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「GNH全国調査2022」の結果概要 [ブータン]

GNH全国調査:市民の福祉と幸福は93.6%に
GNH Survey: Citizen’s well-being and happiness touch 93.6 percent
Thukten Zangpo 記者、Kuensel、2023年5月23日(火)
https://kuenselonline.com/gnh-survey-citizens-well-being-and-happiness-touch-93-6-percent/
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【ほとんど抄訳【抄訳(www.DeepL.com/Translator(無料版)翻訳を筆者編集)】】
昨日、国立ブータンGNH研究所(CBS)で発表された「国民総幸福量(GNH)全国調査2022年版」には、印象的な結果が含まれていた。「 ブータン人の93.6%が自分が幸福だ」と回答した。これは前回調査(2015年)と比較して大幅な向上であり、国民の幸福を最優先とするブータンの継続的なコミットメントを浮き彫りにしたといえる。

総合的な幸福度を測るGNH指数は、3.3%上昇を記録。指数値は0.781に達し、2015年の前回評価時の0.756から上昇。このポジティブな傾向は、国民の生活の質が全体的に向上していることを示している。指数は0から1の範囲で、値が高いほど幸福感や幸福度が高いことを示す。

パンデミックがあったにもかかわらず、ブータンのGNHが上昇したのは、住宅、収入、学校教育、サービス、識字率などさまざまな分野の改善と、ポジティブな感情に起因していると考えられる。

しかし、健康的な日々、文化的・政治的参加、精神的健康、ディグラム・ナムジャ(ブータンの礼儀作法・服装規定)の遵守に関する指標に悪化の兆しが見られたことから、今回の調査では懸念すべき点も浮き彫りになった。

幸せだと思う人のうち、「深い幸福」は9.5%、「おおむね幸福」は38.6%、「限定的な幸福」は45.5%に分類された。一方、「幸福ではない」と答えたのは6.4%。「深い幸福」と「おおむね幸福」に該当する人の割合は、2010年から2022年にかけて7.2ポイント増加しており、全体的に幸福度が上昇傾向にあることがわかる。

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《後半に続く》

BBSがテレビのニュースでこの調査結果を報じたのは5月22日(月)のことだが、クエンセルが紙面で報じたのは23日(火)である。今回は、そちらの記事の方でご紹介する。

都市部に住んでいる人ほど幸福度が高い傾向にあるが、今回の調査では、幸福度の高い人のうち56.8%が地方に住んでおり、都市部の43.2%を大きく上回っていることが明らかになった。この結果は、都市部の環境がより高い幸福度を保証するという仮説を覆すものである。

また、性別による違いも明らかになり、女性のGNH指数は0.762と、男性の0.814より低いことがわかった。しかし、女性の幸福度の上昇率は男性のそれを上回り、男女平等の達成に向けた前進も示した。

ロテ・ツェリン首相は、コロナの影響により幸福度が低下するとの見通しを示した。しかし、観察された大幅な増加を認め、調査結果で強調された懸念に対処する必要性を強調した。低下した指標、特に文化への参加とディグラム・ナムジャの認識について、これらの側面がGNHの基本原則を形成していることから、回復のための政策の再編成の重要性を強調した。

例えば、2022年には2015年と比較して、文化参加指標は14.3ポイント、ディグラム・ナムジャは12.2ポイントの減少を記録している。

GNH指数は、「心理的ウェルビーイング」「健康」「教育」「時間の使い方」「文化の多様性と回復力」「良い統治」「コミュニティの活力」「生態系の多様性と回復力」「生活水準」の9つの領域にわたる33の指標を網羅した総合ツールである。各指標は重み付けされ、その充足度スコアに基づいて個人が分類される。

この調査から得られた提言には、まだ66%の充足度に達していない個人のGNHを改善するための政策介入が含まれる。

この調査結果は、所得と幸福度が強く相関しているという仮説を覆すものだった。所得階層別に見ると、最も豊かなグループでは41%、その次に豊かなグループでは44%と、すべての所得五分位階層でまだ幸福でない人が存在することが明らかになったが、最も貧しい所得階層では、幸福と分類される人が29.2%という驚くべき結果になりました。

GNH調査は、ブータン全土の198のゲオッグと53の町の15歳以上の11,052人の回答者を対象に行われた。包括的なデータ収集は2022年4月11日から8月9日までの4カ月間に及び、1回のインタビュー時間は約1時間45分だった。

発表では、国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー長官、経済協力開発機構(OECD)のマティアス・コーマン事務局長、米国ジョージ・ワシントン大学のジェームズ・フォスター教授など、国際的に著名な方々からのビデオメッセージが上映された。これらのメッセージは、GNH全国調査2022の調査結果が世界的な規模で関連性と重要性を有することを裏付けた。

GNH全国調査2022は、JICAブータン事務所の支援を受け、幸福度を測定し優先順位をつけるというブータン独自のアプローチが国際的に認知されていることをさらに浮き彫りにした。

前回の2015年調査の結果の概要は自分が論文を書いたり、何かのプレゼンを行う時に使わせてもらっていたのでよく覚えているが、それとの比較で興味深いのは、都市部よりも農村部に暮らしている住民の方が幸福だと回答している割合が大きいという点だった。ある程度都市部への人口流入が進んで、都市生活も意外とストレスフルだということがわかってきた結果なのかなという気がする。だからといって農村に戻ろうというドライブにはならないだろうが、農村から都市への人口流入の抑制にはなるのかもしれない。

GNH全国調査を一種の政策評価ツールと考えるなら、ここから得られる示唆というのは、都市住民の心理的ウェルビーイングを改善するような政策導入をということにでもなるのだろうか。

2015年調査の際には、県別のGNH指数も公表されていた。それに基づいて、僕は「県別開発アプローチ」のようなものを考えた方がいいのではないかと主張したことがある。2017年7月にファブラボ・ブータンが開設された際、開所式に出席されていた「ファブラボ」の世界的提唱者である米MITのニール・ガーシェンフェルド教授は、「ファブラボはGross Local Happinessに貢献する」と述べておられた。ティンプーのスーパー・ファブラボがGLHを目指しているとはとうてい思えないので、そこに支援していたMITの親玉が仰っていたこと自体を実践されているようにも僕には思えないのだが、少なくとも地方にある4つのファブラボは、それぞれの地域の課題解決に貢献することが求められていて、その上位目標はその地域のGLHの実現だと僕は勝手に思っている。

次に、これは半分自戒の意味もあって述べるが、GNH全国調査の実施に対してJICAは資金援助を行った以上、この調査を政策評価ツールとしてJICA自身が行う開発協力事業にも用いていく必要があると思う。JICAの事業だけで指標が向上するわけではないとは思うが、例えば、2015年調査から2022年調査にかけて、女性の幸福度が男性に比べて上昇したのだとしたら、その間にJICAが行ってきたジェンダー分野における協力が奏功した部分もあった筈だと主張はできると思う。

最後に、調査がどのように行われたのか、この記事では末尾にちょっと触れられてはいるが、大きな疑問は、オーストラリアへの出国を考えられている人とそうでない人との比較はどのようにしたら可能なのかという点だった。オーストラリアに行こうと考えているから幸福なのか、今の生活に不満があるからオーストラリアに行こうと考えているのか、どちらなのだろうか。

なんだか書いていてもよくわからなくなってきたので、今日はこのくらいで。
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