仕事、同業他社の6分の1の給料に4倍の就労時間という衝撃の労働環境に打ちのめされるが、そこにはかけがえのない出会いがあった――休刊した実在の新聞社を舞台に、新入社員の成長を描く感動作。

著者の傑作『七帝柔道記』は、続編がきっと出るに違いないという終わり方だったが、ひょっとしたら、著者はこの『北海タイムス物語』を以ってその役目を負わせたのかもしれない。1つ前のレビューで書いた通り、『七帝柔道記』は、実際に北大柔道部に所属した著者の目線で和泉唯信主将を主人公に据えた作品ではないかと思うが、『北海タイムス物語』も、北大を4年目の七帝戦後に中退し、著者が就職した先の地方紙が舞台となっているものの、著者自身がモデルだとおぼしき「松田」という人物が主人公の同期で同じ整理部配属となった友人として出て来るのみで、実際の主人公は「野々村巡洋」という全く架空の人物である。とはいえ、著者自身の分身だとおぼしき登場人物がいるので、著者が北海タイムス時代にどんな過ごし方をしていたのかが垣間見えて、興味深い作品だった。

僕らが普段何気なく手にしている新聞だが、その段組みやニュースの取捨、優先順位付け、見出しのつけ方等、そう言われてみればどういう風に決められていくのだろうかと疑問が湧く。そういう仕事を描いた小説というのはあまり多くはないから、これを読んで新聞紙に対するいとおしさがひときわ強まった気がする。それに、主人公が入社した1990年というのは、東証株価の下落が年明けから始まった、日本経済のターニングポイントだった年だが、まだバブル経済に浮かれていた人も多かった中で、この北海タイムスの社員の労務環境と待遇の悲惨さというのが、本当だとしたらそのコントラストが凄すぎて戸惑わずにはいられない。

どん底からの復活を描いているという点では、好感が持てるエンディングへの持って行き方で、これを読んで「面白くない」という人は少ないと思う。欲を言えば、各登場人物の「その後」を軽くでもエピローグで触れてくれていたら良かった。特に、野々村クンと浦ゆり子さんの関係はなんだか尻切れトンボだったし、肝心の松田クンも、もし著者自身だったとしたら、2年後には北海タイムスを辞めて中日新聞社に移ってしまう。また、金に困って銀行のカードローンにサラ金にまで手を出した主人公が、その後どうやって資金繰りを改善させたのかも気になる。それよりも何よりも、北海タイムス自体が1998年に破産してしまうのだから、各々の登場人物のその後にひと言言及するのも、素人目には必要な手続きだったのではないだろうか。

タグ:増田俊也
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再読『七帝柔道記』 [読書日記]

この前の記事で宣言した通り、ブログに充てていた時間を論文執筆に充てたので、2週間以上まったく更新せず、大変失礼しました。再開の狼煙はブータンの記事解説にしたかったのですが、正直言うとこの2週間、あまり新聞もちゃんと読んでなくて、それなのに開き直って言いますが、面白そうな記事もなかった。ハイランドフェスティバルの話は昨年も取り上げたし、もう少し過去記事のザッピングをして、面白そうなのがあればまた紹介したいと思います。

七帝柔道記 (角川文庫)

七帝柔道記 (角川文庫)

  • 作者: 増田 俊也
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
北大、東北大、東大、名大、京大、阪大、九大の七校で年に一度戦われる七帝戦。北海道大学に二浪の末入った増田俊也は、柔道部に入部して七帝戦での優勝を目指す。一般学生が大学生活を満喫するなか『練習量がすべてを決定する』と信じ、仲間と地獄のような極限の練習に耐える日々。本当の「強さ」とは何か。若者たちは北の大地に汗と血を沁みこませ、悩み、苦しみ、泣きながら成長していく。圧巻の自伝的青春小説。

今月末締切だった英語の論文を書き上げ、爽快感とともに気晴らしの1冊が必要だと思い、読んだ本がこれだった。論文を書いている間も、時々息抜きでトイレにこもったりする時、キンドルを持ち込んで便器に座り、読んでいたのが『ビッグコミックオリジナル増刊』のバックナンバーだった。隔月刊の同誌の中で、僕がお気に入りでこれがずっと購読し続ける動機となっているのが、女性漫画家一丸さんの描かれている『七帝柔道記』である。

増田俊也の原作は2013年3月の発刊から半年ぐらいして、同じ年の12月に読んでいる。当時の感想はブログでも書いたので、それを参考にしてもらうとして、これを読んだ後、2015年7月から職場でお仕事ご一緒した方が北大柔道部ご出身だというので、この本の話題で非常に盛り上がったことがあるのを懐かしく思い出す。著者の時代よりも10年ぐらい前の先輩だそうで、でも本書に登場する多くの部員をご存知だと仰っていた。

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タグ:増田俊也
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