『テスカトリポカ』 [読書日記]
内容紹介【購入】
第165回直木賞受賞!心臓を鷲掴みにされ、魂ごと持っていかれる究極のクライムノベル!メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。
仕事帰り、何か別の作業を集中して行いたいとき、僕は蔦屋書店に併設されたタリーズに行き、2時間近くを作業に費やすことがある。こちらに引っ越してきて2カ月少々、週1、2回は行っている僕の習慣である。
そうすると、蔦屋書店の方に陳列されている棚に目をやることもしばしば。それほど頻繁には買ったりはしないが、ちょっと気になる文庫本は、手に取ったりしている。買って読み終わったら、シェアハウスの同居人に読んでもらってもいいし、あまり同居人が読まないなら、退居する時に売ってもいい。
本作品を手に取ったのは、序盤の舞台がメキシコだったからである。但し、北部メキシコだが。それに、インドネシアにも多少の土地勘があったし。
しかし、読みながら、本当にメキシコに2週間も行って、自分は無事返って来られるのだろうかと不安になった。700頁近い大作を読み切った今、達成感よりも、不安感の方がはるかに大きい。
メキシコに関しては、治安が悪いからくれぐれも気を付けろと何人かの方から言われている。治安が悪いという前提でこの作品も読んだが、メキシコで暮らしている人々って全員が全員、このような麻薬密売組織の支配下で生きているのだろうか―――それが一部の例外ではなく、善良な市民の方が例外なのではないかと思えてきて、気持ちが重くなった。
加えて、わが国も…。知らず知らずのうちに、こんな無法地帯が形成されているのか、覚醒剤や臓器ビジネスが僕たちの日常生活にひたひたと近づいてきている気がして、これまた不安な気持ちが増幅された。
ふだんあまり接したことがない信仰なので、読み進めるにはエネルギーが要った。ピースがつながっていくまでの登場人物の拡散から、点と点が線でつながっていく展開に至っても、それは闇がどんどん広がっていく過程で、ワクワクというよりモヤモヤ感がどんどん広がっていくような感覚だった。ページをめくるのにもエネルギーが必要だった。
ラスト100頁ほどのところまできて、ようやく結末に向けた展開が始まった。ホッとした。
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