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『ワン・モア・ヌーク』 [読書日記]

ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)

ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)

  • 作者: 藤井太洋
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: Kindle版

内容紹介
「核の穴は、あなた方をもう一度、特別な存在にしてくれる」。原爆テロを予告する一本の動画が日本を大混乱に陥れた。爆発は3月11日午前零時。福島第一原発事故への繋がりを示唆するメッセージの、その真意を政府は見抜けない。だが科学者と刑事の執念は、互いを欺きながら“正義の瞬間”に向けて疾走するテロリスト二人の歪んだ理想を捉えていた――。戒厳令の東京、110時間のサスペンス。
【N市立図書館】
今年のお盆休み用読書のうち、小説として取り上げた1冊。メキシコから返って来てすぐにお盆休み入りしたが、4日間で1,200㎞も走破する自動車移動をしたので疲れ果てて読書の時間を確保することがなかなかできず、台風7号関東地方接近で身動きがとれずに自宅待機していた7日(金)と翌8日(土)の早朝、家族が起き出す前の時間帯を利用して一気に読み切るのが精一杯だった。

話の展開のテンポが非常に良くて、一気に読み切るには格好のストーリーだった。巻末に文芸評論家による解説が付いており、そこまでのブックレビューなどすることはとても難しいが、一読するとすぐに光景がイメージしにくいことが多い藤井太洋のSF小説の中では、かなり場面のイメージがしやすく、読みやすい作品だと思う。

そして、ここでも3Dプリンタ―が頻繁に登場する。自分で3Dプリンタ―を操作したことがあるから、そのあたりの場面のイメージはさらにしやすかったと思う。ただ、それだけであったとしても、テロリスト但馬樹の設計はにわかにはイメージがしにくかった。また3Dプリンタ―の宿命として、出力にかかる時間が長いというのがあり、構造が複雑なものほど時間はさらにかかる筈である。そう考えると、公安やCIAの追跡を逃れるために一刻も早くホームメイド原爆のダミーを準備せねばならない状況で、出力に時間がかかる3Dプリンターに依存するのは結構ムリがあるんじゃないかという気もした。

但し、僕のこのコメントは、核爆発のメカニズムや原爆の構造、大きさなどをあまり理解していない中での無責任な発言だと、適当に読み流してもらってもいい。イラストでも挿入されていたら良かったのだけれど…。

繰り返しになるが、お盆休みの娯楽用読書の1冊としては、かなり向いている作品だと評価したい。

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