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『あしたの君へ』 [読書日記]

あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1)

あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1)

  • 作者: 柚月 裕子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 文庫
内容紹介
裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。だが、採用されてから任官するまでの二年間――養成課程研修のあいだ、修習生は家庭調査官補・通称“カンポちゃん”と呼ばれる。試験に合格した二人の同期とともに、九州の県庁所在地にある福森家裁に配属された大地は、当初は関係書類の記載や整理を主に行っていたが、今回、はじめて実際の少年事件を扱うことになっていた。窃盗を犯した少女。ストーカー事案で逮捕された高校生。一見幸せそうに見えた夫婦。親権を争う父と母のどちらに着いていっていいのかわからない少年。心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着き、手を差し伸べることができるのか――。彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。
【N市立図書館】
過去に柚月裕子の作品は読んだような記憶があるのだが、どの本かは思い出せなかった。初めての作家ではないと思っていたのと、図書館所蔵の単行本の装丁がちょっと良かったので、借りてみることにした。また、最近NHKの朝ドラ「虎に翼」の舞台となっている家庭裁判所の日常のお話なので、朝ドラの世界を知る意味でもいい作品かなと思う。

朝ドラでも取り上げられていたが、元々家庭裁判所は少年審判所と家事審判所が統合されてできた。家事事件と少年問題は地続きだと言われていて、ドラマでもそんなケースが紹介されている。先々週は戦争孤児の問題、先週は遺産相続の問題が中心テーマとして取り上げられていた。これを見ながら、少年問題と家事事件をいずれも取り上げるのが家裁だというのは理解できるようになった。

本作品は5つの短編から成るが、前半の2編は主に少年犯罪で、中1編の後半ぐらいからそれ以降は、離婚調停とその背景にある各々の家庭の事情が取り上げられる。家裁調査官として採用されたばかりの調査官補を主人公に、家裁の中でも少年事件担当から家事事件担当への配置換えも行われる。そうした中で遭遇する様々な事案が描かれる。

これ読んでいると、家裁調査官が事件の背景をよりよく知るために外を歩き回る姿がよく描かれている。本作品を今読むと、朝ドラの世界もよりよく理解できるようになれるだろう。いいタイミングでいい作品に出会うことができた。

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